縛り20,縛ってる場合じゃない!
月曜水曜と続いて更新できず申し訳ありません……
そしてしばらく休載します。
理由とか今後の予定とかは土日の間に活動報告に纏めようと思います。
ヘビーな話じゃないですよ!(笑)
しばらくしてノイズが止むと、目の前には一見さっきと変わらない風景が広がっていた。変わっているところといえばさっきのノイズの中でバランスを崩したのかクロと…… お兄さんが一人尻もちをついていることと、遠くから聞こえてた街の喧騒がなくなったくらいかな。
ピンポンパンポーン♪
デパートで流れるようなコール音が空から響いてきて、続いて綺麗な女の人の声でアナウンスが流れ始めた。
『「Another World Online」運営です。この度は事前予告なしのシステム修正で、プレイ中の皆様におかれましては多大なご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。今回の修正でプレイヤー密度の調整とサーバー負荷軽減による一層の快適さのためにサーバーを三つに分割しました。今後のログイン時にはログイン画面でログインするサーバーを選んでログインしてください。またサーバー強度の補強によってNPCの思考パターンに幅が出来ましたので、一部のNPCやモンスターの行動パターンに変化があ……」
僕がアナウンスを聞いていると、座っていたクロとお兄さんが立ち上がってこっちに来た。
「これはいったいどういうことなんじゃ?」
「簡単に言うと、あのノイズが走ってる間にサーバー分割を含むアップデートをやったからそれに関するお詫びの品と、この後ログインする人たちとの差を埋めるためのログイン時間延長アイテムを使っちゃった時間に合わせて配布するってことかな?」
「そんな大規模なアップデートがあんな一瞬で終わるもんなのか? そもそもまだサービス開始からたったの二時間じゃねえか。そんなにすぐにアップデートするならサービス開始前にその仕様にしとけばよかっただろ」
「う~ん、たぶんその理由も僕たちはすぐに分かると思うよ?」
「………………?」
お兄さんが何一つ理解していない様子なのはもう放置でいいよね。ちょうどお詫びのアイテムの内容とかを含めたアナウンスが終わるところだし。
『それでは引き続き「Another World Online」をお楽しみください』
『ここまでが他の三つのサーバーでアナウンスされた情報です。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんがあなた方がいる場所はほかの三つのサーバーとは本質的に違います。まず、技術的な面からの解釈を述べてもあなた方の役に立つとは思えませんので簡単に述べると、今まで以上にリアルになって、その分痛みやらなんやらが大変なことになるっていうことと、死んでも無条件に神殿で復活はできないようになったこと。……そして、ログアウトが出来なくなったということです』
これは、もしかしてあれかな? 一昔前の創作物なんかでよく見た……
「デスゲームってやつだね!!」
「まあお前はそういう反応するだろうと思っていなかったといえば嘘になるが、さすがにそんな場合じゃねえぞ」
「これはいったいどういうことじゃ?」
いまだにまったく現状把握できてないお兄さんはあとで適当に言いくるめよう。クロも意図的に無視してるみたいだし。
『なおアバターの外見ですが髪や眼の色を除いて現実のものに戻しています。「この世界での死」を自分のものとして受け取っていただくための配慮ですね。髪と眼の色に関しては持ち物に『化粧箱』を入れておいたのでご自分で調節してください。それでは落ち着いた方から神殿に転移させますね。危険地帯にいる方へ配慮してゲームの稼働はそこからになります』
『旅立つ前にいくつかアドバイスを。チュートリアルクエストを受けていない方もすでに受けた方も一度練兵場の指導教官のもとを訪ねておくといいでしょう。今までと同じだと思って油断するようなことはくれぐれも無いようにしてください』
……なんていうか、デスゲームの割にはやけに親切な運営だね。そしてさっきからとぼけた顔をしているお兄さんが無添加老師(仮)で確定かな。とか思ってたら今度は周りの風景がグニャリと歪み始めた。
もしかしてこれは僕たちが一番最初なノリかな。まあよく見てればクロは呆れてるけど混乱してはいないし、老師は事態が分かっていないから何にも騒ぎ立てたりしてないし、当然といえば当然かも?
