縛り50,乱入対戦禁止
さし当りリハビリ終了。
なので更新ペース少し落ちます(なんで)
「それでは~、対戦形式で~、お互いの実力を~、見るということで~」
結局こうなっちゃったかあ。
それにしてもこういう時のアレクさんは本当に空気だね。
「戦うのは~、ユーレイさんと~、ナンダゴンドさんで~、いいですか~?」
「リーダーが出るまでもねえよっ、お前なんて俺で十分だ!」
「いや、僕も戦わないよ?」
コノカさんの問いに怒ったように名乗りを上げてこちらを睨んできたエックス君に、参加しない旨を伝えたところ唖然とされた。
僕としてはむしろなんで僕が戦うと思われてたのか疑問なレベルなんだけどね。
「なっ、お前逃げるのか!?」
「逃げるって、そもそもなんで僕に挑むの? それとも僕みたいな索敵役と兼任してる相手だからこそ絶対負けない戦いを挑もうって腹積もりなのかな?」
「なっ! だがお前がリーダーなんだろ!?」
「え? 違うけど」
「「「え!?」」」
エックス君だけじゃなくアレクさん達からも後ろからも驚きの声が聞こえたんだけどなんで?
エックス君が少し慌てた様子を見せ、後ろを振り返ってアレクさんも驚いてるのを見て、前に向き直ってこっちのパーティーメンバーの顔を見て、一度目をつぶってから口を開いた。
「そ、そんなバレバレの嘘ついてまで逃げたいのかよ。やっぱり寄生してるカスヤローじゃねーか!」
「嘘ついてるつもりはないんだけど? というかクロがリーダーじゃないの?」
「いやなんでだよ……」
「なんとなく?」
実際僕はなんだかんだ別行動多いからパーティーでの行動で中心になってるのはクロだし、僕はなんというか、発起人ではあるけどリーダーではないと思ってたよ?
「リーダーってパーティー組む時に勧誘する人とはまた違うんですか? 今はクロさんですよね?」
「あー、システム的にはそうだな。ただそれだとこういう時に誰が矢面に立つのかはっきりしないんだよ。普通にゲームしてたらそんな大きな問題は怒らないからとりあえずその意味でのリーダーが代表者やることも多いんだけどな」
「なるほど、非常事態だから責任者を決めとくべきってことですね! ところで寄生してるカスヤローってどういうことですか?」
「あー、それはだな…… えっとだな……」
後ろでクロとリンドウちゃんの会話が繰り広げられてるんだけど、リンドウちゃんの素朴な疑問にクロが答えようとして、すごく言いよどんでるね。
まあ今のリンドウちゃんやスミスさんも悪い言い方をすれば寄生だもんね。まあこんな状況だしパワーレベリングがマナー違反とか言ってられないよね。こんな状況だからこそプレイヤーの技術とレベルの不一致が危ないって考え方もあるけど、リンドウちゃんやスミスさんが高レベルになったとして、それで調子に乗る未来がイメージできないなあ。
「うん、固定パーティー組む上でのリーダーについては今まで決めてなかったから今度ちゃんと話し合って決めようか。それでエックス君、リーダーでも戦闘専門でもない僕に勝負を挑むって事でいいのかな? それで僕が負けても僕らのパーティーの情報が信用できないってことにはならないと思うけど」
「大人げねえ追いつめ方するな……」
「クロは黙ってて。それで、どうするの」
「ぐぐ…… もう誰でもいいからそっちのパーティーで一番強い相手を出せよ! お前か? それともお前か!?」
よしっ! これで面倒なパターンは回避成功だね!
「それじゃクロ、あとは任せたよ!」
「俺の出番はないのかっ!」
「あー、老師はほら、クロが負けたら出てくるラスボス的な立ち位置だから」
「なるほど! クロはまだ負けないのか?」
「あー、負ける時は負けるから安心しとけ。しかしお前がPvP渋るなんて珍しいな。普段ならどんな縛りついてようが喜々としてやるだろ」
「普段ならそうなんだけどねー。今は出費を抑えたいから、満腹度がガリガリ削れる呪いのナイフは使いたくないんだよね。かといって奇策に頼ったら文句言ってきそうな相手だし、正直面倒くさいんだよね」
下手に実力を示しちゃって攻略組からしつこく勧誘されたりしたらいやだしね。クロに押し付けておけば最悪クロだけ向こうと掛け持ちという体にして引っ張りまわせばいいわけだし!
