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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第三部 マイペース攻略準備編
134/162

縛り132,いわポケモン使用禁止

 企画原稿の方が一筋縄でいかない感じなのでちょっと気分転換に来ました。

 まだ締め切りまでは時間あるから……

「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ドー♪ ド、シ、ラ、ソ、ファ、ミ、レ、ドー♪」


 ついつい口からこぼれるのはシャトルランの歌。歌って言うのか知らないけど段々速くなるあれ。

 ダンジョンから出て戻ってきたら無事にボス部屋の前の靄が復活してたので楽しいボス周回タイムが始まった。二戦目はとりあえず一戦目の教訓を生かして立ち位置を調整しつつ真っ当に倒し、今は三戦目。時間短縮を目指して新しい戦術を取り入れてるところ。


「ゲェアッ!」

「とうっ!」


 横なぎに振るわれたボスの攻撃を老師は僕を踏み台にして上空へ。僕はその反動で伏せるようにしてそれぞれ躱す。そこから空中で自由に動けない老師のサポートをすべく、ボスの関節を狙った攻撃で体勢を崩して妨害。

 そう、今回の戦闘では僕と老師の二人掛かりでボスの相手をする作戦。毒霧や毒沼は使えないから、最低限のデバフと動きの速さ、そしてコンビネーションで対処することになるんだけど、これがなかなか楽しい。がちがちに妨害してた一戦目二戦目と違って、自由に体が動かせるボスは結構強力そうなスキルでの攻撃も織り交ぜてくるし、人に近い戦闘スタイルとボスとしてのタフネスは対人戦の相手として申し分ない。


「こっちは終わりました~!」


 楽しく戦闘していればリンドウちゃんから彼女が受け持っていた分の敵を倒し終わったという報告が。ちなみにクロの担当は魔術師ゴブリンの一部で、リンドウちゃんの担当はそれ以外の取り巻きゴブリン全員。取り巻きも毒で行動不能にできちゃうことが分かったから仕方ないね!


「よし、じゃあちょっと離れててくれ!」

「はい、わかりましたクロさん!」


 ボスの相手も、取り巻きの処理もほとんどしないクロが、じゃあ何をするのかといえば、実は黒の担当こそが今回の時間短縮作戦の中核だったりする。

 さっきからちょくちょく爆発音が聞こえるのは、魔術師ゴブリンの火球に見た目ほど大きなダメージはないってことで、魔法防御力は別に高くない鎧を脱いだうえで真正面から戦ってるから。


「ゲゲゲッ!?」

「よしっ、捕まえた!」

「こっちはいつでも大丈夫!」


 魔術師ゴブリンの火球はホイホイ起爆するのでキャッチして投げ返すのはどうも不可能っていう結論になったんだけど、魔術師ゴブリン自身は火球を掴むようにして投げてくるから、使用者が触っても起爆しないんじゃないかっていうのが今回のポイント。

 その癖爆発自体にはきっちり巻き込まれるので、魔術師ゴブリンは敵が近くにいすぎると手元の爆弾をどうすれば良いか分からなくなってパニックになる。あ、爆弾って言っちゃった。で、パニックの後は後ろに捨てたり遠くの敵に投げたり、そのまま自爆したりといろいろなんだけど、パニックの間は動きが止まる。つまり?


「おおっし、離すなよおお!」

「ゲーッ!?」


 パニックの間にさらに近づいて、魔術師ゴブリンの手を上から握るようにして火球を掴ませれば、(魔術師ゴブリンごと)火球を好きな位置に持ち運べるってことなんだよね!


「よっしゃ行くぞおおおお!」

「バッチコーイ!」


 片手で魔術師ゴブリンの手を掴みもう片方の腕で腰のあたりを抱える変な体勢のままこちらに向かって走ってくるクロ。ついでに言うと度重なる爆発で衣服はボロボロ。世紀末かな?

