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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第三部 マイペース攻略準備編
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縛り85,魅了、スタン、石化禁止

ゲームやる頻度が減ってサブタイネタが尽きかけている……

 それは、割とあからさまに、『オープンワールドじゃないゲームでのエリアの境界』の形の一つ、みたいな外見をしていた。靄のようなものが立ち込めていて向こう側が見えず、靄の中に踏み込むとロードを挟んで別のエリア、みたいな。

 このゲームはオープンワールド方式のはずなので、こんなあからさまな何かが有るのは向こう側がボス部屋だからなんじゃないかっていうのがクロの予想。


「ボス部屋か、そうじゃなければ次の階層みたいな感じに区切られてる感じだよね見たところ。大穴でこういう靄を出して姿を隠すモンスターがこの先には出てくるようになるっていうパターンも有るけど」

「いずれにしても別行動してる状態で突っ込んでいい場所じゃねえだろ。老師が好奇心そのままに突撃していこうとしたときはマジで焦った……」

「うんうん、もし阻止出来てなかったら全力で拗ねるつもりだよ」

「いやそこは心配するところじゃねえかな。ってか何やってんだお前」

「見ての通り! 石を投げこんでみてるよ!」


 水切りの要領で掬い上げるように! いや、水面が有るわけでも無いしこの投石フォームに意味は無いんだけどね。

 投げ込んだ石が地面を跳ねる音は聞こえない。靄に跳ね返されるみたいな謎仕様にもなってない。よし、次は棒だね。


「てっきりとりあえず入ってみようとか言い出すかと思ってたが、思ったより慎重か?」

「入るにしても腹ごしらえしてからの方が良いじゃん?」

「そう思うなら腕突っ込むのは止めようぜ」

「棒の先端がなくなって戻ってくるようなことも無かったし大丈夫かなって」


 予想通りと言うか、用意していた採掘用の道具が午前中になくなったからこうしてボス部屋(仮)のところに来てみた訳だけど、お昼ご飯がまだなんだよね。全力で戦うと満腹度の消費が馬鹿にならないし、いきなりボス戦っていうのは避けたいよ。


「まあ、投げ込んだ石とかに反応して飛び出してくるパターンだったら仕方ないってことで」

「おい」

「とりあえずお昼にしようか。これ以上調べるには石投げこむよりもそういうリスクが高いことしなきゃだろうし」


 クロとの会話にひとまず終止符を打って、荷物から保存食を取り出す。


「ん? 飯か? いい加減上手いものが食いたいぞ俺は」

「町に戻ったら鉱石をいくらか換金して美味しいものでも食べようか。プレイヤーの料理もそろそろ出回るようになってるだろうし」


 まあ毎日毎食保存食そのままか即席料理となれば、老師じゃなくても辟易するよね。せめて美味しくて簡単に調理できる食材が取れるダンジョンだったらよかったのに。


「いろいろと試すのは、具体的にどういうことを把握したいからなんだい?」

「一番大きいのは、一方通行なのか戻ってこれるのかかな。一度入ったら逃げられないとなると、挑むのは得策じゃないと思うし」

「なるほど。慎重なのは良いことだと思うよ。目的は達しているんだからなおさらね。一番大きいのがそれということは、他にもあるんだろう?」

「ボスが部屋から出てくることは有るのかと、部屋の外から内側に向けて攻撃することは出来るのか、だね」

「分かりそうなのかい?」


 スミスさんに問いかけられて、肩を竦める。ハッキリ言って、一回中に入ってみないと分からないだろうなっていうことの方が多いし。


「もし部屋の外から一方的に攻撃できる仕様だったら楽なんだけどね~」

「案外出来るのかもしれねえぞ? 靄で見通し効かないから命中率がお察しになるくらいでバランスとってるかもだろ」

「その場合のオチはボスには自然回復能力が備わってて適正以上の戦力が無いとMPや飛び道具を延々消費し続けることになるってやつだよね!」

「広さもボスの種類も分からないし、倒せたかどうかも分からないんじゃ結局無意味だよなあ」

「隠密行動に特化した人が一人で入って観測手やれば可能性はあるかも?」

「それはそれでそこそこにリスキーじゃね? そもそも中と外で連絡着くのか?」

「それも要確認事項だね」


 確かめたいことが僕たちが思いつくことだけでもこれだけ有るとなると、出来れば早いうちに確かめた上で余所とも共有しておきたいっていう思いが強くなるね。


「結局、この先がボス部屋だと仮定すると、中にいるであろうボスを倒せるか。っていうのが一番優先すべき議題だよね」

「ボスの強さか。雑魚を基準に見るなら適正レベルは確保出来てそうなもんだが……」

「イノシシの時くらいには雑魚との戦闘には余裕があるから、レベル自体はさほど問題ないと僕も思う。どちらかというと相性がネックだよね」


 火力が装備品頼みなステータスとスキル構成の僕と、ステータスは高いけど一切スキルを使えないクロ、素手での戦闘以外の手段を持ち合わせてない老師。リンドウちゃんは辛うじて搦め手もカバーしてるけど、そもそも戦闘要員じゃないし、状態異常はボスには危機が悪いのが定番。スミスさんは言わずもがな。


