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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第一部 VRMMO編
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縛り1,強スキル取得禁止

三話目まではちょっと速いテンポで投稿します。

そのあとは……

 人生で最も長く感じるような日々が過ぎ、迎えた土曜日。この日のために特に必要もないが部屋をきれいに掃除し、パソコンの周辺機器を刷新し、不要なアプリをアンインストールして処理速度も十二分であることを確認したし、肝心のバーチャルシステムのハードも、アプリデータとセットになっている最新のものがもう手元に来ている。

 準備は万端、あとはサービス開始の十二時を待つだけだ。


ピリリリリ♪ピリリリリ♪

『もしもし~?』

『おっす、そっちはもう準備できたか?』

『ばっちりだよ、昼ごはんも早めに済ませたしね』

『そうか、じゃあこのまま四時間コース?』

『そのつもりだけど、何か不都合でもあるの?』

『いや、まったくない』


 『AWO』の連続ログイン時間は四時間が上限で、それを越えようとすると強制的にログアウトされるのだ。これはVRゲームとしてもそれなりに短いほうなのだが、VRシステムを利用した体感時間の加速が従来のものが三倍や四倍程度なのに対して『AWO』は十二倍という驚異のスペックを誇るので、感覚的にはまるまる二日遊びとおすことが出来るのだ。


『それじゃそろそろログインの準備するよ。キャラメイクにこだわる予定ってある?』

『俺は多少いじろうかとは思っているが、体格をあんまりいじるとギャップがしんどそうだし、外見を変えすぎると一目見て俺ってわかんないリスクもあるし時間はかけないつもりだ』

『りょうかい~。そしたら待ち合わせ場所も変更なしでいいよね?』

『おう、じゃ、なるべく十二時きっかりにログインしような。そこの時間差は十二倍になるわけだし』

 それを最後に通話が途切れた。時計を見ると十一時五十五分を指している。ちょうどいい塩梅だ。


 僕は長時間座っていても疲れないちょっとお高い椅子に座ると、VRゲーム用のヘッドギアをかぶり、いつでもログインできるようにした。この時点で残り時間は一分と少し。

「ふん♪ふんふん♪ふ~ふん♪」

 思わず鼻歌が漏れる。もしこれで部屋に家族の誰かが入ってきたら恥ずか死するな~とか思いつつ視界の隅に移る時刻表示を眺める。


残り十秒

「ぽちっとな♪」


 ログインするとVRシステムが起動して体感時間が加速する際の違和感と同時に、目の前に鮮やかなタイトルロゴが浮かび上がった。

「さすが話題作、グラフィックもきれーだなあ」

 この時点では僕の体はVRで表現されていないので今の呟きは空中から出て空中に消えた。画面の真ん中のゲームスタートと書かれているボタンをマウスカーソルを動かしてクリックする。


「新規キャラクター作成~♪」


 ノリノリで利用規約とかを適当にサクサク処理してキャラメイクの画面に移る。すると、今まで二次元的だった風景が三次元的になり、僕の意識があるあたりに人間の体の様なものができる。

「ここから先はカーソルじゃなく手を使うんだったかな?」

 今ひとつ特徴のない自分の体を動かしつつ確認してみた。うん、問題なく動く。


『現実世界の外見データをベースに使用しますか? はい・いいえ』


 「はい」を右手でクリックすると、目の前の鏡に見知った自分の姿が映し出された。

「ううん、どうしよう。あんまり変えるのはめんどうだけど、適当に変えるとバランスが崩れそうでやだしな」

と、一人ごちたところで、鏡の端っこに自動調整というボタンを見つけた。

「やった、これでかつる!」


 自動調整とやり直しのどちらか一方は有効だろうという見通しのもとに、外見を変えていく。といっても顔のパーツを変えたりするわけではなく、鏡に書かれている身長などの数字を変えるだけに留めた。

