縛り157,耐性貫通禁止
おかしい十二月は更新楽勝なはずだったのに…… 慶事やら弔事やらで忙しくしてたらもうクリスマスですよ。
というわけでメリークリスマス! おそらく年内最後の更新です!
「先ほどの攻撃で減った分は全部回復されてしまっていますね~」
「格上のHPドレイン持ちとか勘弁してほしいんですが。これ回復された分ヘイト減少したりは?」
「それを確かめに来てるんですよ~? 挑発スキルの影響も知りたいので試してもらえますか~?」
「死ねと!?」
うん、まあそういうことだね!
分体飛ばす攻撃も含めて全部の攻撃にドレイン性能がついてるから、魔法防御力が低かったり火力が足りなかったりすると全然削り切れずにじり貧になるタイプ! 一番ダメージが大きくなりやすい接触攻撃でも格下の僕を削り切れないくらいの火力だから、ある程度の機動力か怯ませる手段が有れば逃げることはできるんだけどね。
前に一人で来た時? 【隠密】スキルかけた上で、迷子覚悟で【恐怖耐性】切って全力で逃げたよ!
「属性耐性」
「火が微減、光が等倍以上、精神属性が弱点で無属性が等倍、その他が半減以下だと思います~」
「チッ」
とりあえず援護が望めそうなのでビビりすぎないように、ワープを誘発しないように、あえて正面から向き合って…… 逃げてた時はわからなかったけどこの噛みつき攻撃見た目がグロい!
キングカメさんが舌打ちしたのは相性が悪いからかな? 光属性が通るのは予想できてたしレモンさんのが火力出せるのかも。
「とりあえず私も動きますね。〇549さんもさぼらないでください~」
「えっ、ちょっ」
両手にそれぞれ長剣と短剣を装備したカチ割り赤さんがモンスターの側面から切りかかる。
「【スラスト】【ダブルスラッシュ】」
「ヴヴヴ……」
「これは、ダメですね~」
カチ割り赤さんのスキル構成が気になる……! 二刀流は逆手に持ってる武器ではスキルが使えないから火力が出しにくいっていう話じゃなかったっけ?
「手ごたえがありませんし、ターゲットにされてなくても反撃はあるようです~」
「いよいよやることがありませんね」
「何を言ってるんですか貴方は。まさか精神属性のスキルに心当たりがないなんて言いませんよね~」
カチ割り赤さんと〇549さんの会話が気になるけどちょっと真正面受け持ってるとそっちに加わる余裕はないかな!?
精神属性自体初耳なんだけど!
「『荒れ狂う焔よ、渦となり怨敵を焦がせ』【ファイアーボール】!」
明らかに【ファイアーボール】の詠唱じゃなくない!?
詠唱改変自体は試したことあるけど、無詠唱で手数稼ぐ方が好みだったし、改変すると要求INT上がるしで僕に向いた技術じゃなかったんだよね。
あ、でも当て方ミスってるね。着弾地点から炎の渦が立ち上って消えたけど、横っ腹にあてたから渦部分は掠るようにしか当たってない。
「……チッ」
舌打ちが多いのは寝不足のせいか、無口ロールのせいか……
他の人の攻撃で動きが止まるのに合わせて杖を突き込んでヘイトを稼ぎながら、敵の攻撃は慎重すぎるくらい慎重にさばいていく。
「これで死んだら化けて出ますからね! 【タウント】!」
「ここで化けて出られてもモンスターと区別がつきませんよ~?」
挑発スキル!? このタイミングで!?
水面に石でも投げ込んだみたいに瞬間的にえぐれて周囲に波紋が広がるモンスターの体表。精神属性弱点ってそういうことかな?
「ぎゃー! こっち来た!?」
「ダメージが通るだけじゃなく、挑発効果もしっかり入っちゃうみたいですね~」
「待って!? 物理攻撃通らない相手への手段【挑発】系のスキルしかないんだけど!?」
「そもそも回避しないと回復されちゃいますから殴り合えませんしそれで大丈夫でしょう~?」
「ひょわー!」
殴り合えないことが分かっちゃった〇549さんが右手の小盾を構えることもせずに逃走を選んでしまう。
「いや、その逃げ方はダメだって!? 『魔力よ――」
「! 『水よ、吹き飛ばせ』【アクアボール】!」
暴発のリスクを犯して杖を構えた甲斐があったね。
僕の【マナバレット】は不発に終わったけど、杖の方向を読んだキングカメさんが僕の狙った位置――バック走で逃げる〇549さんの背後に【アクアボール】を打ち込んでくれた。
「ヴェア!?」
「あびゃあ!?」
ワープで背後に現れたモンスターに【アクアボール】が直撃。〇549さんがダメージソースになれるならなおさらここで僕がヘイトを奪い返さないとなんだけど、距離が遠い。
「仕方ありません、『シャッフル』を仕掛けます」
「了解」
奇襲を受けそうになってバランスを崩してる〇549さんにカチ割り赤さんと、一瞬遅れて七徹の人が駆け寄っていき、転びかけたのを支えたと思いきやフェイントを織り交ぜた激しいステップ。
そこから左右に分かれた二人の頬には『3』の数字。
「ええ…… 意味あるのそれ……?」
真ん中に取り残されてたのが〇549さん…… じゃない?
