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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第二部 デスゲーム開幕編
40/162

縛り38,ハイパードライブモード使用禁止

実家に帰省してたりで遅くなりました。

 たったたったたったったー、たったったーたったったたー。

 元気百倍! ……ではないね。別に新しい顔を装着したわけでもないし、むしろ元気がなくなってる原因を回収した感じだし。


『いたずらは許さないぞー!』


 本当ならここでさっそうとマントを広げて必殺のパンチを繰り出すところなんだけど、僕は格闘家スタイルのプレイヤーでもないし、ましてや前衛二人が必死になって押さえつけてくれてるんだからボスの攻撃範囲に飛び込んでいく必要すらないよね。なので選択すべき攻撃手段は魔法と遠距離スキルでの連続攻撃一択だね。


「『闇の炎に抱かれて消えろ!』」


 わざわざ口に出しつつチャットにもセリフを流すのは攻撃するから巻き添えに気を付けてという前衛へのメッセージである。無防備な敵の背中に攻撃する以上隙の大きさなど気にすることも無いのだ! 今まで温存しつつ戦ってきたMPを一気に注ぎ込むようにして特大の攻撃魔法を放つ。といってもまあただの【マナバレット】なんだけどね。大きさが二回りぐらい大きくて色が灰色になっているのは装備品の影響。地味に魔法攻撃力も高いんだよねこのナイフ。


「どうにか持ち直したな。このまま抑えきるぞ」

「助かった! 煮卵さんがいなかったらあのまま潰されてた」

「気を抜くなよ! 二人掛かりで抑えてるということはここを抜かれたら後衛を荒らされるということだ」

「分かってる! うおらあっ」


 が、前衛組はどうやら地味にピンチだったらしく警告に気付いてすらいない様子で、僕の放った魔法は誰に注目されることもなくボスのお尻、尻尾の付け根辺りに当たってそこそこどまりのダメージを与えただけだった。


「よし! この調子でヘイトとダメージを積み重ねる! 煮卵さんは攻撃頻度が減ってでも【挑発】かけといてください!」

「だがあれはさっき失敗したんだぞ?」

「元からヘイトの管理をするつもりが無ければ多少レジストされても積み重ねは有効です! 俺はひたすらおさえつけとくんで!」


 うん、なんか腹立つね。いや別に僕抜きでボス戦の醍醐味である苦戦とそれの打開のための作戦立案なんていう楽しいことをしてることに腹を立ててるわけじゃないんだけどね。

 ……うん、協議の結果無視された以上気を使うことなく全力で攻撃すべしという結論に至ったよ。


「【マナバレット】! 【スラッシュアロー】! 連射連射連射連射―!!」


 弾速が違う二種類の攻撃がぶつかり合って相殺しないように、ある程度軌道を変えられる【マナバレット】を左右に弧を描いて当たるように放ち、正面のコースにはクールタイムが終わるたびに【スラッシュアロー】を連発する。

 そんなことをすればどうなるかというと、最大値が高いMPはともかく、ただでさえ装備の影響で少ないスタミナが見る見るうちに減っていくんだけど、それに見合うだけのダメージを与えられてるってことでもあるから問題ないね。時間当たりダメージにすると適正距離で【ファイアーボール】を普通に撃つコノカさんと同じくらいかな?


「うお!?」

「な!? 物理攻撃だけじゃなかったのかこのボス!?」

「攻略情報にもなかったぞこんな攻撃! そっちのメンバーの攻撃じゃないのか?」

「こんな禍々しいスキルなんて見たことねえよ!」


 どうやらボスをわずかに逸れた【マナバレット】が煮卵さんを掠めたみたいだね。で、真後ろから攻撃してるから僕の姿は見えないし、そういえば装備を更新してからはクロの前でスキルを使ってなかった気もするから、ボスの攻撃だと勘違いされたのかな? まあ勘違いされたままだと不都合が無くはないような気もしないではないし、一応アピールはしとこうかな? 限界まで角度を付けて上に打ち上げた【マナバレット】を前衛の二人にも見えるようにボスの頭にピンポイントで撃ち下ろす。


『景気がいいですね~。そろそろ私も攻撃再開しますよ~、それ~』


 そんなチャットとともに二つの火の玉が左右から前衛の二人を避けつつボスの頭部を挟み撃ちにした。そして一拍おいてから今度は上から大きく弧を描いてボスの顔面に直撃。言わずと知れたコノカさんの【ファイアーボール】だね。攻撃してない間たぶん明後日の方向に向けて練習してたんだろうね、カーブの描き方がキレッキレだもん。

 僕も負けじと【マナバレット】を連射する。純粋な威力では勝てないけど連射速度と敵との距離の関係でこっちの方がダメージはちょっと多いかな? 【スラッシュアロー】は息切れしてきたのでちょっとお休みだけどね。


