縛り151,セーフティーメモリ使用禁止
冬と正月のあれそれでメンタル落ちてました。
あとなんか今回妙に長いです。
【料理】スキルを習得した。
うん、前々から使える人がパーティーに一人くらいいても良いんじゃないかなっていう話にはなってたからね。
僕が習得することになった経緯はまあスミスさんにばっかり頼りきりになるのもよくないよねっていうのと、習得に前向きだったリンドウちゃんの非常に前衛的な品々をみんなで食べる度胸がなかったっていう。
「というわけで今日はそっち方向もう少し掘り下げてみようかなって」
「そっち方向~、ですか~?」
「うん、生産系スキル方向、もっというと生産系の特化スキル方向だね」
今日の同行者はコノカさん。
やることの場所と内容的にみんなと同行する意味が薄いから一人でやろうと思ってたところ、無理やり休みを取らされたコノカさんとばったり会って息抜きに連れ出した感じ。
「料理であれば~、素材の統一や~、調理方法でしたか~?」
「そうそう。肉料理とか揚げ物とか。僕のは初期スキルだけど【菓子生産】なんていうのもあるぐらいだから料理自体のテーマとかでもいいとは思うんだよね」
「なるほど~。それで~、わざわざ~、街の外に出てきた理由を~、聞いてもいいですか~?」
そう、今日の開催場所は宿屋のキッチンを借りているのでもなければ、貸しスペースの生産施設をあてにしたわけでもなく、街の隣接マップで最も敵のレベルが低い東側の平原だったり。
「じゃじゃ~ん、火打石~」
「おお~」
ぱちぱちと拍手してくれるコノカさん。気分よく火打ちがね、松ぼっくりっぽい木の実、乾燥した藁なんかを取り出していく。
【火属性魔法】も使えるコノカさんがいる時点で完全に無用の長物なんだけどね!
ちなみにあえてオーガニックなものを使ってるのはコンセプト的にそっちの方がそれっぽいと思ったから。樹脂とか木くずを加工して作った着火剤も町では普通に売ってるしMPを使うタイプのライター的なやつも普通に入手できるしなんならスミスさんが調理器具周りは結構作ってる。
それなのにあえてわざわざ焚火を起こしているかというと……
「なるほど~? 野外調理に~、特化した~、スキルですか~?」
「うん、あったら便利かなって」
「そうですね~」
というわけで一品め。生地の元になる粉――別に怪しい奴じゃなく、小麦っぽいやつとか、トウモロコシっぽい奴とかをブレンドしたもの――に水を加えて、耳たぶくらいの硬さになるまでこねる。で、この後しばらく寝かせなきゃなんだけど…… 今回の献立に今からそんなに下拵えするものってないんだよね。
「というわけで、三十分寝かせたものがこちらになります」
アイテムボックスって便利~!
寝かせたものがあるならなんで今作ったのって言われると困るよね。
コノカさんはそういう意地悪なことしないと信じてるよ!
「? もうすでに~、下拵えを~、しているのですか~?」
「全部じゃないしそもそも複雑な下拵えはしてないけどね。テンポが悪くなるし、とりあえず一通り作っちゃおうかなって」
意地悪とかじゃなく普通に疑問に思われるのは想定外かな!
