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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第一部 VRMMO編
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縛り3,ナンパ禁止

途中からクロ視点が入ります。だから逆ナンじゃありません、ナンパであってます。

「さて、とりあえず当面の行動予定立てるか」

「何かアイデアがあるってこと?」

「ああ、死霊の森に行ってみようと思っている」

「なるほど、確かに目的に沿ったアイテムが入手できそうではあるけどね。あそこのレベル帯は30前後じゃなかった?」

「ああ、だからがっつり準備していくつもりだ。具体的には回復アイテムの確保と装備の調達だな。それとできる範囲でのスキル上げ」

「なるほど、それで【採集能力】なんだ。じゃあ僕にできることはあんまりないね」


 そう言ってクロに対してトレード要請する。装備品を店で買わない以上ゲーム開始時に配布されるお金は大して使い道がないからクロに預けておいた方が効率がいいしね。

 所持金の八割、4000リラをクロに送った。


「これって俺の装備買うのとかにも使っちゃっていいのか?」

「いいよ、その代わり僕のぶんの消耗品も準備よろしく!」

「あいよ、その間お前は何しとくつもりなんだ?」

「え、う~ん……?」

「やることがないなら街歩きまわってNPCの設備チェックしたり、繋がり作っとくとよさそうなプレイヤーとフレンド登録しといてくれよ」

「わかった、いつも通りサービス初日では何にもできない採集持ちじゃないぼっち生産さんとか、敬遠されてパーティー組めなさそうなオーラだしてる人を探せばいいんだね!」

「お前が言うな! まあお前の采配に任せる。製薬系はたぶんこっちで見つけれると思うから武器とか防具系の人を探しておいてくれ」

「了解! じゃ、いってらっしゃい」

「六時間後にここにもっかい集合な」



    ◆   ◆   ◆


 ユーレイと別れた俺は、まずは回復アイテムを確保するために町の近くの草原に来ていた。β版の情報ではここでポーションや毒消しといった回復アイテムの材料が採集できるのだ。

 早速しゃがみこんでまずは手当たり次第に草を引っこ抜く。するとレア度が最低クラスのものが自動的に識別された。


薬草×2

雑草×4

草(?)×2


「なるほど、これが薬草か。というか採集やるとスタミナ減るのかよ……」


 とりあえず周りの薬草を片っ端から引き抜いていく。草は一定時間後にリポップする仕様らしいので、あまり動き回ってスタミナを消費するよりも、その場で手が届く範囲で採集してリポップまでは座り込んでスタミナを回復するというパターンを繰り返す。


 そんなことを繰り返してるうちに、目を凝らして薬草を識別して抜くよりも雑草を含めて全部引っこ抜いて後から捨てる方が楽な可能性に思い至って実行する。楽なうえにスタミナ消費も減った。識別系のスキルを使わないならこっちの方が断然よさそうだ。

 スタミナに余裕ができたのでリポップするまでの合間の時間に腕立て伏せをしてみることにした。俺の予想ではこれで【筋力強化】と【腕力強化】に影響があるはずなんだが。


「なんでこんなところで筋トレしているのですか?」


 三セット目の腕立てをしていたら後ろから突然声を掛けられた。声の主の姿は見えないが俺以外に草原で筋トレするようなやつがいるとも思えないので俺が話しかけられているとみて問題ないだろう。


「ああ、【筋力強化】のスキル上げになるかと思ってな」

「……? 製薬志望じゃないのですか?」

「いや、違うぞ。まあ【採集能力】を鍛えるためにここにいるのも事実だがな」


 そこで腕立てを終えた俺は相手に向き直った。どうでもいいけど筋トレするとものすごい勢いでスタミナが減るな。これは効果が期待できるかもしれない。

 俺が腕立てしていた位置から二歩ほど離れたところで、一人の女の子が小首をかしげていた。きれいな黄緑色の髪に紫の瞳をしていて、それ以外の部分もおそらくそれなりに気を使って調整したのだろうことがうかがえた。背は低いが、物腰などから自分と同じか少し下くらいの年齢だと予想する。