「くそっむちゃくちゃ暴れるせいで攻撃できねえ!」

「落ち着け、押さえつけておけばタゲを取られても大丈夫なはずだ!」

「まあ暴れるってことは効いてる証拠だもんな! このまま押し切るぞ!」


 僕とコノカさんが張りきったせいでクロと煮卵さんがこんな会話をしてたけど、喋る余裕があるなら平気そうだね。まあクロは僕と一緒に実況動画作ったりもしてたから多少のピンチなら口を動かし続けれる技術も持ち合わせてるんだけどね。

 ところでアレクさんとタナトス君はどこだろ?

 視線をめぐらせてみると遠距離攻撃が激しすぎて出るに出られないという様子で立ち往生しているアレクさんと、機械的に石ころを投げ続けているタナトス君の姿が見つかった。ボス相手にあれだけ使ってたら【投擲】スキルの伸びがすごいことになってるんじゃないかな? クロにもぜひ見習わせたいね。


「おい! そのモーションは高速突進だぞ! 気を付けろ!」


 立ち往生してるように見えて一歩引いたところから指示を出してたのかな? よく通る声で羨ましいね。こっちのパーティーの人にも伝わるように声を出してくれたんだろうけど、その指示はちょっと頂けないね。


「こういう時はこうするんだよ! 総員! 火力最大! せぇえい!」


 間合いを詰めつつ【スラッシュアロー】、近づききったところで【スラッシュ】からの【アッパースラッシュ】、そのまま敵の目の前に回り込んでもう一度【スラッシュ】。もちろんその間も片手間に【マナバレット】の連打も忘れない。


「ブモォッ!」


 はい! 一怯み頂きましたー! これでチャージはキャンセル。まあパーティーの攻撃役が多いからこそできた芸当なんだけどね。

攻撃を強制キャンセルされたせいでさらに怒ったような雰囲気を出し始めたボスが暴れだそうとしたので、ついでとばかりに思いっきり前脚にナイフを突き込んでおく。思ったとおりこれまでの戦闘でダメージがたまってたみたいで、ガクンと体勢を崩してくれた。これで二怯み。と言っても二回目は怯みじゃなくて転倒な気もするけどね。


「このままハメ倒せたらいいんだけどねー」

「そう上手くは行かねえだろ」

「うん、もうスタミナないし、たぶんコノカさんもMP切れかけだし」

「なんだと!」

「マジかよ……」

「だから次にチャージのモーション入ったら大人しく回避してね!」


 煮卵さんとクロに今後の指示を出す。他の人は叫びでもしないと届かない位置にいるなあ。アレクさんさっき攻撃には参加してたのにもう下がってるし。大剣で遊撃とかなかなかセンスあるね!


「まあこのまま削りきれる可能性もなくはないから頑張ってこー!」

「おい! まただ! 今度はどうすればいい!」

「ありゃ、言ってるそばからかー」


 楽観的な考えを口にした途端にアレクさんから警告が飛んできた。うん、まあ敵も追いつめられて本気を出してきたとかそういうノリかな?


「呑気してる場合か! タゲはまだ後衛だぞ!」

「うん、とりあえず二人は避難してて! 僕はやるだけやってみるから!」


 壁役二人に声をかけつつ、ステータスを確認すると、動き回ったせいでスタミナは行動にペナルティがかかるレベルまで減ってるし、連射しすぎたせいでMPも枯渇寸前だった。まあやるだけやってみるしかないね。


『コノカさん、どうにかできるかは五分だから避ける準備しといてね!』

『言われなくても~、いつもしてますよ~。だから~、無理はしないでくださいね~』


 コノカさんがうれしい言葉をかけてくれたけど、返事してたら間に合わないからね。軽く右にステップを踏んで、その反動で勢いをつけるようにして体ごと突進、手に持ったナイフを深々とボスのどてっぱらに突き込んだ。さらにそこから持ち替えて無理やり水平方向に思いっきり力を加える。


「【スラーッシュッ】!」


 発動条件もモーション指定もほぼ存在しないというレベルでゆるゆるの【スラッシュ】なんだけど、一切モーションに補正が無いわけではなくて、発動すれば振りぬくところまでは若干剣速も上がるし剣筋がぶれにくくもなる。とはいえ動いていると言えるかも微妙な状態で発動するかは賭けだったんだけどね。結果はほぼ最善。発動するだけじゃなく補正によってしっかりと振りぬくことに成功した。

 さて、これでどうにかなるかな?


クロの口調が統一されていないように見えるのは彼自身の警護が雑だからです。

それでいいのか体育会系……

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