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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第三部 マイペース攻略準備編
157/162

縛り156,回収箱使用禁止

 長くなってきたので区切って投稿。

 モンスターのビジュアルがあれなので、グロテスクな偉業が苦手で想像力豊かな方は解像度を落としてご覧ください。

 レベル40オーバー。北以外の方角に一マップ進めば10前後レベルが変動するゲームバランスでは、初期レベルが一番高いところでも四マップ分移動しないと出没しない。つまりは拠点建設が進むまではよほど苦労しなければ辿り着けない領域と同じ程度のレベルを持つモンスター。

 当然、僕よりも。【恐怖】でまともに戦えなかったナンダゴンドさんと比べてすら断然高レベル。


 すごくこわい。


「え、なんですかあれ」

「マジにホラーなやつぅううううう!」


 頭が真っ白になりかけてて〇549さん達の会話には入れないけど、外見もまあ…… 不気味というかおどろおどろしいというか……

 ポケットなやつのガス状のやつと、ドラゴン倒すRPGのエビルな魂を足し合わせて死にゲーダークファンタジーのテイストでブラッシュアップしたような感じ? 不定形の塊のいろんなところから何の生き物か分からない顔や顔の一部だけが浮かんでは消えてを繰り返してて、全力でバック相する僕の視線の前では今まさに顔の中心に口がたくさん増えてるところ。


「ヴ……ヴ……ア゛!」


 それらを埋め尽くすようにボゴりと表面が盛り上がり、中心から散弾のようにこぶし大の攻撃魔法が放たれる。のを見届けることなくバック走をやめて全力退避。中距離制圧の散弾タイプとか射程内で避けきるの無理だから!!


「ヴゥ……?」


 屋台のヨーヨーを纏めて放り投げたような軌道で広がった魔法がヤツの口元に戻ると外したことを理解したのかこんどは舌のような器官がデロリと生え、ひくひくとまるで匂いを嗅ぐような動きを繰り返す。


 むり、ほんとこわい。


「これ……こうげ……らヘイトが……にとび……よね~?」

「ユー……ちゃんと……もして……さい!」


 むり!

 安全圏で次の動きに備えていると、ピクリと全身を震えさせたお化けの姿がすうっと薄れていく。諦めて消えてくれた? なんてわけはないんだよね。


 あえて体の主導権を手放すようにして、装備に身を任せる。嫌な予感を疑うこともせず地面に身を投げ出す。


「ヴァ……」


 僕の背後だった方から僕の心臓が有った位置に突き出される、でたらめに指が生えた2本の腕。瞬間移動なのか実体化を解除しての高速移動なのか、この装備じゃなかったら避けられなかったと確信できる攻撃。

 このモンスターのなにが一番怖いってさ、総合的な機動力が僕より上なんだよ! 障害物は当然のようにすり抜けるし伸び縮みするし挙句の果てにワープするし!


「ガチッ! ガチッ!」


 バック走で相手の挙動を見る余裕もなく、恐怖状態の補正を入れた全速超えの全力疾走でも振り切れず。装備の反応を頼りに体をひねるすぐ横で、伸びてきた口が嚙み合わされて大きな音を立てる。


 しんぞうにわるいからやめて。


「ヴヴヴ……」


 何か特殊な攻撃を仕掛けてくる前にちゃんとタメを作ってくれるのだけは情けが有るよね。

 ぶるぶると震えながら体表にコブを作り出していく。これ、本当はチャンスモーションなんだけど……

 攻撃の性質としては避けられないタイプのやつなんだよね……


「「「「ギチギチ……」」」」


 コブの一つ一つに入った裂け目からぎょろりと目玉が現れる。黒目がなかったり、逆に一るの眼球に複数瞳孔が有ったり、なんでこんなにビジュアルの害意高いの?

 目玉の数は九。それがぶちぶちと本体からちぎれて出来の悪い粘土細工のおたまじゃくしみたいな姿を取って複雑な軌道で僕に向かって飛んでくる。

 まあ目玉が有る時点でわかりやすいデザインだよね! 誘導攻撃だから躱すのでも防ぐのでもなく打ち落とせっていう!

 一個一個にHP設定されてるタイプだから発射と同時に範囲攻撃重ねてまとめて落とせば攻撃と防御が一度に済んじゃうよ! 杖の装備条件の問題で手持ちの範囲攻撃機能してないし、他の人に援護してもらうにはちゃんとヘイト取らなきゃなんだけど!


