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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第三部 マイペース攻略準備編
95/162

縛り93,5ゾウ禁止

十一月中は実家に帰省しとりました。

DTBはやってません。

「何がって言われても、どっからどう見ても問題にしか見えねえな! どう説明したらいいんだこれ! なあクロ!」


 反省会で、何が問題かなんて考えることじゃないに続く鏡見ろ発言に対し、詳しい説明を求めた僕への返答がこれ。これもう怒っても良いよね?

 僕だって何か問題が有っただろうことはちゃんとわかってるんだよ。なにも問題なかったら上手く行ってたはずなんだし。

 老師から聞こうとしても要領を得ないだろうし、問題点をちゃんと説明出来そうなクロに目線で問いかける。


「まあその、なんというかだな……」

「そういう誤魔化しは良いからはっきり言って欲しいかな」


 あからさまに目を泳がせつつなかなか答えようとしない。さては最初から上手く行かないのを分かってた上で今朝見送ったね?

 まあそこは良いよ。自分で試さないと納得できない性質だから止められても実行はしただろうし。


「忘れてるかもしれねえがお前の装備は一応全身呪われてるわけでな」

「うん、それが関係あるの?」

「傍から見ると見た目がすげー怖い」


 …………………そこ? いや、確かにこの服装で鏡を見たことないけどさ。


「……そんなに?」

「ああ。スカート捲りどころか生粋のプレイヤーキラーでも手出しするのをためらうレベルだと思う」

「いやいや流石にそこまでではないでしょ」


 冗談だと思って笑い飛ばそうとしたんだけど、クロの表情が真顔のまま。えっ、本気でそう思ってるの?

もしかしてスカートに変える前からもそういう風に見えてた? ちょっとグレートーンなだけで概ねいつも運動するときと大差ない服装、くらいのつもりだったから地味にショックだよ。


「という訳で囮作戦自体は悪くないと思うんだが、囮役は他の誰かに頼んだほうがいいと思うぞ」

「んー、でも誰か適任の人いる? そこそこ足の速い人じゃないと逃げられちゃうだろうし、今街にいる僕の知り合いにはそんな人いないよ?」

「そもそも囮役自らが追いかける必要ないだろ? 別の場所で待機して、相手が出て来たら追いかければいい」

「いやいや、そっちの方が難しいでしょ。初動で出遅れてても追いつけるなら最初の時に僕が捕まえてるって! しかもそれ一回失敗したら確実に警戒されて跡が面倒になること請け合いじゃん!」

「その条件で可能なやつがいるだろうが」


 僕の反論にクロはなんてことないようにできる人がいる言ってのけた。難しい理由は、そもそも相手の足が速いこと、自分が被害者じゃない分、何らかの合図を受けるか、さりげないスカート捲りを見逃さずに反応出来るだけの集中力を維持できること、そして、入り組んだ道で見失わないように相手を追いかける能力。

 順当に考えれば斥候系か、それに近いスキルやステータスの構成をしていて、合図を受けてから動いても追いつけるAGIの持ち主? クロと僕の知り合いってそこそこかぶってるはずだけどそんな人いたっけ?


「う~ん?」

「いやいや、むしろなんでまず最初に考えないのかってレベルの案なんだが」


 最初に? 僕が自分でやるのを最初に考えちゃったけど、そうじゃなければまず考える人に頼るってこと? クロにも出来ないだろうし、それ以外のこのパーティーのメンバーかな?


「まさか……」

「そうだ。老師を投入する」

「それはどうかと思うんだけど」

「レベルとステータス振りによる全プレイヤーでも屈指のAGIを持ち、入り組んだ道でもたぶん勘で追いかけることが出来る。何より昨日からの言動。あれならスカート捲りのタイミングを見逃すことは無いだろうから合図のラグも無い。不安要素はスカートの方に気を取られて追跡タイミング逃すことぐらいじゃねえか」

「いや! そこもどうかと思うところだけど! 一人のプレイヤー的にそれはちょっとフェアプレイ精神に反するんじゃないかなって……」

「まあ他の人もそのうち対策取るだろうし、それこそ前線に出てる面子の中には斥候系で女性の人もいるだろうし、時間が経てば他の手段も採れるとは思うぞ。今日明日ってのは厳しいかもだが」


 提案はするけど、自分自身は急いで解決することへのこだわりが有るわけではないという態度を取られてしまい、判断は僕に丸投げされた。

 早期解決を取るか、より無難な方法を選ぶか……





 結局、僕たちは老師を軸にした囮作戦を実行することにした。よく考えたらスカート捲り犯に対して発揮するフェアプレイ精神はバグ技を使わないくらいで十分かなって。老師は多分バグ技じゃないから大丈夫。動きは完全にバグった見た目だけど。

