縛り91,オートボム禁止
「という訳で、スカート捲り犯どもをとっちめようと思うんだけど」
「なんというか、実際に詳細を聞くと輪をかけて何とも言えない気分になる話だな。集団でスカート捲りって……」
合流して、ことの経緯と事態の収拾への確固たる意志を表明したんだけど、クロの反応は芳しくない。
「クロの薄情者ー! むっつりすけべー!」
「いやスカート捲りしてる奴らに同調してるわけでも被害を無視して良いと思ってるわけでもないからな!? ただちょっとなじみのない事態に気持ちが追い付いてこないというか」
「じゃあ犯人の首三つで許すよ」
「いきなり物騒だな!? 普通事情聴くとかしねえの!?」
「どんな事情が有ったらスカート捲りなんていう行動に繋がるって言うのさ!」
「それが分からないから聞くんじゃねえのかよ。もうちょっと落ち着け」
適当な言いがかりに、適当な返しが返って来る。ちょっと落ち着くけど、それで怒りが収まる訳じゃない。
クロがむっつりなのは事実だから言いがかりとは別だけどね!
「大事なパーティーメンバーが被害にあってるのに反応薄くないかな! これでリンドウちゃんがグレたりでもしたらこのパーティー癒しがなくなるよ!? ゲーム開始以来最大のピンチだよ!?」
「主に怒ってるのお前で被害者本人がどちらかと言うと戸惑ってる側なんだがその辺どうなんだ」
「む! そんなことないよね!? リンドウちゃんも怒ってるよね!?」
クロの返答にまさかと思いながらもリンドウちゃんに水を向ければ、話を振られると思ってなかったとでも言うようにキョトンとした表情。あっれー?
そして、リンドウちゃんはそこからさらにちょっと何かを考えてからゆっくりと口を開いた。
「え~と、そもそも、あんなスピードで走り去ってたら、捲っても見えないんじゃないかと思うんですけど。捲られ方もこのくらいでしたし……」
そう言って水平にも届かないくらいまでスカートの裾を上げて見せるリンドウちゃん。
とりあえず捲られたスカートに反応してしゃがもうとした老師には裏拳をお見舞いしておく。
「「………………………」」
リンドウちゃんの落ち着いた態度への驚きが過ぎ去って、発言内容を理解したことで、僕とクロをさらなる困惑が襲った。
「いや、見えないとしたらなおさら目的が意味不明だし、何か見る手段が有るんじゃないかな、スキルで下からの視点が得られるとか……」
「全員でそのスキル取得してるってことか? あり得ないとは言わんが、そもそもスキルが有るなら逆にスカート捲る必要なくないか?」
スカートを水平程度まで捲る意味って何だろうね……? スカート捲りって普通、何のためにするんだっけ? パンツを見るため? 女の子のリアクションを求めて? 気になるあの子の興味を引こうとして自爆する男子……? どう考えても成人男性が初対面の相手にする場合には当てはまらないよねこれ。
となると、スカート捲りそれ自体が目的とか? スキル上げとかでスカートを捲るのが大事とか? 無いと思いたいね。そして思考が盛大に脱線してるね。
「……詳しい手段についてはさておき」
「さておいたら下手しい冤罪じゃないのかそれ…… いや、捲ってる時点でアウトか」
「そう! 別に捕まえるって言っても素直に話してくれるなら手荒なことはする必要も無いしね! その後のことはとりあえず捕まえてからで良いよね!」
「もういろいろ訳分かんねえし手荒なことしないならそれでいいんじゃねえかな……」
クロが諦め……じゃなくて納得してくれたみたいで何よりだね!
「じゃあ早速! 僕は買い物してた辺りに出向いてスカート捲り犯たちが出てこないか試してみるよ!」
「いや、そもそもお前スカート穿いてないだろうが」
「あっ。どーりでね! リンドウちゃんばっかり狙われるのはなんでかなーって思ってたんだよね!」
「まさか相手にされてなくて拗ねてる、なんてことは無いよな?」
「有るわけないじゃん! ロリコンにせよおっぱい信者にせよ慈悲は無いとは思ってたけど。今でも慈悲は無いけど!」
「そ、そうか……」
まったく! 心外にも程が有るよ!
気を取り直して、作戦の要点を纏め直す。
「スカートさえあれば作戦としては順当なんじゃないかと思うんだよね。僕が囮になっておびき寄せて、そのまま現行犯でとっちめる作戦で行こうかなって。捕まえたら後はもちろんみんなを呼んだうえで本拠地に案内させて一網打尽! どう?」
「いかにも名案みたいな顔で言ってる割にゴリッゴリのパワープレイだな…… というかそれ俺らの役割ないし勝手にすればいいと思うんだが」
「あるよ! リンドウちゃんに不埒な輩を近づかせないっていう大事な役割が!」
「つまり街中以外で自由行動だろそれ」
そうともいう可能性も無きにしもあらずだね。でもパーティーとして活動してるんだし、単独行動を認めてもらうっていうのも協力の一つだから相談は大事!
「となると、ユーレイ君のスカートを作らないとかな?」
「お願いしても良い?」
「構わないが、装備品としての性能は今と比較してもあまり向上させられないと思う」
「材料は足りてる?」
「品質にこだわらなければなんとでもなるよ。いい加減同じ服装でいるのも飽きていないかと心配してたところだったし、丁度いい機会だと思う」
「ありがとう!」
スミスさんがスカートを作ってくれることになったし、決行は完成を待ってからだね。こういうところですっと気を利かせてくれて本当にいつも助かってるよ。
「となると、寝る時間までは宿屋で各自スキル上げかな?」
「もともと一日休みの予定だったしダラダラしても別にいいんじゃね?」
「そうだね。僕とリンドウちゃんは念のため宿屋から離れない方が良いとは思うけど、男性陣は自由行動再開かな?」
「だな。俺は一応宿屋で待機しとくか。買い物にも飽きたしな」
「じゃあ中断してた耐性訓練する?」
「今日は休みだっつってんだろ!」
行動方針が決まったし、怒りは捕まえる時までしまっておこう。
落ち着くと疑問が強くなるんだけど、いったい何でスカート捲りなんだろうね……
難産でした。クオリティよりもとにかく書き上げた自分を褒めたい。あわよくば他人に褒められたい←




