縛り81,スピードアップアイテム取得禁止
適当にサブタイ付けたけどSTGってスピードアップ取らないとクリア不可能なのも多いですよね。
あの後、クロ達にスミスさんの提案について話したところクロが大喜びで歓迎してくれて、今僕はスミスさんと二人で行動してる。
クロの「いつ暴走始めるか気が気じゃなかったんで、スミスさんがガス抜きに付き合ってくれるなら安心できます!」っていう発言には後できっちり報復しないといけない気がするけど、ともあれレベル上げの効率は大幅に向上してると思う。
『多分コウモリが三匹、二十秒ぐらいで接敵』
「了解、さっきと同じ要領でいいんだろう?」
『おう、大丈夫だとは思うが気を付けろよー』
敵発見の報告に、同行してるスミスさんと、別行動組を代表してクロから返答。普段から声に出して言ってることをチャットで発言するだけだから別段負担にもならなくて良い感じ。
十秒くらい経って、洞窟の奥の暗がりで何かがパタパタと羽ばたいてるのを目視でも確認できた。タゲ取りと視界の確保を兼ねて【ライト】を発動しつつ前に出る。
「左から順番で!」
「分かった。行くよ。それっ」
「【アッパースラッシュ】!」
スミスさんの投げた石ころが見事に命中し、体勢が崩れたタイミングで僕がスキルを叩き込めば、もともと耐久力の高くないコウモリはそれで落ちた。
コウモリとの戦闘だけがネックかなと思ってただけに、あんまりにもあっさり撃墜できるから拍子抜けというかなんというか…… とはいえクロに同じやり方で落としてもらおうと思ったら十回やっても一回も上手く行かない気がするから、スミスさんのセンスとステータスが有ってのことなんだろうけどね。
『報告ー。こっちは問題なく戦闘終了したよ。索敵も順調』
『そうか、こっちは採掘中でしばらく敵影なし』
使ったスキルには違いが有ったりしたけど、概ね同じことをもう二回繰り返して完全勝利。剥ぎ取りに使えるスキルも無いからサクサク進もう。
コウモリをあっさり倒せることの何が嬉しいって、【サーチ】を何の気兼ねもなく使い倒せるから不意打ちを受けるリスクが段違いに低いことだよね。次点で採掘の外れアイテムの有効利用になってるところ。
『採掘ポイントAに到着~。これから採掘を開始するよ』
『おう了解。こっちはそろそろ採掘終わるから終わったらマッピング再開だ』
スミスさんが採掘の準備をする間にクロに連絡。マッピングが羨ましくないと言ったら嘘になっちゃうけど、連絡を密に取りながらの行動自体はファンタジーRPGをやってるのにFPSみたいでちょっと楽しい。
「【鍛冶】のスキルが順調に上がってるからかな、石ころと鉄鉱石らしきものの比率が少し鉄鉱石よりになってるみたいだ」
「おお! どのくらいまで上がったの? それと、戦闘用の石ころが足りなくなったりはしなさそう?」
「今が9だからもうすぐ二ケタだよ。使ったものも都度拾ってるから石ころが不足することは当分ないだろうね」
「えっ、スミスさんいちいちこの暗い中で見つけて拾ってるの!?」
「投げた後の落下地点はおおよそ分かるからそんなに大変なことでもないよ」
いや、洞窟の地面に落ちた拳よりも小さな石ころだよ? 大変だよね? 大変じゃないわけないよね? どうしよう、僕が間違ってるのかな……
困惑している間にスミスさんはアイテムボックスから取り出したツルハシを振り始めてしまったので、僕もおとなしく周囲の警戒に努めることに。
「…………………」
『こっちは採掘終わったから移動開始する』
『了解―』
…………………。
スミスさんは真剣に採掘に取り組んでいる。そして、行き止まりのここは警戒する必要はあっても実際にモンスターが現れることは滅多にない。
そして、採掘ポイントから一通り採掘を終えるまでには二十分弱の時間がかかる。単純作業で心が洗われる人達もいるからそれを酷い仕様だと言うつもりはないんだけど……
『暇ー!』
『うおっ、なんだよ藪から棒に!?』
『クロー、何か面白い話してー』
『雑な無茶ぶりやめろ! あっと、敵が出たから後でな!』
『じゃあ戦闘実況でもいいよ。野球中継風のヤツ!』
『具体的な無茶ぶりならいいって話じゃねえからな!? いつも通りスキル上げでもしてろ!』
うう…… クロが冷たい…… スキル上げかー、そろそろ【汎用魔法】の新しいスキルが増えても良さげだしそれかなあ? あ、【隠密】のスキル上げが止まってるし、戦闘中はタゲ取らなきゃなことも考えるとそっちが優先かな?
『えー、今日も始まりました。異種対抗戦、選手及び実況のクロでお送りします』
『え!? クロさん!?』
あ、やってくれることにはやってくれるんだね……
『人間ズ先発の老師選手、素早い動きでゴブリンズの三名を翻弄しております。ああーっとここで【正拳】の強烈な一撃が決まったぁ! 対するゴブリンズは後手後手の印象ですが、これはなにかの作戦なのでしょうか。そこのところどうですか? 解説のリンドウさん』
『え!? え!? 私ですか!? と、とりあえず殴れば勝てると思います!』
『心強いお言葉ですね。ゴブリンズの一人は私が抑え、一人が先程倒れたので人間ズの勝利はゆるぎないんじゃないですかねこれは。おっと、ここでCMです』
リンドウちゃんまで巻き込んでノリノリかな? うん、面白いかどうかはBGMにはちょうどいいね! 今日のスキル上げは【隠密】系統にしようっと。
『で、CMは?』
『そこまではやらねえよ! というかもう戦闘終わったわ!』
『ふむ、残念だ。ラジオを聞きながらやっているようで、採掘していて楽しかったのだが』
『スミスさんまで!?』
『やっぱこれだねー♪ とってもノッポ♪』
『リンドウちゃん?』
『すみません、コマーシャルって聞いたらなんか頭に浮かんで離れなくなってしまって…… これ何のコマーシャルでしたっけ?』
『知ってるようで全く別物の可能性も高いからノーコメントで…… というか身長高いとしか言ってないよねそのCM!?』
リンドウちゃんのボケはたまに斜め上に振りきってくるから行く末が恐ろしいよ…… クロと言い老師と言い、うちのパーティーはボケ過多だと思うんだよね。
「待たせたね。次の採掘ポイントに向かおうか」
「お疲れ様スミスさん。クロ達に知らせるね」
『採掘終わったから僕らも移動するね』
『あいよー』
この採掘ポイントが今朝のスタート地点だったので、見つけていた三か所の採掘ポイントを回るルートを一周したことになる。鉱石がリポップしてるんだからモンスターもリポップしてると思うけど、もし掃討済みな感じでエンカウント率下がってたら嫌だなあ。
「ふむ、一周するのに採掘も含めて三時間くらいだったかな? 採掘ポイントは二時間ぐらいまでが一番育つ速度が速いみたいだから、採掘のペースを上げればもう少し効率よくなるかもしれない。待たせるのも悪いし、次からはもう少し早く終えられるように頑張ろう」
効率…… もう少し早く…… スミスさんが何の気なしに使った、心躍る単語に、この素材集めと経験値稼ぎを何倍も楽しむ方法を思いついた。
「ねえ、スミスさんせっかくだし、TAに挑戦してみない?」




