縛り21,wiki閲覧禁止
久しぶりの更新過ぎて読者様方に忘れられている不安と闘いつつ更新。
また読んでくだされば幸いです。
待ち合わせ場所はいつかの防具屋の裏。スミスさんは割と落ち着いてたみたいですぐに合流出来たけど、リンドウちゃんはまだ来てない。まあ僕らが飛ばされて二十分ぐらいたった辺りで返信があったからそろそろ来るとは思うんだけど……
まあ僕らもただ待ちぼうけてるほど精神的な余裕はないわけで、スミスさんとクロは調整した鎧をつけて動き心地を確認したり仕様変更の有無とかについての確認をしたりしてるし、老師はスキル上げと動きの修練のためにひたすら四股立ちで正拳突きを繰り返している。……というか今後のことを考える上であまりにも役に立た無さそうだったから僕がアドバイスして邪魔にならないようにさせてる。老師がスキルを放つ度に響く空気を叩く乾いた音が耳に心地いい。
「そうかそうか、アンタも神殿に転送されてこの町に来たクチか! 実は俺もなんだよ。といってもまあそうじゃないやつは本当に一部の酔狂な奴だけなんだけどな」
「へえ~、自分からこの町に来る人はなんでこの町に来るのか知ってる? そもそもこの町にはどれくらいの人がいるの?」
「どうやって知ったのかは分からねえがこの町の神殿では今までの人生で身に着けてきた技能を封印することが出来るからな。もちろん短期的に見れば当然弱くなるんだが、そうすることで別の技能を身に着けることが出来る。そのためならここに来る程度の苦労は軽いっつーことだろうな」
そして僕はと言えばこうして防具屋のおじさんと話している。情報収集は大事っていうのもそうだし、NPC――僕らと違ってもとからこの町にいる人たちがどんな対応をしてくるかの確認もしておきたかったからね。
「……そういや最近飛ばされて来たんじゃなくこの町に来たってやつをめっきり見ねえな。ここ半年ばかり一人も見かけてねえ気がするぜ」
「そうなんだ。世界中から来てるんだったら生活する上でも不自由なことっていろいろあったりはしないの? 言葉とか不自由しそうだけど……」
「まあ海を渡ってきたやつらの中にはそれで苦労してるやつらもいるっちゃいるが、俺等みたいにあそこの神殿に転送されてきた奴等はある程度大陸公用語が話せるようになるみてえだぜ。神様の加護ってやつなんだろうな。つくづくありがてえ話だ」
「ふ~ん。知り合いが来たみたいだから僕はそろそろ行くね。いろいろ話してくれてありがと!」
「おう、今度来るときはぜひうちの防具を買っていってくれよな!」
なんかぽろぽろと重要そうな情報も出てきてたしいったんクロたちと話し合わないとね。リンドウちゃんもちょうど来たみたいだし。
「すいませんお待たせしてしまって! わたしもう何がなんやらで……」
僕がクロたちのところに戻って一分もしないうちに走ってきたリンドウちゃんが開口一番口にした言葉がこれだった。目元に涙の跡があるのは仕方がないと思う。というかどっちかというと男衆三人の反応の方がおかしくて、リンドウちゃんの反応が普通だよね。
リンドウちゃんが来てとりあえず集まる予定の人が全員そろったからみんなもそれまでしていたことを中断して話す体制を整えた。というかみんなもうちょっと動揺してもいいと思うんだ。言われるがままに黙々と正拳突きを続けてた老師はちょっと置いておいても、クロとスミスさんが話し合いを終えて腕立てやら裁縫やらに精を出してるのはちょっと流石の僕も神経を疑うよ?
