縛り71,毒煙玉使用禁止
明日か明後日更新したいと書いた活動報告はいつの日付だったかな……
言い訳させてもらうならPCの充電部分の接続が死んでたんです!!(復活してから今日で四日目)
10月6日、サブタイつけ忘れに気付く。つらい。
物理攻撃を仕掛けてくるようになったことは反撃の機会が生まれたっていう点では歓迎すべきことなんだけど、攻撃自体はなかなか厄介だね。速度としてはそこまでではないんだけど、曲線的な動きで側面をすり抜けるように攻撃してくるからこの盾で防ぐのは厳しいものが有るし。
そして何より反撃手段が乏しすぎる。ナイフに持ち替えるべきか悩むねこれは。
「おーい、運んできたぞ~」
そんなタイミングでクロを退避させ終えた老師が戻って来た。クロ以上に魔法で攻めてくる相手に弱いから実はあんまりありがたくない増援だよね。
「老師、タゲ移っちゃうからあんまり近づかないでね」
「近づかないと攻撃できないぞ?」
「いやまあそれはそうなんだけど」
というか有効な攻撃手段がないから悩んでるわけなんだよね。もうこの際だから老師にも意見聞いてみよっかな。
「今こそ空中殺法の出番だな!」
で、聞いてみたら淀みのない瞳でこんな答えが。そういえばそんなことも言ってたねって感じなんだけど、確かに有効かも?
「で、どうやればいいんだ? ジャンプして攻撃すればいいのか?」
「あー、ちょっと待った。ただ真っ直ぐジャンプしたらその後着地まで無防備になってボコボコにされちゃうでしょ?」
今すぐ試してみたくて仕方がないという様子の老師に、仕方ないからこの機会に実演も交えて説明することにした。といってもほぼほぼ出任せみたいなものだからそこまでたくさん説明することが有る訳じゃないんだけど。
「だからこうやって斜めに壁に向かってジャンプして、壁を蹴って横方向の移動を組み合わせつつすれ違いざまに攻撃する感じかな。勢い余って変な体勢で壁に突っ込まないように気を付けて」
ぴょこぴょこと壁の間を往復しながらコウモリに攻撃を仕掛けて見せる。お、一匹落とせたね。実はいつ金縛りにかかるか分からなくてひやひやしっぱなしだけど。
「届くなら天井を使っても良いよね。下向きの移動に速度をのせられるからこれが一番威力乗るんじゃないかな?」
っと、僕がやるのはやっぱりちょっと厳しいね。半回転して天井に足を付けた時点での勢いが足りないからそこから加速するほど踏ん張るのは無理そう。
仕方ないから頭をかばって転がるように受け身を取りつつ着地。
「こんな感じなんだけ……」
「うおおおおおお! かっけええええ!」
「ちょっと、大声出し過ぎ!」
「よっしゃあ、俺もやるぜっ!」
どうやら思った以上にお気に召したみたいだね。でも反響して凄く五月蠅いから洞窟の中で大声で叫ぶのはやめてほしいかな!
「衝撃波で体勢崩されないよう気を付けて、って聞いてないねこれ」
仕方ないからぴょこぴょこ飛び回ってる老師になるべく攻撃が向かないようありったけ魔法スキルを使ってヘイトを稼ぐことにした。でもたぶん一番効果が有るのは【サーチ】なんだよね…… まあもう今近くに居るモンスターはあらかたこっちに来た後だろうし気にせず使っちゃおうかな。
「空中殺法おおー!」
うん、老師がすごい。やってることの基本は僕が見せた動きと変わらないんだけど、AGIに差が有るとこうまで違うんだね。移動速度が速い分、壁から壁への軌道がほぼ直線だし、勢いが乗ってるから天井でも踏ん張りが効くなんてものじゃなくて二三歩走るような動きまで出来てるし。
しかもどの動きもめちゃくちゃなスピードな上に調子に乗って適当に動いてるのが結果的に攪乱になってるみたいでコウモリも全然攻撃出来てないね。
「ラスト一匹ぃいいっ!!」
左右の壁をジグザグに往復しつつ、すれ違いざまに出の早い【拳打】のスキルで最後の一匹になったコウモリが撃墜された。驚きのあっさりさだよ……
いや、それなりに時間はかかったし、途中途中スタミナ切れかけてフラフラになったり、壁の間のスペースを測り損ねて激突したりっていったアクシデントも有ったからそこまで何の困難も無かったわけじゃないんだけどね。それでも結果的にはどうすればいいのか悩んでたのが、もっと言うなら慌てて逃げようとしたのが馬鹿らしくなっちゃうくらいの快勝だね。
「よっしゃらあ!」
「いえーい! お疲れ!」
今回のMVPな老師とハイタッチを交わして、そそくさと撤退。流石にちょっとこのまま強行しようっていう気にはならないかな。
「おい、そっちは来た道だよな? どうして戻るんだ?」
「どうしても何も老師だってほぼスタミナからっけつでしょ。とにかく一回戻るよ」
速いとこ老師の辞書に撤退の二文字を追加しないと先が思いやられるよ……
「という訳で反省会するよー」
洞窟を出て外で待ってたリンドウちゃんたちと合流して、その場で反省会。周りのモンスターがノンアクティブだけっていう環境に感謝だね。
あと、合流したときにはすでにクロも目を覚ましてた。っていうかすごくぴんぴんしてた。
「あー、その、悪かった」
「いや、もとはと言えば僕が迂闊に魔法で索敵しようとしたせいなんだから謝らないでよ。他にもいろいろと索敵のスキルが有るんだから【サーチ】で全部済むはずがないことくらい分かってたはずなのに…… ダメージは大丈夫なの?」
「ああ、気絶したのはほぼ完全に特殊効果みたいなものだったからな。というか待ってる間に自然回復で全快した」
あれ、これもしかして気絶したクロをそのまま囮にして仕留めて行けばそれで済んだんじゃないの? 今更になって思いつくなんて予想外のことに動転してたってことだね。いや流石にあの時思いついてたとしてもしないけど。他にどんな攻撃手段が有ったかもわからないし。
心配して損した。とまでは思わないけどね。まあでもちょっとした提案はしておこうかな?
