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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第二部 デスゲーム開幕編
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縛り30,しょうぶに せなかは みせられない!

 野原に車座に座ってお弁当なんて言うとピクニックみたいだけど、その実態はデスゲームチックな状況で固いパンと乾物を齧るだけで見晴らしがよくも無ければ油断してると付近に沸いたモンスターに襲われかねないとなると風流さもへったくれもないね。あ、このチーズ美味しい。


「よしっ、早く行こうぜ!」


 誰よりも早く食べ終わってそんなことを言い出すあたり老師にはかなりバトルジャンキーの素養があるね。これが本当にデスゲームだとしたらボス戦なんてふつうもっと緊張する物だと思うんだけどなあ。

 まあ硬くなって被弾が増えるよりはよっぽどいいけどね。


「最終確認だけど、役割としてはクロが前衛で、僕と老師が遊撃、リンドウちゃんは後ろから回復。毒薬も有るけどヘイト管理が怖いから今回は回復系だけで。基本方針としてリンドウちゃんの方に突進が流れて行かない位置でひたすら回避しつつ攻撃、万が一リンドウちゃんの方にタゲが向いたらその時はクロが割り込んで体張るからリンドウちゃんは落ち着いて回復に専念してね」

「はいっ! 頑張ります!」


 リンドウちゃんが思ったよりも怖がっていないというか、妙に度胸があるというか、ずれてるというか……

 うまくいけばリンドウちゃんの出番自体そこまでないんだけど微笑ましいからそれは言わなくていっか。


「で、実際のところボスの強さってどのくらいだったんだ?」

「β時代は後衛職でも適正レベルの装備が有れば一撃死はないし、高威力のやつじゃなければ三発耐えれないこともないくらいだったみたいだね。たぶんだけど法定速度で走ってる原付に撥ねられるくらいなんじゃないかな?」

「いや原付に撥ねられたら大怪我だぞ普通」

「リンドウちゃんでもVITの値で考えたら成人男性の1.5倍くらいあるし、装備も現実世界のそれとは比べ物にならないからね、そんなものだよー」


 確認事項は他に無かったよね? ふむ、話にほとんど参加してなかった老師に調子に乗って攻撃しすぎないようもう一回釘刺しとこうかな……



 時々周囲の反応を【サーチ】で確認しつつだんだんと町から離れていくと、周囲の風景に若干の変化が見られてきた辺りでひときわ大きな反応を発見した。多分次のエリアとの境界が近いんだろうね。

 っと、これは……?


「クロ、リンドウちゃんが襲われないよう気を付けつつ後から追ってきて! 老師はぐるっと走り回って周囲の雑魚を掃除してきて!」

「おい、いきなりどうした?」

「すでに誰かが闘ってるんだよ! しかも動き方からしてたぶん割とピンチ!」

「マジかよ、まさか俺たち以外にもこんなバカなことをしてるやつらがいるとは……」

「そんなわけだから僕は先行して様子見てくるよ、パーティチャットに気を配っといてねみんな」


 そう言い残して一気に駆け出す。いくらステータスが高くないとはいえ装備重量やリアルでの運動量の関係もあって走る速度だけならこの面子で老師に次いで速いのだ。混乱気味のリンドウちゃんへの説明はクロに丸投げして一気に反応の場所に近づいていく。



「ぐうっ!」

「ヒ、【ヒール】!」

「くそう、これでも食らえ!」


 騒音や怒声が聞こえてくるところにたどり着いてみるとそこでは案の定大苦戦の様相が展開されていた。プレイヤー側のパーティはスタンダードに前衛二人と魔法使い二人、それと恐らくは周辺警戒とかに重点を置いたビルドの遊撃役。

 しかし壁役であろう人の持った大盾は全力の突撃を何度も受け止めたと見えて傷だらけ。その後ろで魔法使いたちが必死に回復魔法をかけてはいるけど、魔法使いが回復に回っているせいで消耗する一方でダメージを与えられていないみたいだね。遊撃の人は石を投げてるのかな? もう一人の前衛の大剣使いの人は負傷して魔法使いたちと一緒に壁役に守られてるね。


