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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第二部 デスゲーム開幕編
29/162

縛り27,アルハラ禁止

ほんのちょっぴり長め。

「どう? 何か作れそう?」

「甲殻の方は上手く加工すればそれなりに堅くて相当に軽い鎧になると思うよ。糸の方は多少量が心もとないけどシルクみたいな物だし普段着の素材としてはかなり良いね」

「う~ん…… 軽鎧は今のところ使う予定が無いんだよね。老師が使うなら別だけど。普段着の方はどれくらい作れそうなの?」


 素材の分配方法を決めた僕達は、とりあえず今日手に入れた素材をスミスさんに見せて使い途を検討してもらっているのだけど、どうにも思ったほどには収穫が無かったみたいなんだよね。

 今僕の目の前には虫の殻が山と積まれていて、その横には牙や爪の山、そしてスミスさんよりの位置にはまだ紡がれていない糸の塊がいくつか。


「ふむ、全身作るなら体格にもよるけど二人分。肌着くらいなら全員分作れるとは思うけど、洗い替えの確保は難しいと思うよ。欲を言えばもう少し欲しいね」

「殻に対して明らかに少ないけど、そんなにドロップ率悪いの?」

「ドロップ率自体は多少低いくらいだったんだが糸は他の素材と違って死体を解体しても手に入らなかったからそれでだな。糸の方が優先度たけえんだから解体はそこそこにして狩る効率上げるべきだったかもな」

「ん~、まあ素材については明日すぐ使うものでもないしリンドウちゃんが植物系も集めてきてくれてるはずだからいいんじゃない? レベルの方はどのくらい上がったの?」


 というか落ち着いて考えてみればクモの糸は体内にある時点ではただのどろどろした体液なんだし死体から取れないのは当然のような気もするね。効率よく集める案に関してはまた次回クロに試してもらおうっと。

 それにしても、クロと老師がそれぞれ3レベと2レベ上がって14と15、リンドウちゃんも7上がってレベル12まで上がってけっこう差を付けられちゃったなぁ。安全マージンとってもそこそこのペースで上がってるのは良いことだけど、これは僕も頑張らないとだね。



一通りの報告が終わったので、後は明日に備えて各自のスキルを鍛えることになった。


「スミスさんが何をするかは一任するよ。根詰めすぎないようにだけしてくれれば」

「ああ、明日までになにかひとつくらいは仕上げておくよ」

「老師は…… うん、部屋でひたすらスタミナ回復と自己強化のスキルを使って、座って休んで」

「おうっ! にしてもなんか退屈そうだなぁ」

「音を出さなければ攻撃スキルの練習もしていいよ。ちょっと練習したらスキル名言わなくても撃てるようになるしね」


 僕はまぁ時々ナイフ抜いたり魔法使ったりするだけだからリンドウちゃんと一緒で良いや。リンドウちゃんには当然薬を作ってもらうとして……


「じゃあ俺は筋トレでもしとくわ」

「いや、クロはこっち、僕とリンドウちゃんと一緒に来て」

「ん、なんでだ?」

「わざわざ言わせないでよ! ホントにクロは鈍いね?」

「へ? えっと、はい。クロさんは鈍いです」

「なんで俺ディスられてるんだ……」


そんなバカな会話をしているとスミスさんが何をするのか聞きたいような目線を向けて来ていたので、ウィスパーを送って説明したところ、後から合流するとのこと。

スミスさんの役に立つものが出来ると良いけどね。


「部屋じゃなくて中庭に行った方が良いんじゃねえの? スキル上げだろ?」

「……え? あ、そうだね。確かに部屋よりも中庭の方が良いかも。そしたら移動しよっかリンドウちゃん」

「あっ、はい! 分かりました!」


クロが良いところに気付いてくれたおかげで僕らが寝る部屋を汚さずにすみそうで助かるね。

何をするのか勘違いしてそうだけど逃げられても面倒だし中庭に着いてから教えれば良っか。スキル上げには違いないしね。



「真っ暗だな」

「真っ暗ですね」

「ん、今明かりを出すよ。【ライト】」


宿のご主人に中庭を使う許可を貰ったけど、当然のように明かりなんてついていないので、今まで使う機会の無かった魔法の明かりを灯した。

ちなみに【ライト】の持続時間はデフォルトで三十分程で、クールタイムは五分。MP消費は少ないとは言え明かりを出すとモンスターに見付かり易くなるのも有ってスキル上げはかなり面倒な部類だから、街中に居るうちになるべく上げておきたいスキルの一つだね。