「ねえクロ、今回は主目的が別にあるから次回以降になるけど、【気絶耐性】取る?」
副音声は「洞窟中の蝙蝠を魔法使って呼び寄せてしばらくフルボッコにされてみる?」だね。今後を考えると耐性系のスキルは前衛プレイヤーにとっては必須になっていくだろうし他のゲームでもありがちな【状態異常耐性】みたいな複合スキルがあるなら早急に取得と条件の把握して広めるべきだろうしね。
だから決してちょっとした意趣返しっていう訳じゃないんだよ。
「あー、ちょっと、考えさせてくれ……」
「うんうん、早いに越したことはないけど今は当初の目的を優先しなきゃだしね。なんなら町に戻ってから老師に兜の上から殴りまくってもらっても良い訳だし」
「それどんな苦行だよ……」
いや、モンスターの特殊攻撃延々受け続けるのあオッケーなのに? 現実でやったら耐性取得どころかパンチドランカー一直線だけどね
「まあクロが無事でよかったよ。リンドウちゃんとスミスさんも危ない目に合わせてごめんね」
「あの、それなんですけど…… 次は私もちゃんと戦います!」
「うん、リンドウちゃんにもちゃんと頼るよ。回復でタゲ飛びするかもしれない初見の敵にはちょっと警戒してもらうけどね」
「いえそうじゃなくて、ちょっと思ったことが有って、試してみても良いですか?」
「うん? 攻撃で? 良いけど何するの?」
「準備はいい? 行くよっ【サーチ】!」
老師のスタミナ回復を待ちつつ、作戦を練って二度目の挑戦。今回はコウモリへの対処法の模索がメインだね。
布陣はクロが一番前で囮、僕と老師がいつでも飛び出せる位置で待機して、リンドウちゃんはその後ろからスキルを使うっていうフォーメーション。
「そろそろ来るよ! 数は三匹!」
「はい! やります! 【メディカルミスト】!」
スキル名を叫びながらリンドウちゃんが瓶を投げる。薬を霧状に広げて範囲内の味方を回復するけど、霧の範囲内に敵がいた場合敵も回復しちゃうっていうちょっと癖のあるスキル。
……中身が回復効果の薬だった場合。
「おいぃ!?」
瓶の中身が霧状に広がる。当初の予定ではクロの前面に広げた状態で待ち構えるって作戦だったんだけど、思ったより瓶の飛距離が伸びなかったみたいでクロもしっかり範囲に巻き込まれてるね。ご愁傷さま。
そして洞窟の奥からコウモリが飛んできて、霧に何かの警戒を示すこともなくクロに狙いを定めて攻撃を始めた。クロはとりあえず気絶を受けないように頭をかばってるけど動きに精彩がない。
「やりましたっ!」
そして攻撃が始まって五秒後、クロがついにバランスを崩して倒れ、コウモリ達も墜落して小さく痙攣するだけになった。
瓶の中身は麻痺毒。後は霧の持続時間が切れるのを待ってから止めを刺すだけ。
「へー、本当にコウモリさんってネズミさんの仲間なんですねー」
「ちゃんと薬が効いてよかったね。とりあえずとどめは僕と老師でやるからリンドウちゃんはクロの回復お願いして良い?」
「分かりましたー。えいっ!」
元気の良い掛け声とともに仰向けに倒れたクロの口に解毒薬の瓶を突っ込むリンドウちゃん。
今回の戦闘でのこちらの被害はほぼゼロ。回復アイテムの消耗もゼロ。
「仲間を頼るって大事だよね。うん」
ちょっとくらいいろいろと現実逃避しても、良いよね?
仲間に窒息死させられそうになるクロ。平常運転ですね。




