縛り68,川崎ロッカーの地図使用禁止
ちょっと期間が開いてしまったけど何食わぬ顔で更新。
今後の更新頻度がどうなるかは分かりません。
探し始めて三十分、目当てのダンジョンの入り口は一向に見つからない。
「退屈。いっそそこら辺のモンスターに喧嘩売ってみる? あそこにいる山羊っぽい奴とか良い感じに手強いらしいよ?」
「喧嘩売ってどうすんだよ。てかこの辺のはノンアクティブなのな」
「もっと登っていくと同じモンスターでもアクティブに切り替わったりするらしいけど、ここらはこっちから仕掛けない限りは安全らしいね。退屈だよー」
単なるぼやきなんだけど、クロがツッコミを入れてくれたおかげでほんの少しの雑談に発展して少しは気が紛れたね。
勝手に走り回らせたらモンスターを刺激しそうで怖いっていう理由で老師にも大人しくしてもらってるんだけど、入口探しにはとっくに飽きて今は昼寝してる。歩きながら。
「探している洞窟の外見とか、もう少し詳しい情報は無いのかい?」
「う~ん、枯れ木に挟まれるような配置に有ったっていうのは聞いてるから枯れ木が多い方向に来てみてるんだけどね」
「だけど?」
「木の間にあるってどのくらいの間隔で生えてるところに有るか分からないし、こっちの方は割と枯れ木だらけだしどうしようって感じ」
もっと詳しく聞いて来ればよかったのかもしれないけど、道具屋のおじさんだってまた聞きなわけで。もっと言うならここに採掘に来るような人にとって積極的に広めたい情報ってわけでもないんじゃないかななんて思うとまあこれだけ分かってれば御の字だよね。
はあ、それにしても退屈……
「もしかしたら、その場所に心当たりが有るかもしれない。間違っていた時無駄足になっても構わないかい?」
「ホントに!? 無駄足でも全然いいから案内して欲しいよ!」
「あはは、すごい食いつきだね。逆方向になるんだが、全員で見に行くのかい?」
う~ん、あんまりこっち方向にばっかり探索範囲広げても意味ないし、リスクを考えると全員で向かうんでいいんじゃないかな? クロはどう思う?」
クロにも確認しようとしたら、既に老師の向きを百八十度入れ替えてるところだった。うん、起きようよ老師……
「ここなんだが、違うかな?」
来た方向へサクサク戻ること二十分、スミスさんの心当たりの場所には、枯れ木が一本、と倒木。そして、倒木の向こう側には洞窟の入り口が確かにあった。
「なるほど、前の人が来た時にはこの木がまだ立ってたのかな? これは確かに枯れ木を目印にしてたら見つからなかったかも」
「合っていたみたいでよかったよ」
「ありがとうスミスさん! でもどうしてここが分かったの?」
最初に山に入った位置から少しとはいえ最初に探してた方向とは逆方向なんだよねここ。
「ああ、ふもとから見たときにね。木が倒れているのが印象的で覚えていたんだよ。まあ倒木じゃあそうそう素材にはならないと分かってはいるんだけどね。ふもとからは洞窟までは見えなかったからここで合っているか不安だったよ」
なるほど、素材探しの精神で倒木が目について、その付属品として覚えてた周りの風景が条件と一致したって感じだったのかな?
「ふもとから、よくそんないろんなところ見えますね」
「うんうん、僕も全然気付いてなかったし」
「まあ、モンスターを気にしなくていい分他のことがよく見えるんだろうね」
「そんなもんですか……」
スミスさんの返答にクロが呆れてる。モンスターを締め落とすクロも大概人のこと言えないと思うんだけどね。
何はともあれ夕暮れ前に目的地に着けたっていうのは大きいね。この後の予定を再検討しているところにクロが疑問を投げかけてきた。
「で、この後どうすんだ? 早速入るのか?」
「そりゃねー、ダンジョンに来たからにはすることは一つしかないでしょ」
「いや、今回の目的って素材集めじゃなかったのかよ。レベリング目的のことも有るだろうし」
正論で応えてくるクロに向けて人差し指を左右に振って否定する。予定決めてないから適当に答えてるんだけどね。
「ダンジョンですべき唯一のこと! 即ち周回TAだよ!」
「アホか!」
左右のほっぺをつねられた。革の籠手を着けてるから爪が食い込んだりはしないけど硬くて痛い……
「冗談なのに……」
「この機会に日頃の行いを振り返れ」
「謝罪すらしないの!?」
「いやそんな強くつねってもねえだろ」
「今ので力加減してるつもりとかDEX振り足りないんじゃないの割と真剣に。日常生活苦労するよ?」
「な!? そういう問題なのか!? えっと、すまん」
クロがうんうんうなり始めちゃったけどとりあえず置いといて、ダンジョン初挑戦と行こうか!