「確かに。物理攻撃に耐性有るボスとかだと普通に詰むなこれ」

「ちゃんとした魔法メインのアタッカーがいないからねー。順当にここで出たモンスターの上位モンスターがボスやってるパターンだと三通り中の二通りで割りと厳しいことになるんだよ」

「素直に撤退した方が良いんじゃねえかそれ」

「厳しいだけで普通に勝てるんじゃないかとも思ってるよ? それに、撤退できるならダメージが通らないことは問題にならないしね」

「結局そこに戻るのか……」


 ゴブリン系列であれば物理攻撃が通用しないことは無いだろうけど、ムカデの硬さに高いHPがついて来たら僕の魔法攻撃やメインウェポンをなくしたクロの攻撃力だととんでもない時間がかかるだろうし、コウモリに至っては天井の高さや壁の配置によってはまともに攻撃することも出来ないだろうから。

 長期戦は不確定な要素が多いから、勝てるんだとしても逃げられるなら逃げて対策固めたいよね。


「まあ一方通行にはなってないと思うんだよね。少なくとも逃げる手段はあると思う」

「その根拠は?」

「イノシシの時にアレクサンドロスさん達が言ってたじゃん? 背中を向けられないようなプレッシャーがって。せっかくそういう方向で調整して、ステータス振りとかを複雑にしてるのに、わざわざ別の要素で逃げられなくするようなことしたら魅力半減じゃん」

「いやお前、魅力も何もデスゲームだからな?」

「そこに目を瞑れば少なくとも今のところそんな台無し要素ぶっこんでくる感じではないじゃん?」

「そこだけは目を瞑っちゃダメだろ……」


 むしろリアリティーとかモンスターの挙動の自然さとかに着目すれば十二分に神ゲーの評価を受けられるレベルだよね。バランスに関してはスキル周りで評価が分かれてきそうな感じが有るけどさ。


「逃げるのにどのくらいのMNDが必要か分からないから、一通り外からのアプローチ試したら、僕が一人で入ってみるのが一番無難だと思うんだよねやっぱり」

「一番無難なのは入るの止めて街に帰ることだからな」

「むう」


 今回の成果物を町に持って帰ればそれで装備や消耗品を今まで以上の水準で整えられるんだから、今は帰るのが無難なのは当然だね。でも、このダンジョンの適正レベルは元々そんなに高くもない印象だし、ボスに挑むためだけに僕達がわざわざもう一度訪れる保証はないんだよ。

 今挑まなかったらきっと次に挑むのは別のマップの別のボスになると思う。


「どれだけ分の良い博打でも続けてればいつか負けることになるんだぞ?」

「死なないような負け方が出来るように工夫しようって考え方も有るよね」

「博打自体を避けるのがスタンダードなのは一応分かってるんだな……」

「未知と確率の塊みたいな環境で避け切るのは不可能だと思うし、フィールドボスと違ってこっちのレベルで難易度が変動する仕様とかもあり得るんだから、今挑んでも後から挑んでも変わらないと思わない?」

「変わらなくはないだろ。それに俺らが一番に危険を冒す必要は…… あー、やっぱ今の無し。相性悪い相手の可能性が高いなら避けようぜ。適材適所は悪くないだろ」


 自分たちがリスクを負うのを避けるために誰かに一番乗りを譲るなんて、そんなフロンティアスピリットの欠片も無い提案はNGだよ。別にフロンティアスピリットを強要するつもりはないけどね! 状況が時間で改善されないのなら誰かがリスクを負わなきゃいけないんだから、押し付けあう展開を避ける意味も有るからね。


「とはいえ、攻略するつもりでボスに挑むならスミスさんとリンドウちゃんには安全なところで待機してもらった方が良いかもね。そうなると三人かあ……」


 対策が設定されてないなら数の暴力は有効っていうのもイノシシさんの残した教訓の一つで、逆に言えば推奨人数以下で挑むのはそれだけ大変。それでも勝てるんじゃないかなーと思ってるからこその今のスタンスだけど、人数をそろえて挑む方が良いのは事実。


「むう……」

「今度スキル上げ付き合う」

「むうう。分かった。挑む前提で行動するのはやめるよ。でも仕様の確認まではするからね?」

「それで挑まざるを得なくなったらどうするつもりだよ」


 理屈を並べ立てたり、大丈夫だなんて言う楽観的な意見を口にするべき時じゃない。それが理解できたからこそ、僕は右手で形作った手刀を正中線をカバーするように体の正面へ、腰を折ることで重心を下げ、目線を逸らさないままに急所である顎を引き、一秒にも満たない時間で必殺の構えを取る。

 徐氏傾城流初段の名にかけて! ここは譲らない!


「悪いけどその時は助けて!」

徐氏傾城流、じょしけいせいりゅうと読みます。

女子高生の間で共有されている数々の必殺技が、高校生に限られた技ではないという理由と、男子に秘匿するためにそれっぽい字を当てられたもの。

級位持ち<段位持ち<傾校級<傾城級<傾国級 の順に格付けされていて、ユーレイちゃんは段位持ち


作者はもちろんでっち上げのつもりですが、もし万に一つ類似の流派が実在していたら改稿します(ねーよ)



回りくどい文章だから読み飛ばした人、イメージ付かなかった人のために捕捉すると、上目遣いでごめんねのポーズです(雑)

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