 僕らの作戦を知りようもないボスゴブリンは目下一番脅威度の高い老師への対処で精一杯。僕はその間妨害しつつ執拗に膝を狙っておいたし、この後の展開もどうにかなるはず。


「おうりゃああああ!」


 踏み切る足音をうるさいぐらいに響かせてクロが跳ぶ。ボスの間合いの外から、僕もボスも飛び越えて、天井に。そのままゴブリンごと火球を天井に叩きつけ、爆発を起こす。

 ちなみにこのボス部屋の天井、五メートルくらいはあるのに、ゴブリン抱えた状態で届くとか、ステータスの暴力って怖いよね。


「ゲァッ!?」

「【マナバレット】!」


 上は見ない! クロが落ちてくるかもとか、ラグなしで崩落が起こるかもとかあるけど五メートルあるならどんなに早くても一秒あるし! なんなら見上げる間に逃げるほうが確実だし!

 ボスの目の前で【ライト】に【マナバレット】を叩きこんで爆散させる。暗闇に強いここのゴブリンが目くらましに弱いのも確認済み!


「【弧月脚】!」


 老師は老師で膝裏にスキルの一撃を叩きこみ、膝をつかせたのを確認して、改めて上を確認。こまかい破片が落ちてきてて、そこそこのサイズの岩盤が不穏に揺れてる。


「まだじゃん!? 老師あれ落とせる!?」

「ん? 分かった!」


 そこから、五秒にも満たない濃密な攻防が始まった。

 老師が跳ぶ。目くらましから復帰したボスが首を上げる。顎に【アッパースラッシュ】を叩きこむ。離脱しようと動いたところを、腰にタックルを決める。老師が天井に【波濤抜き手】を放つ。振りほどかれる。崩落が始まる。岩より早く降ってきた老師がなぜか離脱せずにボスの首に膝を叩きこむ。僕も顔面にドロップキックを叩きこむ。二人でそのままボスを蹴るようにして飛びのく。


 そして、二メートル四方はあるかなってくらいの岩盤と、大小さまざまな岩がボスの上に降り注いだ。


「やったか!?」

「それフラグだっつーの! というかやることがいちいち危なっかしーんだよ! もうちょっと安全にやれ!」

「一番危ないことしてた人がなんか言ってるよ」

「やらせたのお前だろうが! いいからとどめ刺しに行くぞ!」


 あの体勢なら頭はこっち側か? なんて言いながらひょいひょいと岩をどかしてボスを発掘し、気絶した頭部が出てきたところでどかした岩を上に積みなおしてから首に攻撃するという何とも言えないやり方で仕留めきるクロ。なんだかんだ言って毎回しれっトラストアタック持ってってない?


「どうだ?」

「戦闘時間六分四十秒! 最速だね!」

「戦闘時間の話じゃねえよ! 目当てのものはドロップしたかって聞いてるんだよ!」

「んー、もう二、三周付き合ってもらっていい? あ、でも今回武器ドロップしてるや」

「おお、どんなのだ?」

「呪いの武器で粘る必要がなくて安心するようなやつ。僕はいらないからクロ使ったら?」

「まあ、じゃあありがたく…… なんだこれ」


 僕が手渡した武器を受け取ったクロが怪訝な顔をする。


「大きなスコップ、ですか?」

「一応大剣なんじゃない? 反りがないからスコップとしては不便そう」


 すごく金属部分の長いスコップ? シャベル? どっちがどっちかわからないけどともかくそんな感じの外見の武器。大剣としては柄が長くて、槍としてはバランスが悪い。そして、刃と反対側には三角形の真ん中をくりぬいたようなおなじみの持ち手がついてる。


「変な武器」

「いや、これ使えってか?」

「でもたぶんボス泥だし性能は良いんじゃない? さ、次行くよ次! ドレミファソラシドー♪」

「なんだそれ」

「シャトルランのあれ」

「はええよ! そんな速度でこの距離往復できるか!」


 そんな顛末もあり僕の装備の材料よりも先にクロの新装備を入手することになったりもしたけど、僕たちはボスの素材と、おまけの金属素材をそれなりに潤沢に入手して帰路に就くことができたのだった。

 ボス部屋までの往復のことをシャトルランって言うの誰が言い始めたんでしょうね?

 あとドロップアイテムのことドロって書いたり泥って書いたりの表記揺れがある気がします。いまさらながらどちらも意味はドロップアイテム(戦闘後に魔物が落とすアイテム、転じて戦利品)です。

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