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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第一部 VRMMO編
15/162

縛り14,砦でのモドリ玉使用禁止

戦闘描写とかまじ無理ぽ……

「おらぁ!」


 品の無い怒声とともに力任せに降り下ろされた鈍器がボロ布の様な見た目の幽霊の体をあっさりと突き抜けて地面を叩く。ダメージはしっかりと表示されているけど、そんなの関係ないとばかりに幽霊の振るう鉈はその動きを一切鈍らせずにクロに襲い掛かった。

 鎧部分に刃が当たり金属音とともにクロのHPが減少したけど、クロもまた自らのダメージを気にすることなく両手鎚を振り回し続け、初撃には劣るもののそれなりのダメージを連続して叩き出していく。


 一見闘いは拮抗している様に見えたけど、クロのHPはあっという間に七割を切り、数字の上では圧倒的にクロの劣勢であることが窺えた。

 当然クロだってこのままズルズルと敗北するつもりは全くないから、両手鎚を右腕一本に持ち代えて無理矢理に振り回しつつ、空いた左手でHPポーション(抹茶味)を取り出すとそれを一気に飲み干した。


 今回の作戦はいたってシンプルで、補給したHPポーションを積極的に使いつつとにかく攻撃重視で殴りまくるだけ。敵の攻撃をガードしても防ぎきれない以上受け身になって戦ってもじり貧になってしまうからね。

 で、クロが頑張ってる間僕は眺めてるだけなのかというと当然そんなことはなく、スタミナやMPの残量に気を使いつつも遠距離攻撃を仕掛けたり、ときどき近づいて延髄切りを叩き込んでみたり結構忙しく攻撃している。


「そろそろ限界だ、交代頼む!」

「了解! 【スラッシュ】!」


 クロの体力が3割程度になったところでクロは攻撃の手を止めて武器でのパリィに挑戦しつつの回復に移行し、なおもクロを攻撃し続ける幽霊のタゲを奪うべく僕は背後から手刀を放ち、畳み掛けるように抜き手からの【マナバレット】で着実にダメージを重ねていく。

 物理攻撃でノックバックを受けないという幽霊の特性も裏を返せば低い攻撃力でも体を貫くことが出来るということで、よくわからない布きれみたいな体の内側で放った魔法はしっかりとクリティカルヒットして38という大ダメージ(笑)を叩き出した。


「【マナバレット】、【スラッシュ】、【マナバレット】!」

「オォーン!」


 さらに攻撃を重ねたところでこちらを振り向いたので、鉈が振り下ろされる前に敵の本体に突進を仕掛けてそのまま突き抜けて走り抜ける。当然AGIに振っていない僕のステータスではこんなことをしてもすぐに追いつかれてしまうけれど、そこはそれ、僕らはパーティーで戦ってるから問題なし。背中を見せた幽霊にクロが渾身のフルスイングを叩き込んで再びタゲを奪う。

 もし突き抜けて回避できるようなら活用しようと思ったけど、そうそう美味しい話はなかった。

 幽霊に突進を仕掛けた際にHPの四割ほどが削り取られていた。何を基準にダメージを計算しているのかは分からないけどクロにもおすすめはしない方がよさそうだね。


 クロに再び襲いかかっている幽霊と十分な距離が空いていることを確認してから、遠距離攻撃を乱発して再度ターゲットを奪う。そしてヘイト減少のスキルを自分に掛ける。

 もしこれでこちらにたどり着く前にタゲをクロになすりつけることが出来るならうろうろさせ続けて一方的に攻撃できるんだけど、できたとしてもダメージ自体はほとんどないんだよね。まあそれでもクロが回復する時間の延長にはなるからできる限り努力しようっと。

 結局二往復ぐらいさせたところでMPがかなり減ってしまったので時間稼ぎを打ち切って素直に一発貰ってヘイトを発散させてからその場に座り込んでHPポーション(抹茶味)を飲む。こういう小技で攪乱できてしまうあたり、いくらリアルに感じてもやっぱりゲームなんだなあとしみじみ思った。


「……苦い」


 苦い飲み物って冷めた後の方が苦く感じる気がするよね。まあもともとのポーションに比べたら味の方向性がちゃんとしてるぶん美味しいとは思うけど。

 ちなみにここまでの戦闘でのHPポーションの消費量は僕とクロ合わせて五本、幽霊のHPバーの減少量はおおよそ二割。今の『AWO』の状態では断トツで贅沢な戦い方をしてるような気がするね。


