縛り114,リーチ延長掴み技禁止
ちょっと短いですが、キリがよかったので。そろそろサブタイトルが浮かびません。
「これがダンジョンの入り口?」
「おう、まあ誰かが入るところを見たりしなきゃそうそう分からない感じだけどな」
基本的に雑魚敵は無視する形で森の中を進み、昨日クロとリンドウちゃんが場所を確認しておいてくれたダンジョンの入り口に到着。したんだけど、パッと見ではぜんっぜん分からないねこれ。
目の前にある二本の木の間がダンジョンの入り口らしいんだけど、周り一帯森だし、木とか文字通りそこら中に有るわけで……
「ダンジョンなんて有ったのかこのゲーム」
「マップ攻略中にうっかり踏み込んだりしちゃってなくてよかったねー」
「そんなダサいことしねえし。……たぶん」
「リーダーがナンダゴンドさんだし索敵とかマッピングとか二の次にしたパーティー構成だったもんね……」
エックス君とそんなやり取りを交わす間も、目線は入り口と言われて紹介された木に固定。街で聞いた話では、『木と木の間から違う景色が見えたらそこがダンジョンの入り口』っていう話だったけど、入口の木に何の特徴も無いなんてことってある? う~ん? 門の形に曲がってるっていうことも無いし、木の種類の差とか見ただけで分かるほど植物の見分け方に精通してないし…… 葉っぱの形とか? 遠のいた気がする。見た目にもヒントが有りそうな気がするんだけどなあ。
「クロはこれどうやって見つけたの?」
「見つけたのはリンドウだぞ。俺は全然分からなかった。言われてみれば景色が違うのも分かるが、向こう側も結局森だしな」
「クロがうっかり入っちゃったところを目撃したとか?」
「なわけないだろ。はぐれないように対策取った上で行動してたっての」
「どうやって見つけたのリンドウちゃん」
「いえ、見つけたというか、私も全然気付いてなかったんですけど、全く同じ木が並んで生えてるのが珍しいな~って言ったらクロさんが向こう側の景色が違う気がするって」
「全く同じ、木…… ああ! ホントだ!」
二本の木を同時に見比べてみれば、枝ぶりも、幹の歪みも、うろの形も、なんなら葉っぱの枚数までぴったり一緒! なるほど~。
ところで、はぐれないように対策って具体的にはどんな対策取ってたんだろうね? 一番シンプルなところだと手を繋ぐとか? まあ流石にそれは無いよね二人とも片手がふさがっちゃうわけだし。順当にロープでお互いの体を繋いどくとかかな。
「時間あるなら別にどうなってるのかの確認しても良いが、そうじゃないなら口頭で……」
「「実際に試してみたい!」です!」
エックス君とセリフが被っちゃった!? とか言ってる間に飛び出した老師が入口の木の裏側に回り込んでいってしまった。抜け駆けずるい!
「おお? おお?」
「えっ、何それ面白い! ちょっと老師そこで手を広げて見せてよ」
「こうか?」
右の木の裏から勢いよく回り込んだ老師が、その直後に左の木の後ろから出てくる。気の間から見える景色は一切変化なし。
首を傾げながら行ったり来たりする老師にリクエストして両手を左右に広げてもらえば、左右の手がそれぞれ右の木と左の木から伸びているような感じに。
「裏側どうなってるの!?」
気になって自分でも回り込んでみれば。真横を過ぎたあたりから、二本あったはずの木が明らかに一本しかない。面白くなってぐるっと回り込んでみたり。気の太さ的に腕を回して自分の手が掴めるかどうかっていう感じだったので、ぐるっと手を回してみたり。
「ねえねえこれどうなってるの?」
「見てて凄い変な感じになってるな。腕が一回途切れてもう片方の木から唐突に伸びてる。」
「何それ僕も見たい!」
「はっ。年上の癖にはしゃぎすぎだろ。……なんだこれおもしれえ!」
悪態をつきながら、ダンジョンの入り口に一歩入ってみたり、顔だけこっちに出してみたりするエックス君。その横でキリコさんも無言でぴょこぴょこしてる。
「そろそろ気は済んだか?」
どうなるのか気になって、左手を幹に巻き付けたまま、右手をエックス君の顔が有る辺りにに伸ばしてみる。
「わっ、なんだよびっくりさせんな! ん? おお? おおー!」
慌てて一度顔をひっこめたエックス君だったけど、目の前に僕の腕が無いことに気付いて顔を出して、左右をひょこひょこと見比べてる気配が伝わってくる。気になって顔を幹から覗かせてみても、全身が入口の正面にないと駄目なのか、普通に僕の腕と一本の木が見えるだけ。
「どんなふうに見えてるの? 断面とか見えちゃってる感じ?」
「グロいこと言うなよ!? なんか、よく見ようとするとふわっとした感じになる!」
「なにそれ! ちょっと交代交代!」
エックス君と交代しようとしたところで、後ろから硬質な何かに頭をむんずと掴まれる。
「気は済んだか……?」
「あ、あと十秒だけ?」
「お前の用事ってことを忘れんなよ?」
「はーい」
洞窟の時は入った人が見えなくなるくらいだったからそんなに面白くなくてこんなふうにいろいろ試さなかったらつい、ね?
その後、クロにも協力してもらって一分くらい全力で遊んだ。楽しかった!
近所のイタリア料理屋さんで小説を書くことがわりと多いのですが、頻繁に通い過ぎ、ついに先日「よければアルバイトとかしてみませんか?」と声をかけられる案件が発生しました。笑い話です。
恥ずかしかったですが居心地がいいので今日もそのお店で書きました。