「はじめまして、俺はクロ。君は?」

「私はリンドウと申します。見ての通り製薬職人志望ですが、あなたは違うんですね?」

「うん、スキル上げのついでに薬草持ち込みで回復薬作ってもらおうと思ってここに来てるだけで普通に戦闘組になる予定だよ。君は製薬系のスキルを持ってるんだよね?」

「はい! 私にお願いしていただけるんですか?」

「うん、このあたりで探せば製薬志望の人はほかにもいるだろうけどわざわざ話しかけてくれたのも何かの縁だしね。フレンド申請送ってもいいかな?」

「はい、お願いします」


 メニューを開いてフレンド申請を選ぶと、すぐに承認された。


「じゃあこれから宜しくお願いしますリンドウさん」

「こちらこそよろしくお願いします」


 そう言ってお互いに頭を下げる。


「ええと、じゃあ手持ちの薬草を見せてもらっていいですか?」

「うん、薬草以外の良くわからないものも見せたほうがいいかな? 雑草はさすがにいらないよね?」

「あ、私鑑定のスキル育ててるので雑草もお願いします。雑草にもいろいろあって、街の施設に持っていくと図鑑が作れるんです。バッグには空きがあるのでお願いします」


 確かにリンドウさんが肩から下げているバッグは初期装備の腰に括り付けるものに比べると大きく見えた。バッグ以外も動き易そうながらもダサくない服装をチョイスしていて、初期装備のままの自分と比べるとなかなかにおしゃれだ。

 とりあえずトレード申請を送って持ち物を全部送信した。


「わっ、こんなにたくさん! 薬草に毒消し草に……雑草類もずいぶん採ったんですね? 見たことない草がいっぱいあります」

「あはは、途中から見分けるのが面倒くさくて片っ端からとってたからね」

「…………」


 あれ? 急に押し黙っちゃったんだけどどうしたんだろう? もしかして片っ端から採るという無駄の多いやり方が職人の矜持を傷つけたとかか?


「あの、クロさん? この草はここで採れたんですか?」

「俺はここ以外では採集してないけど? 何か変なものでも混ざってたの?」

「変なものではないんですけど、店売りされているものよりも三つくらい上の性能のポーションの材料が……」

「へー、すごいな」

「と、とりあえずお返ししますね!」

「え? なんで? 俺が持ってても意味ないし引き取ってくれた方が助かるんだけど?」

「でも私お金全然残してなくて! というかいくら【採集能力】があるからってそんな成長度合いでちゃんと採集できるものなんですね」

「そしたらお金はいいから回復薬ちょっとおまけしといてよ。そうしてくれるとすごい助かるから」

「分かりました! ちょっと待っててくださいね」


 リンドウさんがその場で何か道具を取り出して作業を開始したので、俺も腕立てを再開することにした。とりあえずは二十回で一セットの繰り返しでいいか。



「できました! 受け取ってください。って、何してるんですか?」

「ん? 倒立腕立てだけど? というか大分前からずっとやってたぞ」

「もうツッコミませんからね、とりあえず受け取ってください」


 トレード要請が来たので受諾して内容を確認すると、HPポーション(ランク1)×55と表示されていた。なるほど、ベータ版とは回復アイテムの名称が変わったのか。というか


「こんなにたくさん受け取っちゃっていいのか?」

「はい、薬草以外にもいろいろといただきましたし、正直そのレベルのポーションはスキル上げのせいでちょっとしたら供給過多になると思うので」

「じゃあありがたく頂戴しとく、ありがとーな。俺は目的も果たしたし一回街に戻るよ」

「まだ初期装備ですもんね…… 頑張ってください」

「ああ、いつでも連絡してくれ。またな」

「はい、さようなら」


軽く手を振ってリンドウさんと別れた。予定よりも大量に入手できたのはもっけの幸いというやつだろう。正しい意味は知らないが……



 時間を確認するとユーレイと別れてからすでに四時間半が経過していた。今から町に戻って装備品を全部買いそろえてから向かうことを考えると、急がないと寄り道する余裕がなくなってしまうかもしれない。

 俺は町への道のりを走り出した。

十二時間おき更新はこれで最後です。

次話は金曜日の昼に更新する予定。月・水・金の週三での更新を目指します。


――――――――――――――  


スキルいろいろ『採集編』

【採集能力】 いろんなものを採集できるようになるパッシブスキル。熟練度が上がるとスタミナ効率や作業速度、成功確率が良くなる。たいていの作業に使える。

【採掘技能】 鉱山での採掘ができるようになるスキル。つるはしやピッケルの扱いも上手くなる。

【解体技能】 モンスターの死体から素材をはぎ取るためのスキル。素材の質や量、内容は熟練度と知識に依存する。

【釣り】 釣りのスキル。水辺で魚が釣れる。要釣竿。

etc.


 一部を除いて【採集能力】である程度代用できたりしますが効率は劣りますし必要な熟練度も高くなるのでよいものはなかなか取れません。二つ以上セットしていると若干ですが効率が上がります。

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