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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第一部 VRMMO編
17/162

縛り16,一時間に一回換気すること

定期更新一か月続いたよ!!

そしてこの話から非公開でアップしてた分の続きになります。

 僕が目を覚ますと最初に目に入ったのは、見慣れない天井だった。横を見れば木の格子がはまった窓から朝日が差し込んでいる。

 と、そこまでぼんやりと眺めたところで本格的に意識が覚醒した。


「そっか、ここゲームの中なんだっけ。日が出てるってことはもう六時過ぎたんだ」


 ゲーム内の時間を確認すると午前六時十分だった。こうしちゃいられないね、今日のぶんのログイン時間はもう四時間も残っていないから、ヘタすると新しい装備を試す間もなくログアウトすることになっちゃうよ。

 急いでフレンドコールを送る、あて先はそれぞれクロとスミスさん。


『朝だよ! 早く起きないと鼻の穴に指突っ込んで【マナバレット】叩き込むよ?』

『スミスさんおはよー! 装備もう出来上がった? とりあえず今からクロを起こしてそっちに行くね!』


 ベッドから降りて、部屋ごとに備えられている今ひとつファンタジー感の薄い洗面所で顔を洗い、パジャマから着替えようと思ったところでパジャマも何も今着ている一着以外に服を持って無いことに気づいて落ち込んだ。

 『AWO』でも防具の汚れなんかはさすがに再現されてないからシステム的には着替えないことに問題はないけど、なんていうか気分的にはやっぱり着替えたい。いっそ防具なしのインナーだけで寝ればよかったかな、どうせ誰も部屋に入ってこないし。

 呪いの装備を装備しちゃったら着替えられないんだよね。場合によっては毎日お金払って呪い解くとか? それも面倒だし、オシャレは断念かなあ……

 そういう目線で見るとログイン時間が体感二日っていうのはべらぼうに長いよね。とかつらつらと考えていたらスミスさんから返信が来た、これでクロは罰ゲーム決定だね。


『装備、デキタ。店、待ツ』

『……なんで片言なのスミスさーん?』


 返事がない、ただのしかばねのようだ。じゃなくって、なんか真剣に大変なことになってそうだから早いところクロをたたき起こして向かったほうがいいかな。


『クロー、早く起きなよー』

『ああ、今起きた。どうやら睡眠が十分取れてればフレンドコールとかの外部刺激で割と簡単に目が覚めるみたいだな。寝ぼけてる感じも全くねえしな』

『なるほどね。まあそういう訳だから急いでスミスさんのところに行くよ! 昨日と同じ宿屋の正面に集合で!』

『あいよ』


 宿屋の部屋を出て女将さんのNPCに軽く会釈して店の前に出るとクロがすでに待っていた。夜の間によっぽど頑張ったのか、クロの装備の手袋がレザーガントレットとおぼしきものに変更され、パッと見ではわからないけどインナーも初期装備のシャツからちょっと良さげな感じのものに変えられていた。

 正直ちょっぴりうらやましい。装備をちょっとずつよくしていくのってRPGの醍醐味だしね。


「とりあえずスミスさんの部屋に向かうよ」

「おう、もう完成してるのか?」

「ん~、たぶん? まあ行ってみればわかるでしょ。それよりクロは昨日は何してたの? 僕は結局一人でフラフラと細かいクエストやってから十時前には宿屋で寝ちゃったからさ、とくにスキル習得したりレアなアイテム入手したりできなかったんだよね」

「まあこのゲームレベル十ごとにスキル枠が増えるにもかかわらず、序盤に修得できるスキルが条件厳しい割に内容しょぼくて余ったスキル枠がなかなか活用できないらしいしな。まあ俺はレベル10になって増えた分の枠はもう埋めたけどな」

「あ~、確かこの町で受けれるクエストで手に入るアクティブスキルって【剣の技初級】とかそのあたりの微妙に伸びしろないやつばっかりなんだっけ、しかもそれすらクエストの発生条件がいまいちはっきりしてないとか。で、クロは何のスキルを習得したの?」

「そんな期待に満ちた目で見んじゃねえよ、何の変哲もねえ【ハンマーマスタリ】だっつーの。マスタリ系スキルは一応βでも取得条件明らかになってたし、割と簡単に取得できると思ったから敢えて初期スキルでは取らなかったんだよ」


 まあログイン一日目で採れるとは思ってなかったが。なんてクロは呟いてるけど、自分よりもレベルがよっぽど高い相手とあれだけ殴り合えば習得が速くなるのは当然のような気もするね。

 それにしてもスキルかあ、今後もどんどんレベルは上がるわけだし、今のうちに取得しておいたほうがいいのかな? でも今の時点で取れるスキルって基本使い道ないらしいし……