攻略方法を自分で探すのは楽しいけど、それは後ろに接疲れてやりたいものでもないし、メインの流れにかかりきりになってサブイベントを逃すなんてもったいなさすぎるよね。
「では~、公平を期して~、流れに無関係な~、うちのリーダーが~、審判をしますね~」
「おう!? お、おう!」
今の今まで放置されてたのに唐突に水を向けられて慌てるアレクさんの姿が哀愁を誘うね。白熱しすぎたときに割って入れる人材って考えると適任だと思うけどちょっと不安になるよね。
「では~、最後に確認しますね~? 戦うのはクロさんとエックスさんで~、ルールは~、『決闘水晶』に準拠します~。スミスさん~、他に何か~、注意点は有りますか~?」
「そうだね、さっき軽く説明したけど、仕組みとしてダメージを受けないようにするんじゃなく受けるそばから回復するようになっているだけだから、下手なことをするとHPが0になりかねない。無いとは思うが一撃で大きすぎるダメージを与えるような攻撃方法は避けてくれ」
「分かった」
「一撃の火力は無いから安心してくれ」
スミスさんから告げられた注意事項に対戦者の二人がそれぞれ返事を返した。
一度そこで発言を区切ったスミスさんは、今度はクロに向き直ると注意事項の続きを口にした。
「怪我の系統の状態異常によるスリップダメージは怪我自体を防ぐような魔法が一応込められているから余程の攻撃を受けない限り治療できないようなことにはならないはずだ。だが関節技は避けてくれ、おそらく斬撃や衝撃なら防げるが継続的にかかる負荷には対応していない可能性が高い。解毒薬が確保できていない毒もダメだ。この二つは致命的な事態を招きかねない。君もいいね?」
なるほどなるほど、怪我以外の状態異常は防げないし、怪我を防ぐのにも限度があって、対戦が終わっても状態が回復することは無いってことだね。それにしても、クロのそんなことしないとでも言いたげな呆れ顔と、エックス君のそんなことするやつがいるのかっていう困惑顔の対比がなんだか笑えるね。
「ねえねえリンドウちゃん、何か飲み物持ってない?」
「水とお茶もどきなら有りますけど、これって緊迫したシチュエーションじゃないんですか?」
「いやいや、記念すべき第一回PvPが開催されるだけで緊迫してるわけじゃないから、ここは飲み物とポップコーンを持って雰囲気を盛り上げるのが正解だよ?」
「そうだったんですか! やっぱりユーレイさんはすごいです。あっ、でもポップコーンが有りません! どうしましょう!」
「仕方ないからポップコーンはまた次回だねー」
ちなみにお茶もどきは採取した草の中に含まれる薬にはならないけど煮出すと香りと味がするもので作ったお茶みたいなものの総称。けっこうバリエーションは豊かだけど正直当たりは少ないね。嗜好品の充実が待ち遠しいよホントに。
「あ、始まるみたいですよ! クロさーん、ファイトですよー!」
「この勝負、ユーレイ君はどう見る?」
「あ、お疲れさまスミスさん。う~ん、どっちが勝つかは五分かなあ。総合的なステータスと武器の攻撃力ではクロが勝ってるだろうけど、向こうはスキルを中心に攻めてくるだろうし、いかにして相手の長所を潰すかっていう工夫がカギだろうね」
「ふむ、つまりクロ君が工夫して戦うかが五分ということかな?」
おお、そこまでは口に出してないのに理解してくるあたり流石のスミスさんだね。
「盛り上がりどころも見るべきところもない退屈な試合になることを危惧してるよ」
「やってる本人たちは大まじめだし、リンドウ君も楽しんでいるし、それはそれで気にしなくてもいいだろう」
「あと老師が何かしでかさないかが不安」
「ああ、それは確かに不安だね」
リンドウちゃんに出してもらったお茶もどきを飲みながらスミスさんと会話しつつ試合観戦。立ち上がりはエックス君がスキルでの速攻を狙い、クロがそれを必死に防ごうとするもスキルが無いため凌ぎきれずに多少のダメージを受けるという面白みのない展開。
クロ相手に速攻仕掛けてもスキル頼みの攻撃だと削りきる前にスタミナが尽きるんだよね。後半で息切れして凄い地味な試合運びになる予感がするよ。
とりあえずパーティーメンバーとして応援しとこうかな?
「クロさんが押されてますよ!」
「うんそうだね、応援しないとね」
「はい! クロさん頑張れー!」
「ほらほらー! リンドウちゃんに応援してもらっといて負けたら新薬の被験体待ったなしだよー! ほら、老師も何か言って!」
「とっとと負けてそこ譲れー!」
うん、クロが負けても『決闘水晶』がもうないから老師の出番にはならないんだ、ごめんね老師。
次回は少しクロ視点入れると思います。




