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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第一部 VRMMO編
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縛り12,時間外労働禁止

「ユーレイさんの顔ってとこかで見た覚えがあるんですけど何ででしょう」

「そうかい? 僕は別ゲーでも基本これと似たり寄ったりのアバターで遊んでるからその時に会ったのかもね」

「でも私はそんなにゲーム経験が豊富ではないですし…… アクション要素の強いVRゲームはあんまり得意じゃないので『AWO』がほとんど初めてなんです」


 人がプレイしているのを見たり実況動画を見るのは好きなんですけどね、とはにかむリンドウちゃん。かわいいなあ。


「実況動画か~、僕たちは縛りプレイしても基本動画形式で流したりはしないからね~。ネットに流す時も文章形式のことの方が多いし」

「有名人に似せてアバター作ってるとかでもないんですよね?」

「というかこれほとんど素顔だしね、リンドウちゃんもそんなにはいじってないでしょ?」

「え? そういうのって話しちゃっていいものなんですか?」

「やめとけ、そしてユーレイも馴れ馴れしくし過ぎだ。相手は初心者なんだからもうちょっと自重しろ」

「別にこれくらい良くない?」


 リンドウちゃんと雑談してたらクロが割り込んできた。ここまでの会話をリンドウちゃんは試行錯誤の末に編み出したレシピでポーションを作りながら、クロは辺りの草を手当たり次第に引っこ抜きながらしている。


「まあ実況動画が好きならユーレイのアバターを見たことがある可能性はあると思うぞ?」

「え? なんで?」

「そうなんですか?」

「ユーレイ自身は動画形式で投稿したりはしてなかったが他の人の動画で顔が出るのは承認してたし、一緒にプレイしてた人に動画あげてた人もいただろ」

「ん~、もし見たことがあるとしたら『マシ魂』か『ブレ魔』、『スカイ』辺りかな。他のはVRでもオンラインゲームではなかったし」


 マシ魂は『マシンナーコンバットオンライン』の略でサイボーグチックな集団戦闘のゲーム、『ブレ魔』は『Blade and Magic Online』というまんまな剣と魔法のRPG。そして『スカイ』は小難しい名前の戦闘機で戦うゲームの愛称だ。

 ちなみに、僕は毎度碌でもない条件を課してプレイするため「もはや全く別のゲームをやっている」というありがたい評価を周りのプレイヤーからいただいていたりした。


「あ、『マシ魂』関連の動画は一時期結構見てました。グラフィックも綺麗で格好いいんですよね」

「そうそう、でも大人数戦闘と派手なエフェクトのせいでサーバー負荷もすごかったからね。動画見てるとわからないけど参加申請から戦闘開始まで1時間とかザラだったんだよね」

「『マシ魂』は俺はやってなかったがなんか仲良くなった人と一緒にいろいろやってただろ。誰だっけ?」

「ミラルダさんだね! 懐かしいなあ、あの人も『AWO』やってたりするかな?」

「ミラルダさん……? もしかしてあのミラルダさんですか?」

「動画職人のミラルダっていう人が他にいるかはよく知らないけどたぶんそうだと思うよ?」


 懐かしいなあ『マシ魂』。『AWO』ほどじゃないけど丁寧なグラフィックと自分の装備品のカスタムの多様性や大人数戦闘ゆえの戦略性なんかが売りのゲームだったんだけど、サーバー強度がプレイ人数に見合ってないにもかかわらず戦闘中の処理落ちを出さないことを徹底した結果、立ちいかなくなってサービス終了してしちゃったんだよね。ミラルダさんはゲーマー仲間とでもいうべき人物で、知り合う以前からお互いのことは知ってたし、今ではよく一緒に企画をたてたりもする。


「思い出しました! 『亀甲縛りでプレイ・マシ魂編』でミラルダさんを運んでた人じゃありませんか?」

「あ、そういえばあの時は僕もいっしょに映ってたね! なるほど~。あれは楽しい企画だったなあ」

「ミラルダさんもそうですけどユーレイさんもすごかったんで印象に残ってたんだと思います! ミラルダさんってどんな感じの人なんですか?」

「……なんだこのノリ」


 盛り上がってる僕とリンドウちゃんをしり目にクロが疲れた顔をしてたけど気にしない気にしない。



 HPポーション(抹茶味)とクロが持ってきた素材でリンドウちゃんが新しく作った回復アイテムを受け取った後僕たちはリンドウちゃんと別れて三度『死霊の森』に向かっていた。

 前回さんざっぱら道に迷ったり死に戻りで出直したりしたので目的地までの道のりの把握は完璧。敵に発見されたときの逃げ方もだいぶものになったし、前回よりしっかり準備してるから万が一戦闘になっても一体相手なら勝てる。


「準備は万端! というかもはやなんでこんなに時間かけてんのかわかんないよねここまで来ると! この時間素直にレベリングに費やしたほうが多分強いよね!」

「まあそこは縛りプレイだししゃあないだろ」

「しかし嘘か真かリアルではまだ三時間も経過してないという…… こんなゲームスピードで成立するのかな?」

「レベルキャップはとんでもなく高いらしいけどな。βでも百越えは普通にいたらしいし、9999でカンストって噂もあるぐらいだ。とはいえ実装されてるマップの広さ的には確かに体感速度十二倍はやりすぎな気もするよなあ」


 もしゲームスピードに対応するために開発班は十二倍をも上回る思考加速で日夜開発しているとかなったらそれはブラック企業どころじゃないなあ。

 なんてくだらないことを話している間に『死霊の森』の端にたどり着いた。


「じゃ、僕は前回同様隠れとくから。道順は指示するからガンバ!」

「おう、任せた!」


 向かうべき方向が分かっているのでモンスターとの遭遇を避けたり、一度だけ遭遇してしまいクロから引き離してから撒いたりしつつも、前回の半分ほどの所要時間で目的地にたどり着いた。

 目の前にある禍々しい樹木はクロ曰く採集ポイントになっていて、十分な熟練度の【採集能力】があればそれなりにランクの高い樹木系アイテムが採集できるらしい。


「そんなわけだから俺が採集してる間の見張り頼むわ」

「ん、了解。適当に捌いとく」



 クロは鞄から初期装備である冒険者のナイフを取り出すと、木からの素材回収に取り組み始めた。その間クロがモンスターの標的にされるようなことがあればそれまでの努力が水の泡だ。

 実は到着するまでよりも到着してからの方が大変かもしれないななどと考えつつ一定時間ごとに【サーチ】を発動させて周囲の様子を探る。


「1、2、3…… やっぱり多いなあ。見つからないのは無理そうだし死に戻りしないように撒くのも大変そうだなあ」

「くそっ、万能とはいえ正規品じゃない採集道具じゃ全然うまく採集できねえ…… わりいがちょっとばかし時間がかかりそうだ」

「先が思いやられるねえ、さすがにサービス開始直後に乗り込んでログイン時間全部費やして装備も揃ってないっていうのは遠慮したいから頑張ってね」

「ま、うまくいくかはお前しだいだな。俺は別に十分な装備が整ってるしな」


 軽口を叩き合ってみるがはっきり言ってちょっと気が重いかな。ここのモンスターに殺されるのは結構怖い。このゲームデスペナはやたら軽いんだけど死の恐怖感の緩和っていう点では意図的にか知れないけどほとんどされてないんだよね。


 何かを守るために戦うよりも攻めに行く方が好みなんだけどなあ。なんて、そんなことを思いながら僕はクロの採集時間確保のために頑張る覚悟を決めた。

ミラルダさんの本編登場予定は今のところありませんww

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