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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第二部 デスゲーム開幕編
43/162

縛り41,回転切り使用禁止

一か月近く開いてしまった……

「ただいまスミスさん! 大猟だよ!」

「無事に倒せたようで何よりだよ。おかえり」


 ボスを倒し、剥ぎ取りもバークさん謹製の解体用ナイフ一揃いのおかげで想定してたよりもたくさんの肉を回収することが出来た。まあアイテムとしての最低品質に達しなくて採集した扱いにならなかった分も食べれそうなのは回収して担いで来てるんだけどね。男性陣が。

 アイテムボックスに入らない生肉を運ぶのはちょっとね。


「で、例の件だけどどうなったかな? 上手くいった?」

「ああ、思ったよりもずっと簡単だったよ。ただやっぱり何か行動しているプレイヤーは多くないみたいだね」

「う~ん、ちゃんと人集まるかなあ?」

「場所がいいからそれなりに集まるとは思うよ。神殿に何かあることを期待している人は多いからね」


 復活できないと言われたからこそ復活する場所だった神殿に別の役割があると考えるのは確かに自然なことだもんね。まあ他の人が調べるだろうから僕はそれを聞けばいいかな。興味のないところは他人の情報待ちっていうのも正しいスタンスの一つだと思うしね。

 と、そんな風にしてスミスさんと情報を共有してたら例によってというかなんというか、クロが割り込んできた。


「まて、何の話だ。というかその話しぶり、スミスさんはユーレイの計画を知ってたように聞こえるんだが」

「ああ、あいにく同行は出来なかったがパーティーの一員だからね。出来る形で貢献させてもらおうと思って相談したのさ」

「何をしたのか具体的に聞いて良いか?」

「焼肉パーティーをするなら場所が必要でしょ? 空いてるスペースを使えるかどうかの確認をしてもらってたんだよ!」


 クロの疑問に答えてあげたら、なんか頭を抱えだしちゃったんだけど、その前にまずスミスさんにお礼を言うのが筋なんじゃないかなあ?


「確認させてほしいんだが、その使用許可を取った場所っていうのは……」

「ああ、神殿の前がそれなりに開けているだろう? あそこだね。」

「本当にありがとうねスミスさん!」

「いや、神殿の人も友好的だったしそこは問題なかったよ」

「なんで気づかなかったんだ俺…… ほっといたら暴走するのは分かってたはずだろ……」


 あ、クロが撃沈した。ボス戦で前に出てた疲れかな? リアルだからしょうがないけど早く慣れてもらわないと今後が厳しいねえ。


「ど、同情するぜ…… それはそうと、そろそろこの肉どうにかしたいんだが……」

「さっき言ってたじゃないですか~。神殿の前の広場ですよね~、ユーレイさん~? そこに~、受け取る人は~、いますか~?」

「う~ん、会場の確認もしたいし、僕も一緒に行くよ!」

「いや、会場の準備をしても人が集められなければ意味が無いだろう? ユーレイ君は人を集めに行った方がいい。バーベキュー程度でも料理ができる人がいるのといないのとでは結果がまるで変わってしまうからね」

「う~ん、じゃあ案内はスミスさんに任せてもいい? ごめんね」


 とはいえ、どうやって人を集めようかな? 宣伝しようにも看板も無ければスピーカーも無いし……

 何かいい方法が無いかなと思ってみんなを見回しても、特にいい考えを教えてくれる人がいるわけもなく。どうにか自力で何かひねり出すしかないかと諦めたところでふと、老師が視界に入った。あ、あれは使えるかも? となるとあとはビラ代わりに何かあったほうがいいかな? 文章チャットをコピペしてばら撒けばどうにかなる? よし、いけそう!




「ぐらとんぼあ討ち取ったり――――っ!!!」

 

 そんなことを大声で叫びながら僕の前を練り歩く人物が一人。頭に大猪の頭部をかぶっていてその顔は見えず、その正体は誰も知らない……

 うん、まあ老師なんだけどね。普通もうちょっと嫌がりそうな気がするんだけど、ノリノリな辺り、流石は老師。僕も自分の仕事をしっかり頑張らなきゃね。


『最初のフィールドボス、グラトンボアの初討伐を記念して、親睦会を兼ねた戦勝パーティーを行います。どなたでもお気軽にご参加ください。また、同時にグラトンボアの肉を使った料理コンテストを行います。優秀者にはグラトンボアのブロック肉をプレゼント! 料理スキル持ちの方はふるってご参戦ください。場所:神殿前広場 開催時刻:午後六時』


 こんな文面を近距離チャットに流しまくりながら、何事かと顔を出した人に笑顔で手を振る。で、時々プレイヤーじゃない人が何の騒ぎか聞いてきたりするから、その時は秘密兵器リンドウちゃんを投入して愛嬌たっぷりかみっかみでチャットの文面と似たようなことを説明してもらう。最初はコノカさんとミルフィーユさんも一緒だったんだけど、コノカさんは先回りして住人達に事情説明してくると言って別行動取っちゃったし、ミルフィーユさんもいつの間にかいなくなってたんだよね。

 さて、頑張った分だけ盛り上がるといいなあ。




 と、そんなこんなで街中をぐるっと一回りして、


「ひい、ふう、みい…… ざっと五十人ぐらいか。多いのか少ないのか」

「プレイヤー主体のイベントとしてはかなりの人数だと思うよ? むしろお肉が足りるかが心配なぐらいで」

「集めといて足りなくなりましたってのはまずいんじゃねえか……?」

「う~ん、食材の提供の呼びかけはしてるけど、本当にどうしようもないくらい足りなくなったらっその時はクロが取ってきてくれるよね? 猪肉」

「いや無茶いうなよ…… リポップしてたとして一人じゃどうにもならんだろ」

「んー、確かにチンタラ狩ってたらその間にみんな帰っちゃうもんねえ」

「そういう問題じゃねえよ!」


 ん~、でもさっきの戦闘で行動パターン把握できてるわけだし、回復役の数さえ確保しとけばクロなら一人でも勝てると思うけどなあ。スキルに頼らない戦い方してる分継戦能力が段違いだし。


