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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第三部 マイペース攻略準備編
147/162

縛り145,つよさ200の虫使用禁止

 今回で一区切りつけようとしたら長くなりました。

 あ、あと先日一つ歳をとりました。

 『投げ抜け』っていう割とメジャーな格闘ゲームのシステム。相手が掴み技を使ってきた時に、タイミングよくボタンを押すことで即座に脱出して、ちょっと有利な状態から再開できる。っていうものなんだけど、当然ながら取っ組み合いをメインに据えてるわけでもないVRゲームにデフォルトで存在するはずもなくて、代わりに使えるような格闘系のスキルもない。

 どういうことかって言うと、自分より力が強い相手に捕まえられたらそうそう脱出できないってことだね! 雑に掴みかかってくる左手を警戒してるとなかなか攻めに行けないよ。

 何が問題って、残り時間がどのくらいか僕も分からなくなっちゃってることだよね! 僕の予想では最低でもあと二発、カウンターでちょこちょここっちもダメージを受けることを考えるとあと三発は入れないと勝てないかなって感じなんだけど……


・作戦その1

 あえて掴み技を受ける。ナンダゴンドさんのデリカシーポイントを下限突破させてエンドレスお説教コースに叩きこめる超必殺技エクストラウィン。試合には負けるけど勝負には絶対勝てる。


・作戦その2

 掴み技だけ避けることにして、強引にダメージレースに持ち込む。ノックバック付きの槍技とかが有ると結構困るけど一番無難。


・作戦その3

 盾のスキルが使えなくなった分、機動力が落ちたナンダゴンドさんに遠距離戦を仕掛ける。MP的にも成功率や命中率的にも、十分なダメージを稼げるか怪しい。


・作戦その4

 勘でタイムアップ直前に特攻を仕掛ける。掴まれてから受けるダメージよりもそれまでに与えられるダメージが多ければ勝ち!


 作戦その1は却下! 試合に負けて勝負に勝つとか甘えだよね! 目指すは完全勝利! 作戦その2はいったん保留かな。作戦その3は…… 引き撃ちってやつだね。技術的にはできるけど、ちょっと魔法の制度も成功率も弾速もアテにしたくない感じ。パスかな。作戦その4。最終手段として作戦その2と併用だね! というか他の二つが却下だし!


「またろくでもないこと考えてる気配がするな……」

「どんな~、ことですか~?」

「いや、俺の想定の範疇に収まったことがないんでなんとも……」


 べ、別に作戦1なんて検討してないんだからね! 勘違いしないでよね!

 脳内でツンデレ風に言い訳したところで何を誤魔化せるということもなく。そもそも実行しなければバレようもないから確定無罪だけどね!

 作戦も決まったところで、時間内に決着をつけるべく、最速で突撃!


「【ライト】!」

「ぬお!?」


 詠唱破棄! 暴発! 暴発した方が戦闘に便利なのはどうかと思うよね! MPごっそり持ってかれたからもうやらないけど!

 呪文を使うと【チャージスラッシュ】のチャージできないから目くらましの価値もイマイチだし。


「せぇい!」


 左手めがけて杖を振ることで、掴みをけん制して、空いた空間に足刀での【スラッシュアロー】! すごくパッとしない威力しか出ないね!

 分かってたけど【チャージスラッシュ】はいろんなところが不便! 溜めてから攻撃っていう性質が連続攻撃で相手を崩す戦い方に致命的に合ってないよ!


「【マナバレット】!」


 不発! MPだけごりッと減るね!

 牽制に失敗して引き際に槍での反撃が飛んでくる。距離を取ろうとすれば今度は【ランスチャージ】、【ステップ】で中断しての掴み。

 【ステップ】羨ましいな~! スキルや硬直を中断できるの便利だよね! 硬直する技も中断する必要がある技も持ってないけど!


「ふう……」


 三発当てるのは無理だねこれ! 二発で勝とう!