 思ったよりも消耗が激しかったのでしばらくの間だらーっとしてからクロと幽霊の交戦地帯に向かう。MPは残り六割、そこそこの速度で自然回復しているとはいえさっきみたいなことをすればあっという間に底をついてしまう程度の残量と言えた。

 前回不覚を取った幽霊の魔法攻撃でクロが受けるダメージは推定300程度、これはクロのHPの二割五分程度に相当する。なので前回よりも早いタイミングで体力回復に移り、HPに余裕を持たせつつ戦っているのだ。


「やっほー、お待たせ?」

「遅いわっ! これヘイト完全に俺に向かってんだろ、どうするつもりだよ!」

「ダメージ受ければヘイト減少するみたいだから大丈夫だよ!」

「大丈夫な要素がねえよ!」


 そこから先はもう完全に作業だった。クロが殴り合ってるところを慎重にちょっかいかけて引き離しては適当に追い払ってクロの方に返すことの繰り返し。でもこういった作業って言えてしまうような行動も楽しいのがゲームであり、楽しめるのがゲーマーなのだ。


「うらぁぁぁぁ!」


 両手鎚が勢いよく振るわれ、ついに幽霊のHPバーの最後の一ドットを削りきった。幽霊が地面に落下し、ユーレイたちの脳裏にレベルアップのファンファーレが複数回鳴り響いた。

 戦いが始まってからかれこれ四五十分は経っただろうか、現在の時刻は五時四十七分。クロが採集してる間もずっと動き続けていたことを考えるとかれこれ二時間半ぐらいは幽霊と追いかけっこじみたことをしていたことになる。

 何はともあれ、


「うっしゃぁっ! 勝ったぞォー!」

「やったね大勝利!」


 パチンと乾いた音を鳴らしてクロとハイタッチを交わすと、二人そろってその場にあおむけに倒れ込んだ。薄暗い森の地面なんて大して気持ちいいものでもないけど、全身から擬似的に伝わってくる疲労感がそれでも構わないから休みたいという気分にさせてくる。

 クロのテンションが僕でもちょっとドン引きするぐらいになってたけど気にしたら負けだと思う。


「ドロップアイテムは、と…… あ~、【鑑定】系のスキル使うか町に戻るかしないと分かんねえかなこれは」

「街の近くのモンスターの素材は普通に分かったのに? なんでだろうね」

「あれじゃね、素材のレベルとかレア度とかその辺なんじゃね? 実際俺がさっき採取したアイテムも『木片(?)』とか『木くず(?)』としか表示されてねえしな」

「なるほどね~、やっと幽霊の正式名称が分かると思ったのにな~」


 そのまましばらくぼうっとする。はっきり言って寝転がっている場所は危険地帯なんだけど、なんかもうどうでもいいや。


「どうする? 帰るか?」

「いや~、僕はもういいよ、このまま死に戻りで。正直この後レベリングするつもりにもならないし、デスペナぐらい甘んじて受け入れようかなって」

「まあどうせ六時までにここから抜け出せなかったら死ぬしな。一定時間HP・SP半減とかバッドステータスとか街中では実質関係ねえし」

「鉈で殺されるのは痛いけどね。そういえばあの鉈って手に入らないのかな? 【採集技能】とかどうなの?」

「いや、道具ねえしどう考えても熟練度たりねーし。そもそも幽霊が死んだときに粉々に砕け散っちまったしな」

「そっかぁ、残念」

「ぐぎゃあ」


 雑談を続けていたら近づいてきていた幽霊の鉈がクロの喉元に振り下ろされた。間抜けな悲鳴とともにクロに大ダメージ。なるほど、当たる場所とかあたり方で結構大きくダメージが変わるんだね。

 そのまま大した抵抗もなくクロにとどめを刺した幽霊は僕の方に向かってきた。即死ダメージ一回では死ねないから二回、【根性】の思わぬデメリットだなあなんて考えているうちに、僕の視界は暗転した。


 ちなみに、神殿で確認した幽霊の正式名称はマチェットレイスで、ドロップアイテムは『マチェットレイスの襤褸』だった。

既に四万字くらい費やしてるのにいまだに素手で戦ってる主人公……

そしてしばらく戦闘描写は予定なし(笑)

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