「ヴェ……?」
モンスターも困惑したように動きを止めて、すぐに再起動して左の人に向けて魔法のタメを作る。
「ダメじゃないですかぁー!」
「視覚以外」
一発芸なら満点だったね。でもその一瞬で僕の腹は決まったからダメじゃないよ!
「投げ返してー!」
叫びながら杖をぶん投げる。待って、モンスターの向こうにいるのカチ割り赤さんで合ってるよね? 七徹の人がこれを掴んじゃわないように投げ返せるかはちょっと不安だよ!?
というか杖を投げつけただけでヘイト稼ぎ切れるかな…… せめてスキル分上乗せできれば…… 【変装】でヘイト誤魔化せるならそのくらいできない?
恐怖状態に晒されすぎて走馬灯を見る癖でもついちゃったのか、自分でもびっくりするほどスローに飛んでいく杖を見ながら、杖と繋がってる呪いの力の感覚を手繰り寄せていく。
「【スラッシュアロー】!」
「ヴェアアア!?」
相手が実体がないのが幸いして、杖が完全に体内にある状況からスキルで飛距離を伸ばした斬撃エフェクトが体内から外側に向けて全弾命中! まあ物理系のスキルだし見た目ほどのダメージはなさそうだけどねー。
「ええ!? なんですかそれ!?」
「なんかできた! それより装備しないでそれ!」
「両手ふさがってるんですけど~?」
文句を言いながらも交差させた両手の剣で一度弾きあげて、回し蹴りでこちらに向けて飛ばそうとしてくれる。
寝不足での棒シュートは無理があったみたいでだいぶヘロヘロな軌道だけどまああらぬ方に飛んでいかなかったからオッケー!
ラグビーボールばりのバウンドで転がる杖を拾い上げて、とにかくヘイトを少しでも稼ぐために追撃!
「アッパースラッ…… あれ? クールタイムバグった!?」
「改変」
「ああ、スキルは改変でコストが変動するからそれでは~? スラスト! 再現できません~」
「割りと困るんだけど!?」
ただでさえ攻撃の手札が少ないのに、メインの手段が三分も封印とかシャレにならないんだけど!
あと回収の当てがないのに投げちゃっていい武器なのそれ……?
モーション自由度高いスキルしか使ってなかった弊害がこんなところに!
「なにはともあれ!」
無いよりはあった方が良いスキルだけどまあ無いなら通常攻撃でその分殴れば無問題!
ヘイト奪取成功!
「このまま僕がタンクで良いのかな?」
「是非! それで! 回避盾は無理!」
「本職タンクが情けないですよ~?」
「ノーミスじゃないと回復される状況じゃなかったらやるけど! 徹夜だし!」
「三」
「さん……? もしかして今徹夜数マウント取られた!?」
「ふっ」
〇549さんはにぎやかだね……
本職じゃないけどタンクがいて、火力が揃ってて、ヒーラーもいる。タンクの防御力が十分で相手に回復手段を与えなければ勝てなきゃダメな布陣だね!
回復手段あるんだけど!
「ところで、私は何をしましょうか~?」
〇549さんが良い感じにダメージ出して忘れてたけど物理効かない相手に近接型のプレイヤーって何をするべきなんだろうね……?
二刀流逆手武器の仕様、本編ですぐに触れる保証がないというか触れそうにないのでちろっと。
武器のスキルを使用するためには、対応している武器を正しく装備している必要があります。
でも武器のジャンルに対して実際の武器の種類は刃渡りや厚み、重量や形状など無数にあるし、持ち方や扱い方にも流派などの細かい差が存在しているので、実際には効果や効率が落ちるけど使えるラインがあります。
『メインの武器を利き手に持った状態で片手で扱う』のが正しい扱い方になる武器なんてほとんどないのが逆手ではスキル使用不可という誤解に繋がりました。両手に同じ武器を装備していると利き手で発動させずに逆手で発動するのが難しいので軽量武器二本持ちでもすごく頑張らないと使えません。
【斬撃】【打撃】【刺突】なんかの汎用スキルはその辺の条件がガッバガバなので、逆手だろうが何だろうが発動しますし、何ならブーツに括り付けて振り回しても発動します。
投げてしまうと基本的に装備状態が解除されるので発動できません。鎖でもくっつけとけば発動難易度は下がります。鎖鎌最強!




