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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第二部 デスゲーム開幕編
37/162

縛り35,スマッシュ決めたらアピール

予約投稿する前に寝てしまった……

まあ三時間遅れとか気にしたら負け負け。

 ボスがちょくちょくスキル込みの突進をしてくるようになってからも、ユーレイは避け続けていたし、俺もコンスタントに石ころを打ち込んでダメージを稼いでいたのだが、何度目かのスキルによる突進をユーレイが無防備に受けたことで戦況が一変した。


「あの馬鹿ッ! さては装備の効果誤魔化してやがったな!」

『大丈夫か!?』


 悪態を吐いた後とりあえず安否確認をチャットで送るが返信が無い。幸いだったのは直撃したと言っても牙が刺さるような事態にはならなかったように見えたことと、今のダメージでターゲットが俺に移ったことか。だがそれは裏を返せば俺はボスの対処をしなければならず、安否を確認する余裕が無いってことでもある。


「でりゃああぁっ!」


 思いっきりハンマーを叩き付けて突進の勢いを殺そうとしたのだがその程度で完全に止まるはずもなく、ボスの牙の片方がが鎧の脇腹に凹みを作る。いやホント、牙に貫かれるでもなく、引き潰されるでもなく、撥ねられてふっ飛ばされただけのあいつはどんだけ悪運が強いんだって話だ。あの程度でどうこうなるとは思ってないが、安否確認に反応しない辺り気絶でもしてんのか。

 ともかくボスのスキルによる突進はよほどいい条件じゃないと避けきれないことが見えているので必死に近接戦を挑む以外の選択肢が無い。まあ最初と同じといえば同じなんだがな。


『システムメッセージ:アレクサンドロスさんがパーティーに加わりました』

『システムメッセージ:パーティーリーダーがアレクサンドロスさんに変更されました』

『システムメッセージ:ユーレイさんがパーティーを脱退しました』


 はあっ!? このタイミングで何やってんだあいつは!? 心なしか先ほどまでよりも苛烈に攻撃を仕掛けてくるボスにこちらも攻撃に重点を置いてなぐり合っていたところに、機械音声のような無機質な声で先ほどのメッセージが届けられた。

 というかパーティー勧誘できることで分かるとはいえ安否確認の返事ぐらいしろよ!


『よく分からんがとりあえずよろしくお願いします!』

『すまん、説明したいんだが俺にも何がなんやら…… とりあえずユーレイさんは無事なんだが』

『システムメッセージ:リンドウさんがパーティーから脱退しました』

『……おい』

『すまん、俺に当たらんでくれ……』


 ユーレイに事情を問い詰めるのが先か、この新しいメンバーとの戦力の摺合せを行うのが先か。そんなことを考えていたからか、ボスの牙での掬い上げを受け損なってしまった。

 鎧と武器も合わせれば総重量で百キロに届きかねないはずなのにそんなこと関係ないとばかりに浮遊感が襲いくる。

 背中から地面に叩き付けられたところに追撃で踏み付け。とっさにハンマーで受け止めたがそんなものでボスの重量を受け止めきれるはずもなく、加えられた圧力に肺から空気を絞り出される。激痛を我慢してHPを確認すると今の二発だけで15%近く減っていた。


『システムメッセージ:タナトスさんがパーティーに参加しました』


 さっきからなんなんだよ! 実質これ俺一人で戦ってんじゃねえか!

 そんな心の叫びを知ってか知らずか、後方から連続して二発の火の玉が飛んできてボスの顔面に直撃し、わずかに後ずさらせた。続いて【ヒール】と思しき光が俺の体を包み込み、HPが回復していく。


『部隊再編完了だよ! そっちの指揮はアレク=サンに任せるから老師にも伝えといてね!』

『おいユーレイ! これどういう状況だ!』


 その質問は華麗にスルーされ、代わりに追加の火球がボスの体表を焼いていく。


『あー、俺はアレクサンドロス。とりあえずよろしく頼む。というかクロさんが指揮採った方がよくねえかな』

『タナトスです、よろしくお願いします。といっても何ができるか知りませんけど』

「おッす! 俺は無添加老師だ! よろしく頼む!」

『クロですよろしくおねがいします』


 このタイミングで入れ替えたメンバーの自己紹介が始まってしまい、仕方なくユーレイへの追及を諦める。そもそもとりあえずの窮地を脱しただけで目の前のボスからの攻撃が止んだわけではないからな。


『アレクサンドロスさんから指示を受けろと言われてるんですが指示をしてもらえますか』

『あー、俺が指揮を任されたのは遊撃の二人だけで、壁役には気合を入れさせろとしか言われてないんだが……』

『はあ!?』

『俺に文句を言わないでくれ! こちとら物理ダメージオンリーでのヘイト管理なんてしたこともねえんだぞ!』

「で! 俺はぶん殴っていいのか!?」

『さっきからなんでチャット使ってないんだ!?』


 もともとまとまりのあるメンバーでもないのに無理やり再編成したせいでグッダグダだが、話を要約するとつまり


『俺はとにかく殴りまくってできる限りタゲ固定、他の三人は老師を筆頭にダメージを稼いで老師にタゲが移ったら一時的に攻撃中止。後衛へのタゲとびの際は攻撃を妨害しつつどつき合いで速攻ヘイトを稼げ。って感じか』

『そういうことだ。ホント指揮変わってほしいんだが』

『向こうの指揮をユーレイがとってるならその分こっちの指揮を任せたってことだと思いますよ。俺は前衛で回り見えませんし』


 ああ、必死で武器振り回してる時に丁寧語でしゃべるのが些か辛い。部活での上下関係とかに感謝だなこういう時は。


「【正拳】! 【正拳】!」

「【ヘビースラーッシュ】!」


 俺が相手取ってるボスの後ろからスキル名を叫びつつ遊撃の三人が攻撃を加えていく。もっともスキルを使っているのは二人だけで、タナトス君は投げやりな表情で淡々と石ころを投げつけまくっているだけなのだが……


『クロ! 右に跳んで!』

『うおっ!?』


 ユーレイからの個人チャットに反射的に従って跳躍した俺の左側を、一発の火球が通り抜け、ボスの顔面を焼いていく。文句を言いたいが言える状況でもないので、後で拳骨を食らわせるという決心をしつつ再びボスと相対する。


 HPが減れば回復アイテムを使うまでもなくスキルや魔法が飛んでき、被弾を気にしなくてもいい状況が時間当たりダメージを押し上げる。

 戦いは参加する人数が増えたことで先ほどまでよりも確実に有利に展開されていたのだが、定石通りのパーティー戦闘は、定石から外れたスキル構成の欠点を浮き彫りにしていく。


「くそ! しまった!」


 味方の攻撃でタゲが変わるたびに全力でハンマーを叩き付けてこちらに引き付けていたのだが、ボスの突き飛ばしでヘイトが消費されたところにタイミング悪く火球が炸裂してしまい、俺が攻撃できる態勢でないのに後衛にボスのターゲットが移ってしまったのだ。

 簡潔に言って、ピンチだった。

というわけで久々のクロ視点でした。

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