みんなに意思確認を取った後で、いよいよダンジョンに入る。
中は人が二三人並んで歩けるくらいには横幅が有って、天井も三メートルくらいの高さは有りそう。壁も天井も岩肌がむき出しだけど見た感じでは崩れてきそうな感じは無さそうかな?
これで鍾乳洞みたいになってたら雰囲気有ったんだけどね。もしそうなら頭上も足元も注意しなきゃだから嬉しくは無いけど。観光メインで来てるわけじゃないし。
「なんというか、思ってたのと違うな。鉱山なんて言うからもっと狭くて天井も低い所を想像してたんだが」
「金属の採取が出来るから鉱山とは呼ばれてるけど洞窟自体は人間が掘ったものじゃないからねー。他のところに行けば人間が掘ったような坑道を模したようなダンジョンも有るかもしれないけど」
まあ可能性は可能性に過ぎないし、そんなことよりも今はここをどう攻略するかだよね。
「道幅はそこそこ有るけど並んで戦おうと思ったらクロが武器を振りまわすにはちょっと狭いかな?」
「コンパクトに振ってもいいんだがハンマーだとそれじゃ威力が乗らないしな。かといって一人で道を塞げるほど狭くも無いし、とりあえず武器持ち替えてみるか……」
クロがそんなことを言いながら変装に使ってた剣を取り出した。
「剣を使うのは有りだと思うけど力任せに叩き付ける武器じゃないからねそれ? 装備品の修復する設備も無いし考えて使わないとすぐダメになるよ?」
「そういうもんか? けっこう叩き切るような使い方してる奴多かった気がするが」
「町から離れて連戦するんでも無ければそれでも問題ないし、肉厚で元々叩き切るような用途の武器を使ってるかって部分もあると思うけど、叩き切るにしてもクロみたく骨まで割るような無茶はしないと思うよ? 狙うなら頭じゃなくて首だよね斬撃武器の場合」
某モンスターをハントするシリーズだと頭もザクザク切れるモンスターも多かった気がしないでもないけどね。まあ全身鱗に覆われてたりするならそもそもどこ切っても硬いしそんなものかも。
「いずれにしても先頭はクロで決定かな。この道幅だと飛び道具は受け止めるなりなんなりしないと後ろの人に当たっちゃうしね」
「おう、分かった」
「あと空いてる手で松明持っといてくれる? 一応明かりは出すけどそっちまで届くか分からないし。老師は武器を振りまわせるぐらいの隙間を開けてクロの後ろで、随時前に出て敵に攻撃する係かな。狭いから大変かもだけど頑張って!」
「任せろ!」
天井はそこそこ高さが有るしそれこそクロを飛び越えて前に出るとか、後ろの僕たちを飛び越えてバックアタックに対処するとかも老師なら出来そう。そんなこと言ったら意気揚々とジャンプして天井に頭ぶつけそうだから言わないけど。
「で、僕たち三人はちょっと距離置いて後ろだね。明かりは【ライト】。うん、十分明るいね。それからスミスさんとリンドウちゃんにはこれ」
「紙と、炭ですか?」
「うん、マッピングっていうやつだね。地図が必要なほど入り組んでるかは分からないけど、今後の為にも練習は必要だと思って」
「なるほど、やってみます!」
「戦闘では役に立たないからこれくらいは頑張らせてもらうよ」
僕もマッピングしてもいいんだけど戦闘に備えて手は空けておきたいからね。さて、行動方針はこんな感じかな?
「よし、じゃあ進もっか。索敵するね、【サーチ】」
で、いつも通り魔法で索敵してから進もうとしたんだけど、ちょっとダンジョンを甘く見てたというかそうは問屋が卸さなかった。
区切り方と言うか引っ張り方上手になりたい。