まあ、何はともあれ……
「とりあえず話を始めようか。先ず僕とクロのフレンドの人に声かけてみたわけだけど、ここにいる人たち以外で誰かフレンドがいたりする人いる?」
「いや、俺はそもそもフレンド一人しかいねーしなー」
「僕も問題はないよ。一緒にゲームに参加した人はこのサーバーに来なくて済んだみたいだしね」
「あ、私は何人かいますけど、どの方も一度ポーションを買っていっただけなのでよく知らないというか、その」
「じゃあとりあえずは俺たちの話に参加してくれるってことでいいんだよな?」
「あ、はい! お願いします!」
ちなみにスミスさんは全然外見を弄ってないみたいで違いが判らなかったけど、リンドウちゃんは髪の毛の色とか眼の色を始めとして結構弄ってたから結構印象が変わって見えた。といっても眼と髪の色は変わってないから一番大きな変化はほっぺたのそばかすかな? 全体的にちょっとだけ幼い印象、というか今までが本来より大人びた外見になってただけなんだよね。
「という訳で! さしあたって今日これからこのパーティーで何をするかということを決めたいと思うよ!」
「おや? 今の状況に関して情報収集をしたり今後の行動指針を相談したりするんじゃないのかい?」
「そんなことは他の人達は絶対やるんだから今僕らが急いでやる必要はないんだよ! それよりも今このタイミングでしかできないことをやるべきだと思わない?」
僕がそう言うと、四人そろって怪訝な表情になった。確かに少しだけ唐突なことを言った自覚はあるけど、明らかに何にも考えてなかった様子の老師にまで「いきなり何を言い出すんだこいつは?」的な視線を向けられたのはちょっと不愉快だよ。
「何の事だか見当もつかないんだが、何をするつもりなのか俺らに分かるように説明してくれ」
「何をするっていうか提案するだけなんだけど、端的に言うと南のフィールドのボス撃破だね!」
「どうしてそうなった!?」
「このメンツでかい?」
「え? ボスって、え?」
「ボスモンスターか、腕が鳴るな!」
おお、見事に反応が分かれたね。でもこの意見に反対の人はいないみたいでよかったよ。
とはいえさすがにちょっと説明不足だろうしクロの疑問にも答えてあげたたほうが良いよね。
「まず、嘘か真か今このゲーム『AWO』はいわゆるデスゲームになったらしいんだよね?」
「おう、そうだな」
「ということは、他のプレイヤーたちは本当にデスゲームなのかをどうにか確認しようとしたり、死なないように安全な範囲での活動を中心にしようとしたりするよね?」
「お、おう……」
「ということは最前線を攻略してたプレイヤーも当然今までより大きな安全マージンを取るわけだよ!」
「おう?」
「つまり他のプレイヤーと比べて縛りがある分で遅れてた僕達にもイエス、ワンチャンス!!」
「いやそこは俺らも安全マージン取るところだろ!?」
「というかそもそもこのメンツじゃあボスに挑むのは厳しいんじゃないかい? 人数だってフルパーティーには一人足りないだろう?」
クロのツッコミを補足するようにスミスさんが疑問を投げかけてきた。五人中二人が生産系って聞くと確かにちょっぴり厳しそうに聞こえるよね。
どうやって説明しようかなと考えながら会話に加わってなかった二人のほうを見ると、リンドウちゃんは完全にテンパってアワアワしていて、老師はというと、すでにやる気満々で準備運動を始めていた。
流石に今すぐには倒しに行かないよ!?
「大丈夫! なるようになるよ!」
つい勢いで何の根拠も示さないまま断言しちゃった。なんていうか老師を見てるといろいろ考えるのが馬鹿らしくなってきちゃうんだよね!
とはいえ僕だってこんな早期に犬死にするつもりはないし、サクッと戦力強化のメニューを作るとするよ。まずはみんなのスキル構成をちゃんと教えてもらわないとね。
「ふむふむ、老師は前と同じ攻撃特化の脳筋スタイルでスミスさんは逆に戦闘放棄の生産型、リンドウちゃんが【投薬】スキルでサポートができる薬師型ってことかー」
「だから戦闘は実質四人ですることになると思うよ。防具を作成するのはやぶさかではないけど後二人参加してくれる人を探したほうが良いんじゃないかな」
「というかどう考えてもボスに挑むようなメンツじゃねえだろーよ」
となると老師には最低限の回避スキルを取得してほしいけど今回のボスは小回り利くタイプでもないだろうし老師の素早さならなくても大丈夫かな。そもそも取得方法調べるところからだと一日じゃきついしね。
そしてスミスさんに関してはレベルを上げないとどうしようもないよね。生産系も裁縫はともかく鍛冶になってくると筋力がないと防具を作るのも大変そうだしレベル上げは必須。この二人には一緒に行動してもらうようにしようかな。
で、問題はリンドウちゃんかな。順当にいけば戦闘向けのスキルの【投薬】の熟練度をあげつつレベル上げっていうのが普通なんだろうけど、消耗品を使う補助スキルっていう特性上ちょっとやそっと戦ったぐらいじゃそこまで大きく成長しない気がするんだよね。となると今はスキルを伸ばしていく方法で……
あれ? スミスさんかクロが今なんか言ってた? クロはなんで溜息ついてるの?
……………………
「と、そんな感じで四人で東の森の浅いところに行って、夕方まで各々の強化に励んでもらって、明日の午前中に軽く情報収集してからボス討伐に出発っていう感じで行こうと思ってるんだけどどうかな?」
「俺らの話を聞いてなかったこととかそんな程度で勝てるのかとか言いたいことはいろいろあるんだが…… まず第一その話だとお前の行動予定がさっぱりなんだがお前は何をするつもりなんだ?」
「う~ん、防具の慣らしとかいろいろと考えてることはあるんだけど、その前に……」
僕がそういって腰のナイフを一息に引き抜くと、抜かれた刀身とまとっていた防具からどす黒いオーラがにじみ出た。そんな僕に対してみんなが警戒するけどはっきり言って警戒したところで無駄だよ。
「う~ん、ばたんきゅ~……」
だって、さっきまでも十分ひどかった気持ち悪さが、一気に何倍も担って襲いかかって来て正直今にもぶっ倒れそうなんだもん。
うう…… 街の中で試しに抜くことにしてホントに良かったよ……
それを最後に僕の意識は闇に沈んだ。
明後日の昼もちゃんと更新するよ!
たぶん!←