仕方ないので下拵えを済ませた食材をアイテムボックスから出していく。
「お肉に~、お魚に~、こちらの葉っぱは~、なんですか~?」
「それは食材というよりは料理器具よりのやつかな。コノカさんって普段あんまり料理とかしない?」
「人並みには~、すると思いますけれど~、こういったものは~、あまり詳しくありません~」
「まあキャンプとかでするにしてももっと便利なものはいっぱいあるしね。アルミホイルの代わりに使ってみようと思って」
薄く伸ばした金属なら普通に用意できるけど、『においが食材に移らない・錆びて変質しない・使い捨てにできる価格で購入できる』まで求めるとそれなら金属にこだわる必要はないかなって。
「キャンプですか~? では~、こちらのお肉は~、バーベキューですか~?」
「まあ、バーベキューと言えばそうかな? コンロじゃないから網は使わないけど。コノカさんもやる?」
「私がやって~、失敗扱いになったりは~、しませんか~?」
「どうせいくつも作って成功したやつを使う予定だから材料は十分にあるし気にしないで大丈夫大丈夫」
「そういうことでしたら~」
「じゃあとりあえず食材を串に刺してくよー」
金属の串と木製の串が両方ある中で、コノカさんが手に取ったのは金属の串。僕は木製の串を取って、最初の食材、豚肉を串に刺していく。
「野菜は~、刺さなくて~、良いのですか~?」
「う~ん、刺してもいいんだけど、いろんな種類の食材に同時にしっかり火を通すのって大変そうじゃない?」
「なるほど~」
やり取りを終えて、ようやく遠慮がちに串に豚肉を刺していくコノカさん。
二人で作業すればあっという間に十本以上の豚串が出来上がった。
同じ要領で羊肉も。鶏肉も欲しかったけど街周辺で入手しようとすると値段が張るかダンジョン産の扱いづらい食材になるから今回は断念。
栄養バランスが気になってそうなコノカさんのために野菜とキノコも串刺し!
「次は~、何を作るんですか~」
「ちょっと火の面倒見るから待ってねー」
焚き木を足して、一度火を強くする。乾かしてるとはいえ木を火にくべると煙が出るから、ちょっと多めに入れておいて、煙が無くなってから調理に使うつもりで。
う~ん、キャンプは結構経験あるけど基本木炭だったから塩梅が分かんないね。
「まあいざとなればスキルの補正でどうにかなると信じよっと」
「不穏な発言が~、聞こえましたけど~?」
「大丈夫大丈夫! 次は主食を作るよ!」
「さっきこねていた~、これですね~?」
「そうそう、無発酵パン的な!」
「焚火で~、パンが~、焼けるんですか~?」
「そういうのもあるって聞いたからやってみようかなって! じゃん!」
そして使うのは木の棒! もはや串ですらないし何ならものによっては曲がったり枝分かれしたところを切り落としてあったりする。もちろん料理に使うやつだから清潔にはしてあるよ!
「これに、この生地をこんな感じの太さに伸ばしてグルグルと~…… 最後に端っこをしっかりくっつけてずり落ちないようにして、良い感じの火加減のところに突き刺す!」
「これで~、パンになるんですか~?」
「なったらいいよね!」
「ええ~?」
生地にナッツを混ぜたもの、ベーコンチップを混ぜたものなんかのバリュエーションを着けたものも作成。
その後、食材炎上事件、煙大量発生事件を挟み、一通り串焼きを作り終えたら、次は焚火の横に支柱を立てて二本の支柱の間に鍋をぶら下げてスープ作り。
「いかにもって感じだよね」
「そのために~、わざわざ~、乾燥野菜を~?」
「いつになく無邪気な質問が痛い……!」
スープの具材は乾燥野菜の他に塩漬け肉と豆。硬く焼いたパンと合わせるかここに直接穀類を入れるかすれば栄養バランス・保存性・調理の簡単さ三点揃った完璧な外征メニュー。なんだけど、正直そのままだと肉からの塩気で味の濃さが分かりづらいし風味も薄いメニューになりがち。なにより下拵えしたものなり柔らかいパンなりを持ち運ぶ手段が有るなら保存性がメリットにならない!
「というわけでトマトベース投入~」
「なんで今鍋を分けたのですか~?」
「それはね、どこまで既製品を使っても大丈夫か分からないからだよ! というわけでこっちにはガラムマサラ投入!」
ガラムマサラってミックススパイスのことなんだってね! 屋台でカレーパン売ってたお姉さんが言ってた! つまりこれをひとさじ入れればスープカレー風に早変わり!
「これで何品目作ったっけ? そろそろお昼にする?」
「串焼きは~、一種類で一品目ですか~?」
「そうする予定だけど串焼きばっかりでも仕方ないし、上手に作れた二種類くらいかな? あ、ねじりパンは別として」
そんなわけで試食開始。まあ串焼きなんて具材が痛んでなければ失敗になりようがない……って言いたいところだけど、大炎上の結果コゲコゲな上に謎の酸味を感じる羊肉に盛大に顔をしかめ、爆発したキノコの残骸を食べれば口の中で弾ける駄菓子を何倍にも強烈にしたような刺激と独特の風味。うん、この辺りは失敗だね!
