縛り10,牛肉禁止
今日は作者は模試ですが関係なくアップします。
残念浪人ぷぎゃーとか嘲笑いつつ楽しんでください。
ユーレイさんは今日も絶好調です。
復活場所である神殿を出て、さしあたっては昼食をとることにした僕達は町を東西に走る大通りを目指しつつ、昼食の内容を検討していた。
「やっぱりせっかくの最新鋭VRゲームなんだしゲームの中ならではのものを食べたいよね。『あの肉』とか」
「いや、ここはやっぱり奇をてらったものよりも無難なものをチョイスするべきだろ、どうせまだ【料理】のスキル熟練度がそこまで育ってるやつもいないだろうしな」
「見事に意見が分かれたね。僕としてはまあ別にNPCの店でも構わない気はするんだけどね」
「いやいや、そこは初志貫徹するとこだろ。つってもこんなことでもめるのも馬鹿らしいし大通り沿いに歩いて最初に見つけたプレイヤーの店で食うってことにすればいいんじゃねえの」
クロはこんなことというが大事なことである。プレイヤーの中には現実では体調の問題で満たすことのできない食への欲求を満たす為だけにVRコンテンツに手を出す人だっているのだから。まあそういう人たちは普通RPGで実行しようとは思わないのだろうけど『AWO』であればそういった客層も取り込んでいても何の不思議もないぐらいには他の追随を許さないリアルな感覚が実装されている。
とはいっても『あの肉』を始めとしたゲームならではという料理が現状で回ってる保証もないので、とりあえずはクロの提案に乗って料理を売っている店を探すことにした。
「お、あれ料理売ってる店じゃね?」
「なかなか目ざといね、確かにあの屋台は食べ物を売ってるとみて間違いなさそうだよ」
「しかしやっぱ今の時点で大通りにちゃんとした店を構えてるプレイヤーっていねえのな」
「まあ考えてみればそうだよね」
「すいません、この店は何を売ってるんですか?」
「へいらっしゃい! 今日扱ってんのは見ての通り由緒正しいドネル・ケバブだ! 嬢ちゃんかわいいから安くしとくぜ?」
「またまた~、オッチャン口がうまいね。そういうおっちゃんもその髭にはキャラメイクの時にこだわりつくしたと見た!」
「分かってるじゃねえか! で、注文はどうする? 串なら一本150リラ、ラップはひとつ250リラだ」
「後ろのお肉は両方おんなじやつ?」
「いんや、色が薄いほうはホーンピッグの肉で濃いほうがスリープゴートの肉だ。どっちも俺が狩ったんだぜ」
「ひゅー、オッチャンもやるじゃん! じゃあ僕はそれぞれ一個ずつラップでお願い。クロはどうする?」
僕がオッチャンと話してる間ずっと無言だったクロに問いかけると、クロはかなりバツが悪そうな顔をしつつ豚肉の串を一本だけ注文した。
本来のクロは僕以上に食い気が盛んなことを考えるとありそうなのは所持金があんまりないってとこだろうけど、今朝それなりに貴重な素材を売りに行ったはずなんだからお金がないというのも変な話だ。まあ大体予想はつくけど。
「確かに宿屋のご飯に比べたら高いけどここはケチるタイミングじゃないと思うよクロ」
「ほら、やっぱ装備も新調したいし、そこまで腹も減ってねーしさ」
「やれやれ。オッチャン、羊と豚のラップ一個ずつ追加で!」
「おう、そんなひもじそうな顔して我慢はよくね―な! 全部で900リラに負けといてやるよ! 次来るときはそんなダセー格好すんじゃねえぞにーちゃん!」
常時ハイテンションと思われる屋台のオッチャンに代金を渡して、料理ができるまでの間しばし待機する。オッチャンは慣れた手つきでゆっくりと回っている肉の塊から十分に火の通った部分をそぎ取り、串に刺したものをクロに手渡し、続いて四枚のトルティーアを用意するとそこにさっきよりも小さめに削いだ肉を始めとして数種類の野菜とソースの様なものを手早く乗せて中の具を包み込むようにトルティーアをまいて四つのラップを作り上げた。
「へいお待ち! オッチャン特製激ウマケバブだ!」
「「いただきます」」
オッチャン自ら激ウマと豪語するだけあってケバブはかなりおいしかった。元となった動物の肉とよく似ているけど同時に独特の味を持つ肉を中心に、葉野菜や根野菜と思しき千切りがさっぱりした味わいを、お手製のソースが程よい刺激を演出し、コシの強いトルティーアがそれらを見事に一つに纏めている。
「ん~、美味しい」
「…………」
「さっきからテンション低いよ? せっかくの美味しいお昼なのに」
「……わりいな、奢らせちまって」
「そんなこと? どうせクロのことだし相手の金銭事情を気遣ってちゃんとお金を受け取らないぐらいはすると思ってたし、気にしてないよ」
「わりい」
「だから気にしてないって」
「お前あとどのくらいカネ持ってる?」
「今月はあと二千五百円くらいかな?」
「いや違うだろ」
会話しつつも一つ目を完食して二つ目を食べ始める。あ、さっきのと野菜もソースも違う。手が込んでるなあ。
「この後は回復アイテムを補給してリベンジするってことでいいんだよね?」
「そうだな、俺が補給してる間お前はどうする?」
「今回は一緒に行くよ、クロが首ったけの相手も気になるしね」
「バッ、そんなんじゃねえし!」
見た目の割に初心なクロを適当にいじりつつケバブを食べ終える。軽く手を合わせてからオッチャンに挨拶する。
「ごちそうさま、美味しかったよ」
「そういってもらえると料理人冥利に尽きるってもんだな!」
「ごちそうついでにいくつかお願いしてもいい?」
「いいぜ!」
「内容聞かねえの!?」
「クロ、ツッコミは無粋だよ」
「で、お願いってのは?」
「テイクアウト用にヤギ肉のラップを一個包んでほしいんだよ、あとできたらフレンド登録もお願いしたいな。また食べに来たいからね」
「おう、その位ならお安い御用だ! 俺にとっても最初のお客さんだしな! これからもよろしく頼むぜ」
オッチャンと握手を交わしてフレンド登録した。登録名が『おっちゃん』だったのには軽く笑った。
クロももう豚肉の串を含めて全部食べ終わっているし、周囲に昼食を求めるプレイヤーの姿も増えてきたのでそろそろお暇することにする。
「さて、リンドウさんに会いに行くとしますか」
「なんで名前知ってんだお前!」
「え? 僕の目の前でフレンドコールしてたじゃん? まあフレンドコールの時に発信内容に合わせて唇を動かす癖はやめたほうがいいと思うけどね」
「…………いや、もう何も言わねえよ俺は」
「さて、じゃあ東の平原の採集場所に出発~!」
「何も言わない何も言わない何も言わない何も言わない……」
腹ごしらえも済ませたし、気のいいおっちゃんとフレンド登録も出来たし、今日は本当にいい日だね。願わくばこの後楽しくクロをいじってついでに目的も達成できればいうことなしだね。
今の時刻は11時半、お土産を持って人を訪ねるのにはぴったりだね!
誤字チェックちゃんと出来てるか不安です。
もし見付けたら報告お願いします。
あとがきに何かを盛り込む余裕がない……