浮遊感とともに一度真っ暗になった視界が元に戻った時僕たちは神殿の一角の死に戻りポイントに立っていた。後ろを振り向けばクロと老師も立っていたけど、ほかの人たちはまだ来てないみたい。
「さて、じゃあ後ろが使えちゃうかもしれないし早いとこデスゲームに出発するよ! と、おっとっと」
「お前はもうちょい落ち着いて行動しろ。ええと、あんたは無添加老師(仮)で合ってるよな?」
「さっき自己紹介したばかりじゃぞ? まったく、これだから近ごろの若者は……」
呆れ顔のクロと自分の顔が普段の顔に戻ってることに気づかずにロールプレイを続けるおじいさんを無視して歩いてみると、身体が現実世界と同じようにしか動かないような感じがした。
これがアップデートの内容なのかな? リアルにした分動きの自由度が減るっていうのはゲームの難易度としては馬鹿みたいに高くなる気がするね。この分だと敵の攻撃とかすごく痛いことになりそうな予感がするよ。そして呪いのしんどさも五割増しだよ。
「とりあえず移動しよっか。老師に鏡も見せないとだし」
「おお!? おじいちゃんの顔じゃなくなってる!? なんでだ!?」
「本当にアナウンス聞いてなかったんだね老師…… さっきノイズが走ってからずっとその顔だったよ?」
「マジか…… 全く気付かずにしゃべってたよ……」
「まあ俺達は外見全然いじってなかったからな、自分しか変わってなかったら気づかなくても無理ねえって」
「今までの呼び方だと面倒だから呼び方は老師で統一するけど良いよね?」
そして僕はちゃんと外見変えてたんだけどね。抗議の意味を込めてクロにローキックを放ったら狙いが甘くてグリーヴにあたって痛い思いしたし、やっぱり思い通りに動かなくなってるね。膝の皿を蹴りぬくつもりだったのに……
そして老師の外見だけど、実は顔以外はおじいちゃん姿だった時とあんまり変わってなかったりするんだよね。わざと腰まげて体を小さく見せてたけどおじいちゃん姿の時でも170センチぐらいはあったし、肩幅だって別段狭くなかったからね。元の外見になった今は高校一年生としてはそこそこ大きい方なクロよりも明らかに身長が高いから180センチ近くあるんじゃないかな。顔はおじいちゃんをそのまま若くした感じで、日本人としては彫りの深い黒目黒髪の若者って感じかな。
「で、この後どうする感じ? というかこれどういう状況?」
「とりあえずフレンド機能はちゃんと使えるみたいだね。ログアウト表示になってるのはこっちに来てない人だと思うよ。使えなくなってるのはログアウトと課金システムと外部ブラウザ。要は外部と接続する系統のツールが全部ってことだね。僕のフレンド以外でクロと老師の知り合いでほかにこっちに来ちゃってる人いる?」
「いや、いないな。といっても俺のフレンドの半分はユーレイと共通だからなんだが……」
「オレはユーレイちゃん以外にまだフレンドいねーわ。臨時パーティー組んだ人も微妙によそよそしくてフレンド登録まではしなかったしな」
「じゃあクロは老師に分かるように状況説明してあげて。僕はその間にリンドウちゃんとスミスさんに連絡取ってみるから」
残念なことにというか幸いなことにというか僕たちの知り合いでこっちに来てるのはリンドウちゃんとスミスさんだけだった。バークさんが来ててくれてれば武器関連が多少頼りになったのに。まあ回復アイテムと防具を作れる人のあてがあるっていうだけでも御の字だよね。
二人に他に一緒に行動する予定の人がいないなら直接会って今後のことを話し合いたいという内容のフレンドコールを送った。落ち着いたら返事を返してくれるんじゃないかなあ。
「で、そういう訳なんすけど老師さんはこの後どうしますか? 俺らとしては一緒に行動してもらえるとありがたいんすけど」
「いいよ。どうせほかにフレンドいねえし、ユーレイちゃんには世話になったしな。そもそもまだ狩り行ってねえし」
「そっちも話着いた? じゃ、改めてよろしくね老師!」
「それはいいんだけどよ、デスゲームになっちまったわけだがどうするんだ? この状況で縛りプレイを続けるのはどうかと思うんだが」
「縛りプレイってよく知らんがこの状況でやるもんじゃなさそうってのは予想できるぞ!」
そういえば、と思ってクロと顔を見合わせる。確かに僕らは特攻じみたプレイをしてる人たちを除けば僕の死んでる回数ってかなり多いだろうね。そう考えると今からでも堅実なスタイルに改めたほうが良いのかもしれないけど……
「そもそも呪いの装備を外す手段も目立って有用なアクティブスキルの取得方法もないしねえ」
「いや、やろうと思えばまだまだどうにでもなると思うんだがな? まあ出来たとしてもお前のことだしやらないか」
「その通りだよ! デスゲームになったぐらいで挫折してたら全世界80億のゲーマーのみんなに顔向けできないからね!」
クロと老師が「全世界の人間が全員ゲーマーかよ」みたいなことを言ってるけど知ったことじゃない。大事なのは心意気だからね!
こうして、前途多難な僕達のデスゲームが始まった。
というかそんなことはどうでもいいから早く装備の性能を試したいんだけどなあ……
ううむ……
微妙に引っ張りかたが甘い気がする……
この話と前の話はまだクヲリティーあげる余地があるのが自分でもわかるというか……
続きを気長に待っていただければ幸いです。
そして感想0件のまま第一部完走!!(ダジャレ)




