縛り95,『ん』使用禁止
エイプリルフールの短編と差し替えになっております。
え? そんなものどこにもなかったって?
いえ、有ったんですよ。作者の脳内には。スカート捲り犯との決着を脱衣麻雀でつけるネタの短編が。
オチではクロがスカート捲り犯もろとも全裸になるやつが。有ったんですよ?
あ、就職?したので更新頻度落ちます。
「ボス! すいません……」
「なるほど、いつかはこうなるとは思っていたが、間に合わなかったか……」
結局、バックラーの呪いは神殿で解呪してもらった。神殿の人に通報したりとかそういうのもなし。スカート捲りの人はちょっとびくびくしてたけど、見咎められたりはしなかったというか、神殿の神官さんは僕の装備品の方に注目してたからね! オーダーメイドだよってしっかり自慢してきたよ。
で、その後は割と素直に案内してもらって今はスカート捲り集団の溜まり場に殴り込み。
「なんであんなことをしてたのか、洗いざらい吐いてもらうよ!」
「そう簡単に従うと思うなよ! 容易く敗れる我らではないぞ! ってうおっ!? こいつマジか!?」
「しゃらくせぇあー!」
ちょっと演技過剰気味に話してたら老師が雄たけびと共に突っ込んでいった。いやいやなんで!?
一気に加速して距離を詰めての、基本に忠実な【正拳】。躊躇なく顔面狙いに行ったね!? 距離が多少離れてたからギリギリ武器で防御できたみたいだけど、そのくらいじゃ老師は止まらない。すかさず今度は逆の手で【正拳】を放って、持っている武器ごと手を大きく弾いた。
うわー、痛そう。相手の人もだけど、あれ老師も【鉄拳】かけ忘れてるよね?
「なん、のおっ!」
「ぶべっ! こなくそっ!」
完全に体勢を崩したように見えたところから、逆にそのまま後ろに倒れるようにして、武器を視点にしてのサマーソルトキックで逆に老師に一撃。
「老師ストップ! 問答無用で襲い掛かるのはダメだよ! そしてもしそれが許されるなら一番に行くのは僕だよ!」
このまま放っておくと何も話が進まないまま大乱闘に突入しちゃうので慌てて止める。
しかしこの人、まだエンジンがかかってないとはいえ老師のスピードに対処するなんてかなりの技量だね。見たところ武器は大剣かな?
「驚かせやがって…… 対話の意志は一応あるって思っていいんだよな?」
「今のは僕としても予想してなかったよ。ごめんね。それにしても、老師を軽くあしらうなんて、ただのスカート捲り犯じゃないね?」
「ふっ、俺が何者か当ててみな」
同じ大剣使いでも、アレクさんのそれとは大きく違う、パワーではなく遠心力を用いるスイングに足技を絡めた立ち回り。おそらく他のゲームのコンボや立ち回りを再現、それも大男のアバターじゃなく、丈の短いスカートを穿いた可愛い女の子キャラとかの。
つまりこの人は……
「パンチラモーションの使い手、それもかなりの時間を研究に費やしてる。違う?」
「ほう、イマドキの若いVRゲーマーにもこの動きの意味が分かるやつがいるとはな」
「これでもVR以外のゲームも結構触ってるからね」
「パンチラモーションって何なんだよ! 当然のように訳分からない単語を混ぜてさも真面目に話してますみたいな面して会話進めんじゃねえよ!?」
ノリノリで会話しているところにクロが割り込んできた。ここでそのツッコミ必要かな?
「いやそこで空気読めよコイツみたいな目で見られるのは納得いかねえ!」
「はあ。ごめんねこっちのメンバーが。ちょっと説明挟んでいい?」
「構わん。文化の理解者が増えることを歓迎こそすれ文句を言ったりはせんさ」
快く許してもらえたので、クロに対して手短にパンチラモーションとはなんなのかを説明する。
「簡単に言うと、主にキャラの後ろ側に視点が有るゲームなんかで特定の装備で特定の動作やスキルを実行すると、キャラの下着が見えるんだよね。それがパンチラモーション。で、それらのモーションを実践で使った上で、ちゃんと戦いつつパンチラを楽しむ領域に至った人を使い手って呼ぶんだよ」
「お、おう? なる、ほど?」
「ちなみにパンチラモーションの中にはミニ丈のスカートを翻すもの以外にも、ひらひらしたロング丈の装備と大きなモーションを組み合わせてポリゴンの割れ目からパンツが見える、なんていうのも有るよ」
「いやそれらの情報と今の状況にどう関係が有るんだよそれ」
「クロが説明しろって言ったんじゃ?」
「そうか、そうだな。すまん」
クロも納得してくれたみたいなので、改めてスカート捲り犯のボス…… 長いね。ボスでいっか。そう呼ばれてるっぽいし。ボスと向き合う。
「で、こんなわざわざここまで来た用向きはなんだ? 対話か?」
「うん。僕達はプレイヤーキラーになりたかったり、あるいは他の人を統制したかったりするわけじゃないからね。あくまで個人として話を聞きに来てるだけだよ」
「ほう、じゃあここで俺が何も話すつもりはないと突っぱねたらどうするつもりだ?」
「もしそうなったら…… ここにいる全員の顔は覚えたからね。今後見かけ次第こっそり近づいてズボンのベルトを切断させてもらうよ」
「なるほど、そう来るか。おれはそれでも一向に構わんがな」
強気だね。伊達にデスゲームっていう状況下でスカート捲りなんてしてないっていうことかな。
ちなみに他の人は割と構うみたいで小声でボソボソと困惑の声を上げてるのが聞こえてくる。クロはどっちの味方なのさ!
