縛り79,コテージ使用禁止
すでに五月も半ば……
実家に帰省したりで書く時間確保できなかったりしたことを鑑みても遅い……辛い……
「う~ん、思ってたよりも美味しくないね……」
「ユーレイさん何か食べてるんですか? 確かに買い込んだ食料はあんまり美味しくはないですけど……」
「いや、ごはんじゃなくて経験値の話だよー。ダンジョンっていうからもっと戦闘の頻度が高くて、敵も強いのかなと思ってたからねー」
「敵が弱いのは良いことなんじゃないんですか?」
「強い敵の方が経験値がたくさんもらえるなら、その分早く強くなれるからね。倒せる範囲で強い敵と戦いたいんだよー」
「なるほど。勉強になります」
「いや、安全考えたらこんなもんだろ。入り口での出来事もう忘れたのかよ。そもそもメインの目的はレベル上げじゃねえだろうが」
僕の愚痴を拾ってくれたリンドウちゃんと会話をしていたら、クロが待ったをかけに来た。確かにレベル上げは今回は意識的に目標に置くほどには重視してない。重視してないんだけども……
「だってさあー! 昨日も今日もこれだけモンスター倒してるのにまだレベルが一つしか上がってないんだよ!? 必要経験値が増えてることを考えても効率悪すぎない?」
「全員で戦闘してるわけでもないししょうがないだろ。美味しくなくてもこれ以上戦闘頻度が上がることも無いだろうしな。採掘目的に奥に進むのは流石にリスキーすぎると思うぞ?」
「う~ん、奥に進んでも採掘の効率はそんなに変わらないだろうから、採掘目的で進むことは考えてないかな」
現時点で僕たちが見つけた採掘ポイントは三か所。そして三か所目を発見した後で一か所目を確認しに戻ったら、最初に見つけたときよりやや小さいくらいのサイズで再び採掘可能そうな状態になってたから、たぶんだけどこの三か所をぐるぐる回って採掘すればいい感じになるんだと思う。
つまり、金属素材を仕入れるっていう当初の目標に関しては後は時間をかけさえすれば達成できるめどが立ってるんだよね。でもそうなるともうちょっと上を目指してみたくなるのが人の情ってもので……
「確か同一マップ内ならパーティーメンバーへの経験値分配の減少ってそこまで大きくなかったよね?」
「ああ、そうだな。マップ変わると一割くらいしか入らなくなったと思うが。ってお前まさか」
「二手に分かれれば戦闘回数二倍で経験値も二倍! ついでに回れる採掘ポイントの数も二倍!」
「………… いや、無理だろ」
僕の提案に対して、一瞬の沈黙を挟んでからのー、ばっさり。
「えー、なんでさー」
「五人しかいなくて、そのうち二人が生産系のスキル構成なのにこれ以上どう分けるんだよ」
「う~ん、どうにかならないかな? 戦えない人が採掘するって思えばスキル構成のことはそんなに気にしなくても大丈夫じゃないかと思うんだけど」
分けるとしたらどう分けるのかを考えてみる。
まず、現状採掘の関連スキルを持ってるのはクロとスミスさんの二人だけだから、理想を言うと二人には別の組に入ってほしいところだよね。それから、ムカデとか、物理攻撃が効きづらい敵が出てきた時に確実に対処できる僕とリンドウちゃんも別の組にしたいかな。
「う~ん、クロとリンドウちゃん、僕とスミスさん? でもそれだと老師が入らない側の戦力が不足するよね。僕とクロで組んで、老師とスミスさんとリンドウちゃんの三人で行動してもらうのは何となく不安だし…… 両方のグループで採掘までやろうとするのは欲張りすぎなのかな」
「いや、採掘目的だからな?」
「片方で採掘できれば今よりも採掘のペースが落ちる訳じゃないし、四人と一人で分けて経験値稼ぐのが良いと思わない?」
「いや、それお前が一人で行くつもりだろ。却下だ却下」
「えー、なんでさー」
範囲攻撃抜きでの適正以下の狩場でのパーティープレイはソロ×パーティー人数がスタンダードじゃん? 5チームに分けるとかそういう無茶なことは言ってないんだしこのくらいは良くない?