 幸い、【チャージスラッシュ】は時間かけてMP注ぎ込めば効率は悪いけど標準的なフルチャージを越える威力が出せるスキルだし!

 今までそうしなかった理由は、オーバーチャージした分のMPは時間経過でどんどん漏れ出るというか、溜めた状態をキープする立ち回りが出来なくなるから。あと、エフェクトが出てあからさまに相手に警戒されるしね!


「チャージイクシード! 行けるよ!」


 杖を片手持ちして、素手でしのぎつつ十五秒ほど。特に意味もなく高らかに宣言! まあ見た目に出まくってるからね!

 こういうのってバチバチなるのが様式美だと思うんだけど、スキルの仕様か、装備の影響か、緑褐色の濁った靄が杖に纏わりついてるっていう…… だいたいいつも通りだね!

 靄の色がゴブリンカラーなのか森カラーなのか分からないけど灰色からマイナーチェンジしてるのが地味に楽しいね!


「あの杖にいったいどれだけのエネルギーを込めてるんだ!?」

「ボスを倒した時よりもさらにヤバそうだぞ……」

「これが鮮血の魔女の本気だとでも言うのか!」


 見た目の変化が大きな技を使ったことで、パンチラモーション研究会の皆さんが解説っぽいけど内容のない会話を交わしてる。というかそのあだ名まだ残ってたの!?

 ヤジを振り切るように、最高速度でフェイント抜きの突撃を仕掛ける。短距離走は専門じゃないけどね!


「【ペネトレイト】!」

「痛っ……くない!」


 そんなことをすれば当然迎撃されるわけだけど、防具を信じて体で受ける。当然勢いは殺されちゃうけど、一瞬の困惑をついて槍の柄を掴む。


「筋力があだになったね! まずは一発!」


 引き戻される槍に引っ張られるように宙を舞い、全身のひねりを使って思いっきり叩き込む!


「うおらぁ!」


 しかしナンダゴンドさんもただでは起きない。ここに来ての足技で、腕の可動域の外の僕に強引に横蹴り。

 金属製のグリーヴ着けた蹴りとか凶器以外の何物でもないね!


「けほっけほっ」


 手ごたえは間違いなくあったんだけど、あえて受けたとはいえこっちのダメージも想定より大きいかも。

 あと一発でダメージ足りるかな……


 MPの残りは、だいたい二割くらい。無駄遣いしすぎたというか、自然回復の速度がこんなに落ちてると思わなかったというか……

 よしっ、そろそろ時間切れな気がするし次の一撃に全部つぎ込んじゃおう!

 それっぽい構えのストックもそろそろないね! でもまあ杖術はメジャーじゃなくても、ゲームでの杖はメジャー武器だから、変に力の入ったモーションアシストしてるVRゲームの一つや二つ経験済み! まじめな棒術も使えなくはないっていうことを見せてあげるよ!


「よくもまああんなにコロコロ構えが変わるもんだ……」

「要領がいいのは間違いないっすね。一つ一つの練度が高いわけじゃないんで動きの変化で相手に慣れさせない戦略だと思います」

「杖での~、近接戦闘ですか~。私も~、学ぶべきですかね~?」

「習うにしてもちゃんとした人から習った方が良いとは思いますよ」


 杖の重心を真ん中に、肩幅より広いくらいの間をあけて、両の手で上から握るように持ち、軽く脱力して体の前にぶら下げるように。さっきとは一転して、すり足で静かに距離を詰める。

 突きこまれる槍を躱すのでも受け止めるのでもなく、円運動を利用して逸らす。まあステータス差と技術不足でちょこちょこダメージ受けるんだけど!


「【クリーブ】!」


 スキルの薙ぎ払い。側面に刃の無いランスとはいえ普通なら木製の武器で止まるものじゃない。受け止めた僕の杖がミシリと音を立てて軋む。けど、呪いの装備がそんな簡単に壊せたら苦労はないよね!