「倒せるよね?」

「いや無理だろ」


 クロとそんな会話をしていたらアレクさんが僕らの方に歩いてきた。


「おうおまえら、こんなとこにいたのか! そろそろ六時だぞ」

「そうだね、そろそろ始めよっか! アレクさん、開催の挨拶やっちゃって!」

「はあ!? お前がやるんじゃなかったのか!?」

「え、だって倒したパーティーのリーダー僕じゃないし、そもそも僕未成年だからこういう宴会風の行事の経験ないしね。大人に任せるのが当然だよね?」


 クロに目線で同意を求めると、そういうことはもっと前から伝えろっていう言葉とともに拳骨が飛んできた。避けたけど。仕返ししようとしたところでコノカさんがこっちに向かってるのを見つけたから中断して軽く手を振ったら笑顔が返ってきた。


「あー、どうします? 開始遅らせますか? 挨拶するなら考える時間が必要ですよね?」

「あ、ああ、頼めるか」

「みなさんもうすでに~、お待ちかねですよ~? どうせ誰も聞いたりしないんですから~、腹くくって下さい~」

「いや、でもだな」

「でももかもも~、有りませんよ~。司会は~、私がしますので~」


 そう言ってアレクさんを引っ張っていくコノカさん。気が利くというか痒い所に手が届くというか、頼れる大人の女性って感じだよね!


「さて、僕たちもどこかコンロの近くに移ろうか。せっかくのお祭り騒ぎを楽しめなかったら大損もいいところだしね!」

「まさかとは思うが、企画するだけしといて丸投げなのか……?」

「いやいや! やることはちゃんとやるよ? 積極的に食べることでお祭りムードを作り出すこととかね!」

「おい」


 まあ冗談抜きに、僕らみたいな歪んだプレイスタイルの人が矢面に立つのはよくないし、目立つのは嫌いじゃないけどそれで自由に動けなくなるのは嫌だしね。目立たないところで手伝うのが一番だよ。

 あ、挨拶始まったね。


「あー、このたびはどうもお集まりいただき…… なんて言や良いんだこれ。あれだ、なんかよく分からんことに巻き込まれちまったが、とにかくできることを前向きにだな、その……」

「以上~、討伐パーティーリーダーからの~、挨拶でした~」

「ちょっと待てまだなんも言ってねえ!」

「食事は~、奢りですから~、大いに活力を付けてください~。なにか~、質問は有りますか~?」


 長くなりそうな話を速攻で打ち切ってくれたコノカさんに僕も含めて会場の何割かはやいのやいのの大喝采。とはいえこのイベントに関して疑問のある人も当然いるんだけどね。


「俺は騙されないぞ! さてはお前ら運営の差し金だろ! さっさと俺をログアウトさせろ!」

「ボス討伐に使った情報隠してるんだろ! 俺らにも教えろ!」


 そうそう、こんな感じの人たちね。まあ疑心暗鬼になるのはしょうがないけど、今ここで言われても周りの人の不安をあおるだけなんだけどなあ。答えられない質問されるアレクさん達がかわいそうだし、手助けするとしようかな。

 そんなことを考えていたら、別の人が全く関係ない質問の声を上げた。服装を見るに料理人の人かな?


「あの、コンロってそれですか? 火を付けたら燃え尽きそうなんですけど……」

「コンロ? 言われてみりゃなんじゃこりゃ!? 木製じゃねえか!」

「そういえば~、確認してませんでしたね~。試してみましょうか~」

「え?」

「【ファイアーボール】~」

「うおおお!?」


 僕が出るまでも無かったっぽい? コノカさんと名も知らぬ料理人さんに感謝だね。ああいう言いがかり付けられても、こういう場合の無実の証明ってできないから困るんだよね。そういうのなんて言うんだっけ? 悪魔の証明? 悪魔の裁判? なんかそんな感じのヤツ。

とにかくこのままネガティブなこと主張され続けてたらせっかくの景気づけのパーティーが台無しだし、どうにかしないとだよね? どうせ根も葉もない一過性の主張で終わるだろうし、詳しい話を聞く体でしばらくの間隔離しとこうかな?


「なああんた、運営について何か知ってるのか?」

「いや、詳しいことはわからねえ。だが絶対にどこかで俺らを監視してるはずだ。間違いねえ」

「やっぱりそうなのか…… なあ、この会話も聞かれたらまずいんじゃねえのか?」

「そうだな、どこから聞かれてる分かんねえしな」

「ほかにも疑念を持ってるやつがいるはずだ、それっぽい奴に声かけるか?」


 どんなふうに声をかけようか迷ってる間に別の人と合流してゴートゥー物陰。なんか後々面倒なことになりそうだけど、とりあえず今はいいかな。

 さて、コノカさんによるコックさんたちへのルール説明も終わって、いよいよみなさんお待ちかねの焼肉パーティーの始まりだよ!


「にしても、猪肉か…… 味噌仕立てで鍋にするのが王道なんだが、この環境だと厳しいな」


 あーあー! 聞こえない! 名も知れぬコックさんのつぶやきなんて聞こえないよ!


もしかしたらしばらく書き溜め期間に入るかもしれません。入らないかもしれません。

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