「なんでってなあ、お前ちょっとリスク取り過ぎじゃねえか?
「でも何らかの形でクリアが有るなら早く強くなるのが良いのは確かだし、イベントとかが行われる可能性だってあるんだからレベルを上げて備えておきたいのも確かじゃん? 最後に倒せるようにならなきゃならない敵の強さがレベルキャップより高い適正レベルの可能性も考えたら今くらいがきっと丁度いいと思うんだよね」
「お前の考えがいろいろ初耳だよ。外部からの救助を待つにしても時間の有効利用とかいう話はどこ行った!? 自力で脱出する気満々じゃねえかアホか!」
「外部からの救助が成功したらこのゲームは二度と遊べなくなる可能性も高いんだよ?
だったら最速全力で遊びつくしておかないと! リスクと効率と楽しさを考えての結論がチーム分け!」
だって、デスゲームになっちゃってるっていうことにさえ目を瞑ればモンスターのモーションもスキルの豊富さもNPCの受け答えのレベルも、どれを取ったってしばらく同レベルのものが出てこないだろう傑作だよ? このゲーム。
「いやお前絶対ちゃんと考えてないだろ……」
「全く考えてない訳じゃないよ? 死なないように気をつけつつ備えだけは進めておいた方が結果的に安全なんじゃないかなーくらいは考えてるし、犯人の目的は何なのかなーとかもぼんやり考えたりはするし」
「確かにレベルは上げといたほうがいいかもしれねえけど、リスクの発生するやり方はダメだろ。いつまで続くか分からないならなおさらだ」
「えー」
「とにかく、単独行動は禁止だ禁止」
「ちぇー」
ここまで強く言われちゃうと同意せざるを得ないよね。というか僕このダンジョンに向かう前に思いっきり単独行動してたの、ばれたら絶対怒られるよね。気を付けなきゃ。
ちゃんと安全な方法取るようにしてるつもりなんだけどねー。もしこれがデスゲームって言われてなかったら、それこそ僕と老師の二人だけでモンスタートレインしちゃう前提で突っ走ってマッピングとモンスターの種類とまで確認して、デスペナ食らってそのまままた走ってこっちに戻って来て…… それでもって最高効率のところで経験値稼ぎ。う~ん、それを思うと現状がなおさらまどろっこしいよ……
「とにかく、今日はもういい時間だし、朝から動いてたこと考えたらそろそろしっかり飯食って寝るべきだろ。外に出てからテント張るなら移動時間も必要なんだからよ」
「今日はこのままここにテント張ればいいんじゃないかな。行き止まりだから見張りも楽だし、朝から早速採掘できるしね! 目覚まし代わりに調度いいんじゃないかな?」
「酸欠とか大丈夫だよな?」
「これまで散々洞窟の中で運動しまくっといて今更!? 酸欠が存在する仕様だとしても普通に呼吸してるっぽいモンスターが生息してるんだから大丈夫でしょ」
「それもそうか。んじゃ、テント張るぞー」
地面が固かったりしてテント立てるのに少し苦労したけど、クロが力技で何とかして、無事に修身準備完了。
採掘ポイントの背丈が伸びてるのを見てやっぱり地面から伸びてるんだね、等と会話をしつつ晩御飯を食べて、今後の予定の再確認。
「見張りは、俺とユーレイと老師の三人がモンスターの対処で必須だから三交代で。プラスアルファでユーレイが見張りの時はスミスさんにもお願いして良いですか?」
「了解した」
「なんでさ!」
「お前一人だとサボることは無くても敵呼び寄せて狩るくらいはしそうだから別途お前の見張りが必要なんだよ!」
「読まれてる!? いやでも流石にそんなことはしないよ!?」
結局寝るまでの時間狩りに行くのも却下されてしぶしぶそのまま寝ることに。見張りじゅんはクロが一番面倒な真ん中を買って出てくれたから一番最後。
さて、あと何日素材集めしようかなあ。
洞窟の中に籠って一日過ごすのって不健康感凄いですよね