「で、話すの? 話さないの?」
「話すさ。だがその結果裁かれるのも不愉快だ。俺達に理由が有ったとして、お前は許す気になるか?」
「ならないね!」
「そうだろう。ここはひとつ、シンプルに行こうじゃないか」
そういって、大剣を中段に構えるボス。
「いいね! 乗った!」
「俺が勝ったら、こっちの考えと事情を説明してそれ以上のおとがめは無し」
「僕が勝ったら、スカート捲りに手を出した全員説教フルコースした上で三日間奉仕活動ね。みんなもそれでいい?」
「一番怒ってたのお前だし、お前がそれでいいならいいんじゃねえの?」
「妥当なんじゃ~、ないですか~? どちらにせよ~、話すつもりでは~、あるみたいですし~。ばらばらに逃げられたら~、捕まえきれませんしね~」
一緒に来ている人達にも確認すると、クロからはやや投げやりな、コノカさんはちゃんと考えた上での返事が返ってきた。他の人も特に異存は無いみたいだね。
「ルールはどうしようか。これについては知ってる?」
「いや、知らんな。この状況で出すっていうことはPvP用のアイテムか?」
「そうだね。こっちの準備したものが信用できないっていうなら無しでやるけど」
「不正に意味は無い。使えるものは使えばいいさ」
まあ口約束だからね。不正して勝っても不正がばれたら事情が迷宮入りしておしまいだし。
「ルールは、そうだね。HP制よりも有効打の回数の方が良いかなお互いに」
「ハンデのつもりか?」
「いやいや、僕の方が確かにレベルは高いけど、僕だって一撃が重いタイプじゃないから、無駄に長くなるよりはそっちの方が良いってだけだよ」
「まあ何でも構わん。一発か?」
一発でも良いけど、一発だと相手の動きを見極める前に終わっちゃうんだよね。
「三発でどう? 被弾時の中断は無しで、HPの3%以下のダメージは有効打にカウントしない」
「……実はガチガチの壁ビルドでこっちの全力でも3%削れないとかいうオチじゃないだろうな?」
「自分で言っておいてなんだけど3%削りあえるか自信なくなってきたし1%にしとこうか」
「まあ妥当なんじゃないか?」
即死攻撃は有るけど、対人戦で首にナイフを叩き込むのはちょっと厳しいし、死んじゃったらシャレにならないからね。
【マナバレット】じゃあたぶん1%も削れないからダメージにはならないから実質近距離での差し合いで勝敗が決まることになるね。相手がどんな隠し玉を持ってるか分からないから油断はしないけど。
「場所は?」
「ここで良いだろ」
「よしっ。あ、ちょっと待ってて」
今の防具はこのルールだと何のメリットも無いどころかデメリットまみれなので、メニューを操作して全身の装備を変更する。
身に着けるのは、スカートと素材を合わせた全身コーデ、名付けて『なんでそこで本気を出しちゃったのスミスさんシリーズ』! 長いね!
内容としてはアイテムボックスの肥やしになると思われてたスカートに、血染めのブラウス、それに同じく血染めの肘まである手袋。靴までは手が回らなかったらしくて足元がスニーカーだったりするけど全体的にちょっとおしゃれ?
「防御力を捨てたAGI補正重視の装備か……? さっきの方が軽装だったようにも見えるが」
「いや、特にそういう補正のある装備じゃないよ。と思ったらSTRに補正ついてる? まあさっきまでの装備が向いてなかったからマイナス補正のない装備に替えただけだよ」
「そうか……」
なんせ発生頻度も持続時間もかなり抑えられるようになったとはいえ確率で金縛りだからね! 対人戦のさなかに発動しちゃった日にはそのまま連続攻撃叩き込まれて即敗北だよ!
まあこっちの装備はこっちの装備で出血耐性のマイナス補正が大きすぎて、一式で身に着けるとかすり傷のスリップダメージで死ぬとかいうクソ装備なんだけどね! もはや防御力の意味ないよね!
「なあ、さっきまでの服装もだがどう見ても戦闘向けじゃないのに頭の中で危険信号鳴りっぱなしなんだが……?」
準備も出来たしいよいよ勝負! と思ったところで、ボスからそんな発言が。
「やだなあ。見た目通りのか弱い女の子だよ?」
「見た目で言うなら控えめに言っても悪の四天王の紅一点とかその辺だろ!? なあ、そっちの多少話の通じそうなアンタからも何か言ってくれよ! 放置したらこれと一緒にパーティー組んで戦うことになるんだぞ!」
女の子に向かってこれ呼ばわりだなんて、お仕置きの理由がまた一つ増えたね?
というか口調のロールプレイがぐだぐだになってるよボス……
「………………」
話を振られたクロは無言で目を閉じてる。まさか寝てないよね? まあそもそも装備の外見とか気にするタイプじゃないし何も言われないだろうけどさ。
「なあ、何か言えよ! 俺の感性がおかしいのかって不安になって来るんだよ!」
「あ、ああ。すまん。ようやくそこにまともにツッコミを入れてくれる人が現れてくれた感動を噛み締めてたんだ…… ありがとう、本当に」
「ちょっとクロー!?」
ブラウスと手袋は伊都の品質と染色方法の向上により、色自体は暗いものの生地の光沢でスカートより明るい色に見えます。ユーレイちゃん以外の人は気付いてるかもしれません。
素材の関係でやや物理防御力寄りですが、本文で触れてる通りかすり傷でも血が止まらなくなって死にかねないオワタ式装備です。