 囮役はミルフィーユさん。最初はコノカさんに頼もうと思ったんだけど、スカート捲り犯に並々ならぬ敵意を燃やしてるみたいで、ちょっと燃え過ぎてて囮には向いてなかったというか。スカート捲られるの自体凄く嫌そうだったし。


「さて~、上手く行きますかね~?」

「老師がちゃんと追いかけてくれるかどうかっていう不安が有るよね」

「そこは~、老師さんがちゃんと反応するようになるまで~、好き勝手させておけばいいのでは~? ミルフィーユさんなら~、やってくれますよ~」

「いいのそれで? というか、ミルフィーユさんもだけど、コノカさんこんなことして油売ってて大丈夫なの? 二人ともトップギルドの中核メンバーだよね?」


 必要以上に警戒させてもしょうがないということで僕とコノカさんは大人しく喫茶店でお茶を飲んでいる。椅子に座っているから咄嗟の対応は出来ないけど、現場とは壁を一枚隔ててるだけなので、なにが起こってるかも概ね分かる絶好のポジションだね。

 ミルフィーユさんは彼女の茶飲み友達と言って連れて来た女性と、かれこれ三十分くらい立ち話を続けてる。今日のところは二時間までは粘ってみるって言ってたけど二時間も立ち話できるって凄いよね。


「私達は~、実力で最前線にいるのとは~、ちょっと違いますから~。やることが少ないわけではありませんけど~、これもやるべきことなんです~。適材適所ですよ~」

「言われてみると、確かに普段やってくれてることの延長に有るのかな? コノカさんがメンバーの取りまとめで、アレクさんがギルド外との情報交換みたいな感じ?」

「そうですね~。でも基本的にはギルマスよりも~、煮卵さんの方が~、働いてくれてます~。エックス君も~、レベリングの引率なんかを積極的に~、やってくれてますよ~」

「ミルフィーユさんは?」

「そうですね~、無理矢理レベリングとかに連れ出してる時以外は~」


 と、そこでいったん黙るコノカさん。店内が静かになったことで、壁の向こう側の話声が聞こえてきた。きゃあきゃあとにぎやかな声に混ざってるのはプレイヤーの名前かな? 何の話かはよく分からないけど盛り上がってるね。


「だいたい~、あんな感じです~」

「あんな感じって、あんな感じ?」

「はい~。日がな一日~、誰かと道端で話してます~」



『ちょっと! 今スカート捲られたんだけど!? ちゃんと見てるの!?』

『おう! ばっちり見てたぜ! あと五センチ、惜しかったなあ……』

『惜しかったなあじゃなくて、見てたなら犯人追いかけようよ老師……』

『という訳で~、次回に備えつつ~、作戦続行お願いしますね~』

『本当にこの作戦大丈夫なんでしょうね?』


 チャットをしてる間も、外からは「やだも~、これだから男どもは~」なんて会話が繰り広げられている。口頭で話しながらチャットを思考入力ってなかなかできる人少ないんじゃない?


「なんというか、プロだよね。立ち話の……」

「ですね~。今回の作戦に~、これ程適任な人は~、他にいませんよ~?」


 最初は特に理由もなく選ばれたものだと思ってたけど、一度目のスカート捲りに対して程ほどに驚いたふりをしつつ、囮作戦の存在をおくびにも出さない辺り、本当に適任だったね。

 とりあえず老師がちゃんと動いてくれないことには作戦が成功するはずもないから、もう一回くらい釘を刺しとこうかな。


『今までの傾向からして二人目三人目がそう間隔を置かずに来ると思うから、今度こそ見逃さずにちゃんと追いかけてね老師!』

『二人目? ああ、あいつだな! 今スカート捲ってる奴か! 分かったいってくる!』

『それ間に合うの!?』


 もう二人目が来てる可能性は考えてたけどさあ! まさかそんなタイミングで飛び出すと思わないよ!?

 外が騒がしくなったのを感じつつ、コノカさんと顔を見合わせる。


「捕まえられると~、思いますか~?」

「う~ん、よっぽど相手がステータス使いこなしてない限り老師から逃げ切るのは無理だと思うし、大丈夫。と思いたいね」

「とりあえず~、お会計済ませますか~」

「そうだね。お代わり注文する前で良かったよー」

「急いで飲んで~、火傷は嫌ですからね~」


 なんて、イマイチ緊張感のない会話を交わしながら、のんびり店を出てミルフィーユさんと合流するのだった。

 いよいよスカート捲り犯とご対面だね! 老師がちゃんと捕まえてれば!

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