「で、なんのスキルを鍛えるんだ? リンドウさんも一緒ってことは攻撃スキルか?」

「うん、まあそうだね」


と言っても僕は【ヒール】の性能テストで、攻撃するのはリンドウちゃんだけどね。

まあ先々で必須のスキルをクロに覚えてもらう目的も有るからメインはリンドウちゃんとクロの二人かな。


「そういうことなら防具着けたほうがいいか。ちょっと待ってろ。よしっ! いつでもいいぞ」

「あー、直接攻撃スキルを鍛えるわけじゃないから鎧はつけてないままでいいよ。むしろ楽な服装にしてたほうがいいかも?」

「そうなのか? というか直接攻撃じゃないスキルなんてあったのか?」


 鎧の着脱といってもメニューから装備を変更するだけで済むとはいえわざわざ着けてもらったものを外させるのは忍びないけど、今日の内容だと着けてても邪魔にしかならないからね。


「さて、クロの言質も貰ったことだしさっそく一本目いってみようかリンドウちゃん!」

「あ、はい。えっと、まずは最初なのでこれを……」

「これはどんな効果かは分かってる感じ?」

「はい、一応ある程度は……」

「まあ説明は飲んでからのお楽しみだね!」

「……なあ、やっぱり部屋で自分のスキル上げしといていいか?」


 リンドウちゃんが取り出した明らかにHP回復ポーションとは違う緑色の液体の入った瓶を見たクロが今更ながらにしり込みしているけど、これは今後のためにも必要な工程だから逃げてもらっちゃ困るんだよね。


「四の五の言わずにグイッと行きなよ! それともクロは僕の酒が飲めないっていうのかな?」

「ちょっと待て、それよく見たらアイテム名が毒や……」


 突っ込みを入れるために開いた口に素早く瓶を突っ込んだ上で顎を下から押し上げて無理やりびんの中身を飲み下させる。ア段の発音をするときはどうしても口が開くので何かを投げ込まれないように気を付けないとね。


「ゲホッ、ゴホッ……!」

「そじゃあ説明よろしく!」

「はぁっ、はぁっ…… その前になんか言うことがあるだろうが!」


 いきなり飲み物・・・を飲ませたせいでむせているクロを無視してリンドウちゃんに効果を訊く。見た感じ特に影響が出てるようには見えないから遅効性かよっぽど弱い毒かのどっちかだと思うんだけどね。


「今のは薬草とよく似た毒草を回復薬を作るのと同じ方法で加工したもので、一応毒薬の部類には入るんですけど致死性とかはないらしい……です……」

「こら、クロ! 女の子をにらむなんてよくないよ? リンドウちゃんが怖がっちゃってるでしょうが!」

「俺が睨んでんのはお前だっ! 痛ぅっ!?」

「あれ?」


 僕に食って掛かってきていたクロがお腹を押さえてうずくまったかと思うと今度はお腹以外も痛むのかそのまま横に転がって呻きだした。

 見た感じ体が痛む系統の毒なのかな? どういう理屈なんだろう?

 とまあ結構痛むのか悶えているクロの様子を横目に見つつリンドウちゃんと雑談する。話題は毒草と薬草の見分け方とか、森で見つけた珍しそうな植物のこととか。

 リンドウちゃんはクロの方を心配そうに見ていたけど、聞かれたことにはきっちり答えるあたり本当にいい子だよね。


「お、収まったみたい? HPの減少量は60か…… 痛がってた割には大したことないダメージなんだね~」

「こんのヤロォ……」

「はい、次の薬を構えてー」

「何の説明もなくいきなりやることじゃねえだろーが!」

「ごー!」

「えいっ、【投薬】」

「いっってえぇぇー!?」


 クロが僕に掴み掛ろうとしてたのかそれとも回れ右をして逃げようとしてたのか、あるいはただ文句を言おうとしてただけなのかはわからないけど、スキル上げは時間との戦い。そんなことをしている暇はないんだよね。

 で、毒薬を【投薬】した場合も回復系アイテムと一緒で即効性が高まる代わりにトータルでの効果が下がる、と。これって実はすごく応用のきくスキルなんじゃない?

 そんなことを考えていたら素早く立ち上がったクロが中庭の入口の方へ走り去ろうとしていた。どこに逃げられるつもりか知らないけどなんて面倒なっ!


「おや、クロ君。そんなに必死にどこへ行くんだい?」

「あ、スミスさん! 後で話すんでとりあえずそこ通してください!」

「やっほー、ナイスタイミング―」

「やれやれ、事前に説明しなかったのかい?」

「んー、言わなくても分かると思っちゃってさー」


 突然のスミスさんの登場に動きが止まっていたクロに後ろから追いついて、腕の関節を決めて逃げられないようにしつつスミスさんに挨拶する。その際クールタイムの終わった【ライト】を無詠唱で発動させておくのも忘れない。


「お、おい。これはいったいどういう……」

「どういうも何もリンドウちゃんの薬関連スキル上げのついでにクロに【毒耐性】取得させようかっていう企画だけど? 気づいてなかったの?」

「その過程で染料になりそうなものができるかもしれないと思って見学に来たのさ。ユーレイ君がいるこっちの方が明るいしね」

「お……」

「お?」

「俺の味方はいないのかあああぁぁぁ!!?」


 星の綺麗な夜空にクロの絶叫が響き渡った。宿の人に怒られても知らないんだーっと。

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