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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第一部 VRMMO編
12/162

縛り11,栄養ドリンクは一日一本まで

意外(でもない)なあの子の視点でお送りします。

 【製薬】スキルの熟練度を上げるために地道に薬草系のアイテムを採集していたところフレンドコールが届きました。


『こんにちはリンドウさん、クロです。今ちょっと良いか?』

『こんにちは、ちょうど休憩中だったので大丈夫ですよ。もうポーション使い切ったんですか?』

『違う違う、まあそれもあるんだけどな。実は俺のツレがリンドウさんに会うって言い出してな。居場所は知らないはずなんだけどもしかして東の平原で採集してたりしないよな?』

『してますけど、それが何か?』

『そうか、すまん』

『?』


 一体何に対する謝罪なんでしょうか、まあわからないなら気にしなくていいかもしれませんね。とりあえず次にスタミナが切れたらお昼ご飯を食べに一回街へ戻りましょう。

 会話している間にスタミナもあらかた回復したので採集を再開するとします。クロさんは無造作にほいほい根っこごと引っこ抜いていましたが私はあんなふうにきれいには抜けないので必要なものを見分けてナイフで葉っぱに傷をつけないよう丁寧に切り取ってはアイテムバッグに収納していきます。

 周りの人たちも基本的には採集にいそしんでいるのでフィールドとはいえこの界隈はとても静かです。

 が、そこに風変わりな闖入者が現れました。


「到着っと、さて、クロが仲良くしそうなのはどの人かな?」


 中性的な良く通る声が辺りに響きます。この採集エリアに走って突っ込んでくるだけでも変わっているのに、彼女の外見はそれに輪をかけて変わっていました。

 まず、顔立ちは声に似て中性的で、髪型しだいでは男性だといわれても納得できそうな外見をしています。体格は小柄な部類ですが、引き締まった体つきをしていてか弱いという印象は受けません。まあこのあたりはアバターなので多少変わっていたとしても特にいうべきことはありません。

 変わっているのは彼女の服装です。このゲームでは初期装備や所持品がおざなりな代わりにゲーム開始時にはそれなりの金額を持ってスタートするようになっているので、たいていのプレイヤーは初期装備は適当に処分して自分に合ったものを買うか、初期装備の上から何か見栄えのするものを身につけます。むしろ装備品の調達をせずに遊ぶゲームではないといってしまっても良いでしょう。かくいう私も防御力こそ低いものの安価で見栄えのするものを選んで装備しています。

 にもかかわらず彼女は初期装備のぶかぶかのシャツとズボンによれよれのサンダルという非常に悪目立ちする格好をしています。それに聞き間違いでなければ彼女の口から「クロ」という名前が聞こえたような気がします。彼女はいったい何者なのでしょうか?


「リンドウさんだよね、今ちょっといいかな?」

「へ? 私ですか?」

「そうそう、僕はユーレイ、よろしくね」


 え? なんで彼女は私の方に向かってきてるんでしょうか? しかも、幽霊って? それにそもそも


「ええと、なんで私の名前を? どこかでお会いしたことありましたか?」

「ううん、その反応からして君がリンドウちゃんであってたみたいだね。とりあえずフレンド申請しとくからよろしくね」


 何がなんやらわからないまま出されたフレンド申請を承諾してしまいました。

 とりあえずフレンドリストから分かる情報を見ると、ハンドルネームはユーレイでレベルは7であることが分かりました。初期装備でレベル7とかどうなってるんでしょうか? というかなんでそんな人が私に話しかけて……?


「はぁっ、はぁっ…… やっと追いついた、お前何でそんな速いんだよ」

「現役陸上部の実力思い知ったか!」


 私が戸惑っているとユーレイさん(?)の後ろからクロさんが走ってきました。以前会った時とは打って変わって前衛系の重装備でがっちり固めてます。そこまで観察したところでなんとなくユーレイさんがどうやってレベルを上げていたのか予想できました。

 おそらく寄生――自分よりも強い人とパーティーを組むことで戦闘に寄与しないでレベルを上げるという行動を実践しているのでしょう。あまりほめられた行動ではありませんが生産系のスキルを中心にしている人から見ればある程度は仕方のないことでもあります。


「僕は生産系スキルは一応とってるけど生産プレイヤーじゃないし寄生でもないよ~?」

「え!? 声に出てましたか、ごめんなさいごめんなさい!」

「ん~? いや、あてずっぽうだよ? というか普通の反応だしね、リンドウちゃんは分かりやすいなあ」


 ……もう頭の中がごちゃごちゃです、結局この人は何者なんでしょうか? というかクロさんとはどういう関係なんでしょう、昨日出会ったばっかりにしては見た感じ距離感が近そうに見えます。


「そんなことよりリンドウちゃんに話があってきたんだよ!」

「話……ですか?」

「おい、何言いだすつもりだお前! というかさっきから初対面の相手にちゃん付けって失れ……」

「大事な話なんだからクロは黙ってて!」


 ええと、これはもしかしてあれでしょうか…… 修羅場? わたしとしてはクロさんとそこまで親密になったつもりはないのですけど、彼女さんの気に触ってしまったのかもしれません。とりあえず謝っておいたほうがいいのではないでしょうか。


「あの、ごめ……」

「ポーションの味を改良してほしいんだよ!」

「え? ええと……」


 さすがにそろそろ脳みそがショートしそうです。というか体感時間を十二倍加速してる状態でこんなに酷使したら本当にショートしてしまうかもしれません。クロさんの方を見てみれば彼もあっけにとられた顔をしています。

 情報を整理してみましょう。まず、彼女の名前はユーレイさんでレベルは7。これはおそらくだけどクロさんのパーティーメンバーで、寄生ではないらしい。そして彼女は私にポーションの味の改良をしてもらいたい。


「なるほど、確かにポーションがリンゴジュースみたいな味だったら飲みやすいかもしれませんね」

「リンドウちゃんはリンゴ派? 僕としては無難に抹茶味を希望してるんだけど?」

「抹茶味ですか、なんでまたそんなチョイスを?」

「だって果物系の味にするより簡単だし、抹茶美味しいよ? だいじょうぶ! 今までコツコツ頑張ってきたリンドウちゃんなら絶対できるよ!」


 その後も彼女による説得は続き、混乱していた私は流されて抹茶味のポーションを作ることになってしまいました。私が承諾した時ユーレイさんは何やらよくわからないことを呟いていましたが、私もだんだん彼女のことをいちいち気にしたら負けだと思い始めていました。


「あ、そうだった。リンドウちゃんお昼まだだよね? よかったらこれ食べてよ」

「あ、ありがとうございます」


 何はともあれ優しそうな人でよかったと思います。お昼ご飯に持ってきてくれたサンドイッチみたいなものもとってもおいしかったです。

下書き時点では普通にメニューからレシピを選択する系統の生産方法も存在する設定でしたが、無くしました。

もしそれによって生じる矛盾とか変な描写があったら指摘してくださると幸いです。

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