でもこのキノコの失敗作は何か転用できるかも!
「明らかに~、失敗作でも~、食べるんですね~」
「作った責任が有るからね~。手に負えないと感じたらクロに頼むけど」
今のクロなら一般的な失敗作の範囲ならむしろ喜んで食べるんじゃないかな……
「では~、私も~」
そういってコノカさんが手に取ったのは少し焦げ目の付きすぎたねじりパン。比較的焼くのが簡単だったからやってみてもらったなかでも一番最初のやつ。
「ちょっと~、苦いですね~」
「大丈夫? お茶飲む? 例によってポーションの製法で作られた草の抽出物だけど」
「いただきます~」
昼食を終えて一息入れたら残りのメニューに。手間をかけるものは一通り作り終えたからあとは燻製とか時間をかけるやつだね。
森のダンジョンで取れる木材を加工したウッドチップを適当に焚火に放り込み、麻袋に包んだ食材を支柱にぶら下げていぶす。
「あとはこれだね!」
「先ほどの葉っぱですね~?」
「ふっふっふっ、焼き芋しようと思ってね」
ジャガイモっぽい奴、長いもっぽい奴、定番のサツマイモ的なやつに、里芋っぽい奴までより取り見取り!
燻製の方はチーズとか、豚肉とか。単品で料理と呼ぶかはともかく一回作ってみたかったんだよね~。
「良いにおいがすると思ったら! 私に内緒で何やってるのよ!」
「あ、ミルフィーユさん」
「内緒もなにも~、私は今日は休みで~、貴女は予定が~、あったでしょう~?」
「終わった予定のことなんていいのよ! それよりも芋はちゃんと入ってるんでしょうね!」
「入ってるけど、後ろから追いかけてきてる人たちは良いの?」
「大丈夫よ! ここまで来たら後は街まで危険なんてないし! 出張ヒーラーは終わり終わり! で、お芋はまだ焼けてないの?」
「もうそろそろかな?」
「いけてそうね!」
どこからともなく取り出した竹串をサツマイモっぽい奴に横から突き刺して焼け具合を確かめたかと思えば、小皿とテーブルナイフを取り出し、やっぱり芋にはこれよね! なんて言いながらバターを塗り始めるミルフィーユさん。
「普段からバター常備してるの?」
「してるわよ?」
そんなさも当然みたいなことかなそれ。
「あれ? 貴方達なんでそんなところで突っ立ってるの?」
「知らない人の~、集団に~、ためらいなく突っ込める~、人ばかりではありませんよ~?」
そういうコノカさんの視線は僕に。うん、ミルフィーユさんが出張してるってことはコノカさんとは面識があるっていう話だもんね。装備の外見のことではないはず!
「まあ良いわ、お芋はまだあるの? ちょっとこの人数には足りないわね。貴方これ食べたらちょっとひとっ走り買ってきてちょうだい。私のおごりで良いわよ! あと牛乳とバターと飲みたい人がいればお酒もよ。え? 燻製もあるの? ホントなんで私に声をかけなかったのよ」
「ミルフィーユさん、この焚火じゃそんなに一度に調理できないよ」
「じゃあ焚き木と着火剤もね!」
ミルフィーユさんが参加してたパーティーの一人が勢いに押されて明らかに金額が多いどんぶり勘定で渡されたお金を受け取って街に送り出されてしまったね。
走る速度は割と早いし、この時期にこの辺でってことは斥候系のスキル持ちの人だったのかな?
「そしたらてきぱき追加の準備するわよ!」
「はぁ~、仕方ありませんね~」
溜め息を吐いたのも束の間、目の前であっという間かつ豪快に準備されていく焚火と食材にコノカさんが何とも言えない顔をしてたのが今日一番印象的だったね!
あ、ちなみにその後習得できたスキルは目論見通り【野外調理】だったよ。影が薄すぎて掲示板に共有し忘れたりしたけど。
なれないシーンを適切に短くまとめるのって難しいですよね。
作者はミルフィーユさんが大好きです。ヲチをつけるぱぅわーが高いので。




