縛り18,実名プレイ禁止
またやっちまったよサブタイつけ忘れ……orz
そして誰も指摘してくれないという……(11月7日修正)
狗神の牙
ATK 48 MATK 27 必要STR 7 必要MND 8
耐久度 100/100
説明:餓えた獣の怨念がこもったナイフ。其の刃は獲物の喉笛を食い千切る。
効果:『呪い』
急所攻撃時即死(極微)
うわぁ……。
バークさんの長話の間に確認したナイフのスペックがこれなんだけど、なんていうか、これは本当にひどいと思う。攻撃力はNPCの店で買える大剣や長剣に匹敵する、とまではさすがに言わないけど片手剣やメイスなんかと比べても全然遜色ないし、魔法攻撃力に至ってはそれこそクロが使ってるみたいなごっつい打撃武器か、魔法に特化させて加工した武器でもなきゃありえないような数字だし。
「これの材料ってクロが集めたんだよね、いったい何の素材を使ったらこんなものができるの?」
「ふむ、それは俺も気になっていたところだな。一体どこのモンスターの素材だったんだあれは?」
「あ~、あれなバークさんに渡したのは死霊の森に普通にポップするモブのドロップ品だよ。といってもユーレイが手に入れたのはもっと役に立たなさそうな素材だったから多少レアなドロップなのかもしれねーけどな。残りの素材は普通に鉄とグレイウルフの素材だよ、現状手に入る素材ってそんなところで限界だしな」
「へえ~。……抜いてみてもいい?」
「おいおい、いくらなんでも初日に突っ込むような場所じゃないだろう。っと、気をつけろよ? うっかり装備されちまったら呪いの装備の特性上取り返しがつかんからな」
バークさんの忠告を聞き流しつつ柄を握らないようにして鞘を外すと、その中から現れたのは、光沢の少ない灰色にくすんだ刀身。一体どんな鍛造方法で作ったのか知らないけど、日本刀を髣髴とさせる綺麗な乱れ刃模様までついてて、いかにもよく斬れそう。
「おおー、これはなかなか男心をくすぐる逸品だね!」
「いやお前女だろ」
「うるさいなあ、そういう細かいところを気にするからクロはだめなんだよ。で、こんなにいいものホントに受け取っていいの?」
「どんなにいいナイフでも呪いの装備なんてそんなに大した価値はつかねえ。代金も素材ももう受け取ってるしな、せいぜい大事に扱ってくれ。俺はもう寝に行かせてもらう」
「徹夜なんてさせちまってすいません。ありがとうございました」
謝るクロに軽く手を上げて返すとバークさんはそのまま立ち去ってしまった。露店のものを全部放置してるけどたぶんNPCを雇って店番をさせる算段はつけてあるんだろうね。
「ログイン初日にいきなり徹夜の武器生産なんて依頼したことを追及するのは置いておいて、僕らも狩りに行こっか」
「いや、お前も人のこと言えた義理じゃないだろ。ってか今何時だ?」
「ええと、七時二十分……って、もうこんな時間じゃん! 急がないと狩りの時間がなくなっちゃう!」
待ち合わせ場所まで走って行こうとしたら二十メートルも走らないうちに息がすっかり上がっちゃった。呪いの防具のことすっかり忘れてたよ、平常心、平常心。
待ち合わせ場所に行くとなんとなくだけど周りのプレイヤーがそわそわしてる感じがした。ちょうど他の人たちも狩りに出る時間みたいで結構な人数のプレイヤーがいるんだけど、みんなして街の外に出るのをためらっているというか、門のあたりに近づくのをためらってるような印象を受けた。
まあ街中でうだうだしてても得るところは少ないしきっとそのうち行くんだろうけど、ちょっとの間雑談でそこに近づくのを先延ばしにしてる感じかな?
で、いったい何があるのか見てみたら、門の真ん前の邪魔くさい位置に陣取っているのはばっちり見覚えのある腰のまがったご老体。
「おい、ユーレイ!?」
いきなり走り出した僕に対して叫ぶクロを鮮やかに無視して、スピードを上げ、三段跳びの要領で勢いよく踏み切り、ついでとばかりに空中で一回半のひねりを入れて渾身の飛び蹴りを放った。
「ちぇすとぉ!」
「おわぁ!?」
「おっとっと」
放ったんだけど、直前で気づかれていなされてあえなく失敗。しかも避けるんじゃなくてガードを挟んでいなされたせいで受け身もろくに取れなくって着地で痛い思いをしたし……
「大丈夫か!? ……エフン、大丈夫かのう?」
「いいからっ! こんなところにその外見で突っ立ってたら邪魔になるでしょ! さっさと移動するよ!」
素早く立ち上がっておにいさんの腕を引っ張って門の前から立ち退かせる。周りの人たちは安心して通れるようになってほっとしたというよりはいきなり飛び蹴りを放ったことに対して驚いたような感じだったけどまあ気にしなくていいよね。
「という訳でこちらのおにーさんが今日パーティー組んでもらう予定の人だよクロ。おにーさん、これが今朝言ってたクロね、今は訳あって鎧つけてないけど肉盾としては結構優秀だと思うよ」
「おにー……さん……? あー、ぶしつけですいません。クロです、今日はよろしくお願いします」
「あー、ユーレイちゃんや、老師と呼んでくれんかのう…… そうじゃなくてもせめておじいちゃんぐらいで頼めんかのう……」
「ん~、老師って呼ぶ気にはならないなあ。というか正直おじいちゃんが僕のことを師匠って呼ぶべきじゃないかな!」
「とりあえずプレイヤーネーム教えてもらえますか? フレンド申請送るんで」
「うむ、儂の名は無添加老師(仮)という」
あ、クロが反応に困ってる。あのねおにーさん、かっこかりとかつけたところでこういうオンラインゲームではあとからプレイヤーネームは変えられないんだよ?
というか実は名前の元ネタもわからないんだよね、なんで無添加なんだろう。
「ええと、それで今日はどんなふうに狩りをしたいとか、そういう計画みたいなのってあるんすか? 欲しい素材とか」
「せっかくぱーちーでやるんじゃから一人じゃきつい場所で効率よくれべりんぐがしたいところじゃのう。とはいえこれから狩りに行くのにお互いのスタイルもわかっとらんのじゃ不安でしょうがないからのう。狩りの前に手合わせ願えんかのう?」
「なるほど! 確かにそれなら短時間でできるしね! 僕もやりたい!」
「マジか。まあ確かに相手のスタイル知って連携組めればかなりの高レベル帯にでもツッコめるから異存はねえっすけどね」
「ユーレイちゃんのスタイルは儂もクロ君も知っとるからまた今度じゃのう。狩りの時間がなくなっては本末転倒じゃしな。場所は…… うむ、ここで良いな」
確かに街中でも双方の合意があればPVPは行える仕様らしいけど流石にこんな往来でやるのはどうかと思うかな。周りの人に迷惑だし、何より不特定多数に手の内を晒しちゃったら将来的にPVPの大会とかあった時にすごく困ると思うんだよね。
クロも流石に往来のど真ん中でどつき合う気にはならなかったようで路地裏のちょっと開けたところに移動するようさりげなく促してから、勝負を受ける旨を口にした。
で、僕はというと昨日よりも若干数が増えた道端の露店の一つでジュースと豚串を購入して観戦準備を整えていた。僕が戦えないのは残念だけどこのゲームで初めて目にするPVPだからね、思い切り楽しませてもらうよ!
次回予告:クロの老人虐待に周囲のプレイヤーから非難轟々(予定は未定)