 身長を少し高く、足のサイズはちょっとだけ小さく。髪の毛はサンプルの上方から今よりちょっと短いものをチョイスして、胸は……悩んだ末にちょっとだけ大きくした。


「そして仕上げに自動調整っと」

 自動調整をすると身長の数値をいじったことで変化していた首の長さや顔の輪郭が違和感がないように調整された。ここまでは完璧だ。鏡の右上のキャラクター決定をタッチすると外見調整用の表示が消えて、新しく文字が表示された。


『キャラクターネームを入力してください。______(重複確認)』


 名前は既にいくつか候補を決めてあるので、そのうちのリアルネームをもじったものを空欄に入力して重複がないか確認する。幸い、キャラメイクをサクサク済ませたせいか、センスの問題かは知らないが重複もしなかった。

 これでキャラクター自体は完成したことになるが、ここらからが本番と言っても過言ではない。


 ステータス割振りと初期スキルの設定だ。

 まずはステータス。最新鋭のゲームだけあって、基礎ステータスが現実にある程度準拠しているらしい。

 平均的な人は各ステータス6程度になるらしいけど、果たして僕はどんな感じだろう?


NAME:ユーレイ

ステータスポイント  残り10


VIT(体力)    5

STR(筋力)    6

DEX(器用さ)   7

AGI(素早さ)   8

INT(賢さ)    9

MND(精神)    7

LUK(運気)    8


 おお、結構高い。というか高い。wikiだとLUKは他のステータスが低い人の総合値を一般レベルにするための調整用ステータスだっていう説が濃厚だったけどそれも高いのはなんでなんだろう?

 いずれにしても実際にはステータスポイントの割り振りがあるから大した差にはならなそうなものだけど、きっと最新技術だけあって試験的なものも多いんだろうなあ。

 ステータスは当初の方針通りVITとSTRに振り分けDEXとINTにも少しだけ振った。縛りの内容的にAGIとか高くても全くあてにならない匂いがプンプンしているからだけど、まあそれを抜きにしても妥当だと思う。


 そして!

 最後に選択するのはスキルだ、目の前にずらっと並ぶ選択可能なスキルの中から、あらかじめ考えていたものを選んでいくだけといえばそれだけだが、この内容を考えるのに費やした時間はかなり果てしない。

 片手剣マスタリや火魔法初級などといった基本的なものはほとんどスルーすることになったが、特に後悔はしていない。

 ものの数分で、初期スキル枠五つがすべて埋まった。


【斬撃】

【汎用魔法初級】

【根性】

【隠密】

【菓子生産】


「何度見ても冴えないなあ」

 縛りの内容的に自分で武器を選べなさそうなんだけどそれが一番の問題だった。武器マスタリや武器に対応したアクティブスキルを使える系統のスキルが役に立たないのだ。

 ざっとスキルの説明をすると


【斬撃】:斬る系統の武器で使えるアクティブスキルをおぼえるスキル。

 これは【片手剣の技】や【剣技】などといったスキルよりも対応する武器の種類が多い代わりに性能が低いアクティブ系のスキル。


【汎用魔法初級】:さまざまな初球魔法を使えるようになるスキル。

 属性がなくて攻撃力も低い代わりに便利な小技も覚えるし弱点属性もないのが強み。


【根性】:相手の攻撃をHP1で耐える。

 事故死回避用。これがないとやってられない。


【隠密】:気配を消す系統のアクティブスキルが使えるようになるスキル。

 保険と不意打ちの利便性もあるし損はしないと思い取得。このあたりから適当臭が漂い始めている。


【菓子生産】:お菓子を作ることのできるスキル。

 どうしてもしっくりくるのがなかったので生産系をチョイス。料理のスキルより作れるものの種類が少ない代わりに性能が高いので器用強化がなくてもいけそう。武器系と違って生産系は汎用型が人気そうなんだよね。


 スキルを確定すると、最後にキャラクターの前身図と各ステータスが表示され、最終確認が表示された。

 ざっと確認して『はい』をクリック。


 世界が開けた。

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