 たすけて。


「もういやあああああ!」


 泣いてないから! 叫びは装備のせいだから!

 とにかく杖を振り回して迎撃する。残念ながらゴブリン装備の恐怖感知はこっちが攻撃しようとしてるとまともに機能しない。一発当てれば動きを止められて、二発目を当てれば撃墜。……他の八つを躱しながら二連撃を当てる猶予なんてないってことに目をつぶれば楽勝だね!


「落ちてってばー!!


 とにかく一度のスイングで複数を巻き込むように、時に動きを止めて強引にそちらに逃れ、包囲されないように立ち回っても空を自在に飛ぶ全部を躱せるわけもなく。それでも二つ、三つと落として少しでも限界を遠ざける。それでも……

 何か粘着質で冷たいものが背中にくっつくような気持ち悪さと共に被弾1。

 一瞬の体のこわばりで、振った杖の軌道がぶれて腕に取りつかれて被弾2。


「気持ち悪いってー!」

「たいした……。あれ……パニッ……もたいしょ……かく」

「……まではじぜん……いたとおり……」


 五つ落としたところで、前後を挟まれしかも両方無傷。仕方なく目の前の方を滅多打ち。

 首筋に取りつかれて被弾3


「オン! オン!」


 ………………


「うご……止まり……たね~」

「じょう……いじょうで……かね」


 無茶苦茶なコース取りで三回ほど跳躍を繰り返して、ようやく思考する余裕が戻ってきた。というか思考が真っ白になってたのを自覚できた。

 うん、昔の装備の効果でおなじみの金縛りだね! 目玉を飛ばす攻撃の最中は他の攻撃は使ってこないんだけど、飛んでる目玉が無くなった時点で金縛りを仕掛けてくるタイプ。で、その間に取りついた目玉がダメージを与えてくるわけだね。

 攻撃を受けてるのに逃げられないどころか一切身動きが出来ない。事前にわかっててもめちゃくちゃこわい。


「あー、そういう仕組みですか~?」


 一度恐怖が振り切ったからか、周りの声も拾えるように。

 と言っても敵が動き出したらまた全力で逃げるんだけど……


「どういうことかさっぱりなんですが」

「あの飛ばしてたのも体の一部で、飛ばすときにHP消費して、回収すると回復ですかね~? 迎撃分のダメージが入るならあと一回か二回繰り返してもらえば援護会金でしょうか~」

「ああ、なるほど!」

「というか貴方もHP見るのにスキル使ってるはずですよね~?」

「後二回は無理! 精神的にもスタミナ的にも!」

「ヴァ……!」

「うひい!」


 会話しながらなるべく距離を取ってたんだけど、ワープは無理!

 避けきれなくて肩口に敵の腕が突き込まれる。恐怖に飲まれてないと今度は危機察知が鈍いし!


「【アッパースラッシュ】!」


 心臓には受けてないとはいえ接触を続けてたらHPがゴリゴリ減るのでとにかく一撃入れて怯ませ……られたら苦労しないってば!

 体温と一緒に大事なものが奪われていくような感覚に再び思考する余裕がなくなる。


「攻撃方法がいちいち気持ち悪いんだってばあ! はっ!?」


 自分の叫びで思考が戻ってきたけど、引きはがすのに何秒かかったの?

 HPの減少がより強い恐怖に繋がる。敵の動きを見なきゃいけないのに視線を向けたくない。


「【ファストヒール】」

「七徹の人!? ヘイトは!?」

「十分」

「これでダメなら撤退ですね。『光よ、癒せ』【ライトヒール】」


 どうやら引きはがすために、というよりは攻撃を受けてパニックになった結果杖を振り回してたみたい。それで与えたダメージが分体攻撃二回分くらいになったってことかな。

 まあ、確証はないんだけど。

 とにかく、援護が有るならようやく戦いが成立させられそうかな……

 予定ではスタンダードなレイスとかスペクターみたいな呼称のやつにしようと思ってたはずなんですが、なんででしょうね?

 能力面は中遠距離の魔法攻撃と、ドレインタッチで噛みつき以外は予定通りなので難易度的には変わってません。恐怖の状態異常への悪影響があるくらいです。

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