縛り57,まひなおし使用禁止
テスト期間ですね、そういえば。
「クロさん~、すいませんが~、こちらの~、パーティーと~、同行して~、もらえませんか~?」
「別に構わねえけど、2パーティーなら戦力には不足しないと思うんだが」
「私は~、ちょっと~、この二人と~、お話が~、あるので~」
「「え!?」」
本気で説教をする意思を隠そうともしないコノカさんの笑顔に、背中を嫌な汗が滑り落ちていく。
「そういうことか。もし厳しいと感じたらすぐに場所を変えるって方針でいいか?」
「はい~、連絡も~、不要ですよ~」
「待て、つまり後から合流するのも難しいぐらい長く拘束されるってことか? それはちょっと勘弁してくれ。今日は偵察がメインとはいえこのタイミングでの時間のロスは……まさか!?」
「そういうことですか。でしたら私も協力します。こちらのリーダーは私が受け持つので、そちらはお任せしてもいいですか? 一人で問題児二人を相手にするのも大変ですよね?」
これは本格的に不味いね。ナンダゴンドさんがドンドン事態を悪化させていってるよ。マンツーマンでのお説教となると抜け出そうにも絶対気付かれるし、僕よりもキリコさんの方が絶対に速いから逃げきれないね。その際にナンダゴンドさんがフリーになるから、二人で攪乱すればどちらかは逃げ切れるだろうけど、きっとその時捕まるのは僕だよね。ナンダゴンドさんはパーティーが一緒でギルドも作るらしいから一時的に逃げられても問題無いわけだし。
となると、打つ手は限られてくる訳で。
「ナンダゴンドさん、ここは素直に大人しく話を聞いて、しっかり反省してるところを示すしかないと思うよ」
「それは確かにそうだろうな。納得は出来ないが仕方がない、か」
納得してないって宣言してる時点で反省する気サラサラないよね。なんて突っ込みを心の中で入れつつ、ナンダゴンドさんの隣に歩み寄ってそこで正座。ややうつむきがちに沈痛な顔を作って……
最後の仕上げに【隠形】をオン!
「そうですね~、もしちゃんと~、反省してる~、ようなら~、お話の~、後は~、足を崩しても~、良いですよ~?」
「自主的に正座するなんて素直で素晴らしいですね。リーダーも少しは見習ったらどうですか?」
「足を崩してもいい、だと? ちゃんと話を聞いたら狩りに行かせてくれるんじゃないのか?」
「ちゃんと~、反省~、するとは~、思ってませんから~。こうすれば~、少なくとも~、二度としないでしょう~?」
「いや、反省している。しているからだな……」
説教は名目、真の罰は貴重なレベリングの時間を奪うという僕やナンダゴンドさんにとって非常に堪える内容のもの。それを察知できていなかったナンダゴンドさんは思考が後手に回った結果監視の目を増やした上に、コノカさんに対して口ごたえするという愚を犯している。
「あなた方二人が~、レベル的に~、出遅れていれば~、無茶も~、減るでしょうし~」
「俺は無茶なんてしていない。きっちりと計画的に攻略している。キリコだって分かっているはずだ」
「確かに私も攻略を進めることで情報が得られる可能性があるならという思いでパーティーに加わり剣を振るっています。ですが無茶をしていないという言い分に関しては今日の件と必要もないのに単独パーティーでボスに挑んだことなどから判断してもいずれやるだろうという結論になります」
大人しく聞いてる僕といちいち反論しているナンダゴンドさん。それだけでも説教してる二人はナンダゴンドさんに意識を割くだろうけど、今はそれに加えて【隠形】で存在感を薄くしてるから、ほとんど僕のことは意識されてない。
まだ早い。まだコノカさんは僕のことを意識から完全には外してない。
早くこの場を抜け出してフィールドに飛び出したい気持ちを抑えながら正座に耐える。足がしびれて早急な離脱が出来ないなんてことにならないようにこっそりと動かして血流を確保するのも忘れない。
「自覚が無いかもしれませんが私たちのパーティーとアレクサンドロスさんのパーティをを合わせてみても一番女性の扱いが雑なのはリーダーですよ。これから先もそんな調子では人数をまとめ上げて攻略することなんてできません」
「ちょっとPvPから話が飛躍しすぎだろう……」
「ユーレイさんも~、もう少し~、自分を大事に~、してください~」
コノカさんが水を向けてきたので、無言で首肯を返す。殊勝さアピールというよりは声を出すことで意識されたくなかったからだけどね。
コノカさんが意識をナンダゴンドさんに向けたのを確認して、たっぷり三呼吸程待機。キリコさんも完全に僕を認識してないのを念のためチェックしたら、一息に、あくまでこっそりと離脱。
「待て、いつの間にか俺一人で説教受けてないか?」
僕がいなくなったことに最初に気づいたのはナンダゴンドさん。気付いても黙っておいてくれればいいのに、つくづく余計なことしかしない人だね。
想定してたよりもずっと早く、それこそまだ僕に声が聞こえるくらいの距離しか離れてないのに不在に気づかれちゃったよ。まあそれでも遮蔽物が有るからそうそう見つかりはしないだろうけど。この後のコノカさん達の動きによってはしばらく隠れてやり過ごしてから移動になっちゃうかな?
「これは~、してやられましたね~。油断してました~」
「ついさっきまではいたはずだ。探すぞ」
「いえ~、そう言って~、逃げるつもりですよね~? クロさんに~、連絡したので~、あちらに任せます~。だから~、ちゃんと~、座ってて~、くださいね~?」
「畜生がっ! 不公平だ!」
「不公平も何も彼女は振る舞いに問題があったから説教を受けることになっただけで加害者の立場にいるのはリーダー一人なんですから扱いに差が有るのは当然でしょう。それにしてもまさか逃げ出されるとは思ってませんでしたが」
よし! 三人がかりで探し回られてたら見つかったかもしれないけど、探されもしないなら大手を振って狩りに行けるね! 囮になってくれてありがとうナンダゴンドさん!
さて、どこに行こうかな。当初行こうと思ってた森は敵の傾向的に僕一人で戦うのは少々厳しそうなところが有るし、西と南は素材的にはともかく経験値的にすでにあんまり美味しくなさそう。北の平原がレベル的にはベストなんだけどクロに連絡行ってること考えると避けたほうが良いよね。
グラトンボアと戦ったあたりからもう少し進めばマップが変わって難易度的にもちょうどいいところになるみたいだけど、ソロで未見のマップに行くのは流石に無謀だし、どうしたものかな。やっぱりあそこがいいかなあ……