「耐久無限の武器は! 実質盾!」


 セーフ! 武器ガードで追加の斬撃が発生したらチャージがぱあになるから実は大博打!

 先端部分から靄があふれ出して、警戒して距離を取ろうとするところを、つかず離れずで細かい被弾を代償にさらにチャージ! 靄にくわえてうめき声のような低温が杖から響きだしてくる。これならいけそう!

 対するナンダゴンドさんは、この杖に対する対処法として、杖を持ってる腕の方を止めれば止められるという狙いだね! 間合い、どっちから僕が杖を振っても対処できるような位置取り。槍を持ってる側からなら通るだろうけど、たぶんそれこそが狙いと見たよ!


「【チャージスラッシュ】!」


 だから、僕が選ぶのは『突き』

 杖を振るよりも早くて、直線だから腕をつかむことはできない。そして、この杖の【斬撃】の判定は発生する追加ダメージにしか関係ないから攻撃方法は関係ないんだよ?

 完璧に意識の隙間をついて、杖の先端がナンダゴンドさんの胸元に吸い込まれる。そして……


「い゛っ!!?」


 残MPのすべてを注いだ一撃。その手ごたえは激痛を伴って僕の腕をずたずたにする形で返ってきた。

 覚えてた? この杖の反動ダメージ! 魔法防御力で防げるようになってたから僕は忘れてたよ!

 今日イチの痛みで、杖を突きだしたまま完全に硬直してしまう僕。大ダメージを受けたものの素早く気持ちを立て直したナンダゴンドさんが掴みかかってくるのに対処できなかった。


「【スラッシュアロー】」


 首根っこを掴まれた状態でできる反撃なんてたかが知れてるけど、脱出云々は割りと詰んでるからね! とはいえナンダゴンドさんもこの体勢から放てる有効打なんて限られてるだろうし、時間切れまでの削り合いになるはず!

 槍は掴んだ相手に攻撃するには長すぎるし、槍を捨てて殴るか、僕を投げて回避できないようにスキルを一発叩きこむかかな!


「【チャァーーッジ】!!」

「うっそぉ!?」


 思いっきり突進に向けてタメを作るナンダゴンドさんに顔が青くなる。

 必死に蹴りを入れるけど、がっちりホールドされてて抜け出せない。その攻撃方法はデリカシーポイント激しくマイナスだよ!?


「いくぜおらぁ!」


 レスリングのタックルのように、体勢を低くしたナンダゴンドさんが僕を地面に叩き付け、そのまま地面を引きずりながら爆走する。

 いやそんなムシキングみたいな技使う普通!?

 人一人分の重さを、スキルの馬力で強引に引きずってぐいぐい加速していく。時たま軽く浮かせて叩き付けられるせいで踏ん張って減速させることも出来ず。この速度で何らかのフィニッシュ決められたら確実に負けだよね!?


 ふわりと、体に感じる浮遊感と首への圧迫感に、いよいよ覚悟を決めたタイミングで、ナンダゴンドさんの動きが唐突に止まった。

 慣性に従って放り出され、エリア端に跳ね返される。と思いきやそのまま地面にボトリ。


「ちっ」

「あー、ようやく時間?」


 自分で設定しておいてなんだけど、長かったね……

 さてさて、『決闘水晶』が読み上げる勝者はどっちかな?


 ひっさつわざ      グー(チョキに勝つ)

 ボアロックラッシュ   テクニック

              50

 あいてのくびをつかみ、走りながらなんどもじめんにたたきつけ、いきおいをりようした回転ラリアットでとどめをさす。

 ○○◎◎××





 書いてから思ったんですけど、こういう技カードが有るのって一番初期のムシキングだけなんですよね。

 ユーレイちゃんが知ってるのはVRゲームセンターという流行りそうでまったく流行らなかったゲームでの知識です。


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