「う~ん……」

「何うなってんだよ、着いたぞ。お前が先入ってくれないと入りづれえんだよ」

「あれ? 結構近かったんだね。お邪魔しまーす」


 例によって鍵のかかっていないドアを開けて部屋に入ろうとした僕は、思わずそこで立ち止まってしまった。


「おい、どうしたんだ? っと、これは……」

「うわぁ、ここまでの事態は僕もさすがに予想外だったよ」


 部屋の中はどう考えても本来より薄暗いうえに、何やらどす黒い空気が充満していて、現実世界でこんなところに住んでいたら三日で病気になってしまいそうだった。

 というかゲームだったとしてもこんなところにいたら心が病みそうだった。


「とにかく早いところスミスさんを探そっか、というか大丈夫かな…… 僕の装備」

「心配するのはそっちかよ……」


 と言ったものの実際には探すまでもなくスミスさんは見つかった。というかあまりに空気と一体化してて気づかなかっただけで目の前のいすに座ってた。

 恐る恐る近づいて確認してみるとちゃんと息はしてたから、思い切って声をかけてみる。


「スミスさーん、装備受け取りに来たよー」

「…………」

「スミスさーん! 目を覚ましてー!」


 そんな感じで声をかけ続けたところ、最初は全く焦点の合っていなかった眼にちょっとだけ生気が宿り、たった今僕たちに気づいたという体で口を開いた。


「ああ、よく来たね。今トレードを申請するよ、と言いたいところだけどその前にちょっと出来を確認させてもらっていいかな。実は余った木くずを使って特殊効果を付与しようとした辺りから記憶が曖昧でね」


 スミスさんは呪いの装備の作成をなめていたよなんて言って笑ってるけど正直全然笑えないよ。というか作った人がここまで憔悴しきるような装備をこれからずっと装備することになるんだよね。あはは、ホントに笑えない。


「せっかくだし実体化させてチェックしようよ! なんだかんだ言って僕もどんなできばえか早く見てみたいしね」

「ああ、じゃあそうしようか」

「というかいろいろと大丈夫なのか?」

「いや、すごく疲れる作業だったけど特に問題はなかったよ。あとのことは装備してみないとわからないけどね」


 クロの疑問に答えながらスミスさんがメニューを操作して取り出したのは真っ黒なポロシャツとハーフパンツに同じく真っ黒のスニーカー。黒づくめっていう点にだけ目をつぶればどれもシンプルでよさげなデザインなんだけど、見るからに禍々しい感じが漂ってて、普通の運動着だと主張するのは若干無理がありそうな感じだった。


「おおー! 外見は思ってたよりずっといいね!」

「素材の特性で各装備品に呪いがかかってる。そしてシャツとズボンにはそれに加えて『呪いの木屑』でエンチャントを掛けて性能をわずかだが底上げしたからもしかしたら呪いの方にも影響があるかもしれない。性能の方は三つ合わせてDEF90でMDEF100ってところかな」

「へえ、思った以上に高性能じゃん。スミスさんっていい腕してんのな」

「早速着けてみてもいい?」

「ああ、確認したけどエンチャントもちゃんと出来てたし、呪いの装備に問題がないっていうのも変な話だけど問題はなかったよ。ただ一回装備してしまったら解呪できるところに行かない限り外せないし、呪いのリスクも結構大きいからうかつに装備しないほうがいいかもしれない」

「ああー、あれだ。言うだけ無駄だから言わないほうが良いっすよ?」

「その通りだよっ! という訳で今から着替えるからこっち見ないでよ? というか出て行ってくれるかな!」

「それはすまない。着替えが終わったらドアを開けてくれるかい?」

「えっ、いやいや一回持ち物に入れてから装備変更すればそれで済むじゃねえか。なんでわざわざ……」

「うるさいよ! さっさと出てけ!」


 ドアからクロを蹴りだそうとしたけど全身がっちり固めてるクロを吹っ飛ばすにはSTRが足りなくて、全体重を乗せて蹴ったのにクロは少しよろめいただけだった。

 とりあえずそのままドアをぶつけて無理矢理追い出した。

 一人になったところで改めて手元の装備を見る。

 黒い。

 ちょっと尻込みしそうになったけどデザイン自体は嫌いじゃないから迷いを振り切って着替え始める。ダッサイシャツとズボンを脱いで、デフォルト装備の、これまた色気もへったくれもないトップスとショーツだけの姿になると、満を持して新しい服を着始めた。

 ズボンを穿いて、ポロシャツに頭を通してから右腕と左腕も通すと、特にどこかに引っかかったりすることもなくストンと伸びたので、ズボンの腰の部分のひもを調整してずり落ちないようにして、最後の仕上げにスニーカーを履いて靴紐を結んだ。この間約一分、我ながらもうちょっと着替えに時間かけたほうが良いと思わなくもないけど、軽装だから仕方ないよね。


「もう入ってもいいよー」


 声をかけてみたけど入ってこないので扉を開けると、何やら会話していたらしい二人がこちらに気づいて声をかけてきた。


「ちゃんと寸法は合ってるみたいだね。金属鎧の類とちがって動きにくいってことは少ないと思うけど、自動調整なしで作成したからやっぱり多少不安だったけど問題なさそうで安心したよ」

「おお、結構似合ってんじゃねえか。というか実はそれ普段着まんまなんじゃね?」

「さすがにそこまでズボラじゃないよっ! 部活の時はもっとちゃんとした動き易い服装してるし! 普段は高校の制服だし!」

「堂々と言い切れるほどその服装のラインナップもオシャレではないと思うんだけどね」

「というかスペックとかまだ俺見てないけどどうなんだ? 今普通に会話してるってことは戦闘中以外は呪いの影響はないってことか?」


 クロがそんな質問をしてきたので、僕は満面の笑顔でこう答えた。


「今にも吐きそうなぐらい気分悪いよっ! ゲーム内だから吐かないけどねっ!」

着替えシーンに色気もへったくれもないのは作者の技量の問題じゃなくて、デフォルトのインナーの問題。でもなくてユーレイちゃん本人の……

おや、誰か来たようだ。

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