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超短編

たっちぺん。

作者: しおん

唐突だけど、僕には彼女がいる。


彼女は、肌身離さずゲーム機を持ち歩いているということを除けばどこにでもいる一般的な女子ではある。しかし、少し引きこも……人見知りがちで外出をあまり好まない。だから、デートの時もどちらかの家でぐだぐだと過ごすことが多かった。


今回もそれは例外でなく、今日は僕の家でゆったりとすることになった。

お茶を飲みながら世間話をし、お互いに好きなことをするだけのこの時間を、"デート"と言っていいのかは甚だ疑問だが、彼女がデートだと言っているのでそれで良しとしていたりする。


特に趣味をもっていない僕は、このデートの最中、彼女を観察していることがほとんどだ。

目の前でじっと見つめているというのに、かちゃかちゃとゲーム機を操る彼女とは当たり前ではあるのだが、視線は合わない。少しぐらい僕のことを意識して欲しいと思うのは自分勝手な考えだろうか。


画面から放たれる色とりどりの光によって、色白な彼女の顔もカラフルに彩られていく。彼女の黒目がちな瞳は、その光が変わるたびに爛々としたり、影を見せたり。表情もコロコロと変わる。


右手に握られたペンで画面をつついたり、なぞったり。ゲームというものにあまり興味をもっていない僕だけど、彼女のそんな行動の一つ一つには興味津々だ。

彼女がゲームを好きなぐらい、僕は彼女の行動を観察するのが好きだ。


僕がまだ握ったこともない彼女の右手を独占するタッチペン。そのペンは時々、ゲーム画面ではなく他のところをつついたりすることがある。


ゲームにあきてしまったのか、ゲーム機をぱたんと閉じて床に置くと、てくてくと彼女が近づいてきた。彼女が何をしたいのか何となく予想がついているのだけれど、あえて気づかないフリをする意地悪な僕。


つんつん。

遠慮がちに僕の手をつついたペンは、僕が反応を示すと彼女の頭上へと移動する。


それは、人見知りで恥ずかしがり屋な彼女の、ちょっと変わった甘え方。

撫でて欲しいの合図。


彼女の顔を見るのだが、いつも画面に向いている瞳は遠慮がちに伏せられており、相変わらず合ってはくれない。いつになっても交差しない視線に、少しだけ苦笑してしまう。


彼女の要求通りによしよしと頭を撫でてあげれば、白かった肌は薄く紅がさし耳に至っては、真っ赤に染まっていた。

それが恥ずかしくてなのか、嬉しくてなのかは、いつまでたっても教えてくれないけど、これだけわかりやすい反応をするのだ。当然の様に他の表情や感情もだだ漏れである。


よくわからないけれど、満足したのであろう彼女はそそくさと先ほどまで座って居た場所に戻り、僕に背を向けてゲームを再開する。そんなことで赤面したことを隠しているつもりなのだろうか……真っ赤なお耳が見えてるのに。



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