 たぶん状況としては魔法使いの人が大きなダメージを与えすぎてボスのターゲットがそっちに固定されちゃって、壁役の人が魔法使いたちの前から動けなくなったことで焦った大剣使いが突撃した結果反撃を食らって戦線総崩れ。遊撃の人が地道に頑張るもダメージがほとんど通らなくてターゲットが奪えないって感じかな。

 なんというか、見事なまでにやっちゃいけない戦い方だね。とはいえこのままじゃ明らかに危ない以上助太刀は勝手にさせてもらうけどね。


 タンクの人の至近距離で暴れまくっていたボスが走り出して一度距離が空いたタイミングで、隠密行動のためのスキルを発動させたままボスに肉薄し、再び突っ込もうと振り向いたところに姿を現して全力で攻撃する。


「てやっ! 【スラッシュ】、【マナバレット】!」


 回し蹴りの要領で足刀を叩きこみ、そのまま回転の勢いを利用して顔面に魔力弾ごと掌底をあてて、そのままハンドスプリングの要領で飛び越える。いい感じに目に当たったからうまくヘイト取れたんじゃないかな?


「『ライオン、トラ、チーター!』」


 パーティチャットに投稿しつつ上がったテンションのままに雄たけびを上げる。といっても僕一人加勢したところで大した時間稼ぎはできないんだけどね。


『え? なんですか今の?』

『たぶんだけど、トラ・トラ・トラって言いたかったんじゃねえかな?』


 外野でクロたちが何やら言ってるけどそっちに意識を割く余裕はちょっとないね。無事にボスの標的は僕に切り替わったみたいで、今はその巨体を再び反転させて僕の方を睨んでる。僕もいつでも回避に移れるように距離を取りつつ改めてボスの外見を観察する。

 イノシシをそのまま僕よりも全高が高いくらい巨大化させたような姿をベースに見るからに硬そうなゴワゴワした毛並と、前方に大きく突き出た牙。牙以外の歯並びも妙に頑丈そうなのはやっぱりいろんなものをバリバリ食べるからなんだろうか?


 案の定さっきの攻撃でも大きなダメージは与えられてなかったみたいで、しばらくこっちを睨んでいた大猪(仮)は軽く前足で地面を掻いた後突っ込んできた。跳び避けるようなことはせず横方向にダッシュして避けきったけど、思ったより余裕がないね。老師が速く合流してくれないと厳しいかなこれは?

 そんなことを考えて老師に急かす文言を送り付けていたら起き上がった大剣使いの人が声をかけてきた。どうやらこの人がこのパーティーのリーダーっぽい?


「すまん助かる!」

「お礼はいいから早く体制立て直して! というか勝てそうにないならなんで早く逃げてないのさ!」

「俺らも最初はただ様子見のつもりだったんだがいざ対峙したら圧力みたいなのがかかってきて逃げようにも背中を見せられねえんだよ! お前も気を付けろ!」

「言うのが遅いよ!?」


 若干距離が空いてるから怒鳴り声になるのは仕方ないね。実際のとこ文句は言いたいけどそこまで怒ってるわけじゃないし。

 しかし逃げられないのかあ。最悪の場合僕と老師で居残ってクロたちを逃がした後で全力で撤退っていうのも場合によっては視野に入れてたんだけどなあ。

 まあ逃げれない以上はやるしかないよね! 気分的にはボス戦だよ全員集合って感じかな?


「ちぇすとおおぉっ!」


 そんなことを考えながらボスをあしらっていたらボスの横合いから凄まじい速度で走ってきた老師がそのままドロップキックをぶちかました。クロとリンドウちゃんもそろそろ追いつくみたいだし、サクッと倒しちゃいますかー。

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