縛り105,銀行利用禁止
そういえば誤字報告機能がページ下部に追加されたらしいです。
誤字報告と修正が楽になったとか。
「はふぅ~」
「はぁ~。もうちょっと温度上げよっか?」
「お願いします。ふぅ……」
「了解~」
コンロの熱源でアツアツに加熱された石ころを火箸で取り出して、ヤカンの蓋のくぼみに置くと、くるっと二重蓋が回って中に落ちる。勢いよく蒸気が噴き出るのをしばらくぼーっと眺めて、落ち着いた頃合いでもう一個。うん、こんなもんかな。
「ありがとうございます。体を動かして汗を流すのとはやっぱり全然違いますね」
キリコさんはすでにぽつぽつと汗を浮かばせてる。サウナ気持ちいいよね。
「背中とか洗おうか? あんまり上手でもないけど」
「お願いしてしまっても良いですか? でも石鹸とかはどうするんでしょう?」
キリコさんの問いに対して、アイテムボックスから一つの包みを取り出す。凄いねアイテムボックス。お風呂セット要らずだよ。
で、取り出したのは塩。食卓塩みたいなやつじゃなくて、ちょっと粗くて、不純物が入ってるのかちょっと色も有るやつ。
「なんですかそれは? 石鹸には見えませんが…… 手でこすると泡だったりするのですか?」
「いや、石鹸じゃなくて塩だよ~。塩サウナ的な? なんか現実にもあるよねそういうの。たぶんなんかそんな感じのやつだね。正直僕もよく分からないけど、汗が出やすくなったりするのかな?」
「理屈が分らなくてもさっぱりするなら何でも構いません。お願いします」
「はいはーい」
まあ物は試しということで早速包みの中の塩を手に取って、手に取って? 浴衣ってこの場合どうするのが正しいのかな……
ちょっとだけ迷っていたら、背後で引き戸がガラガラッと音を立てて勢いよく開いた。
「話は聞かせてもらったわ! そんな何も分かってない状態で乙女の体を洗おうなんて言語道断横断歩道よ!」
「うひゃあぁつ!?」
「あ、ミルフィーユさんおはよー。コノカさんは?」
「来てますよ~。ここの確保をお願いしたら~、同席すると言って聞かなくて~」
二人が来たのは当然のことながらというか事前に僕が呼んだからだね。キリコさんの予定というかしなきゃいけないことは攻略情報を取りまとめてるアレクサンドロスさんのグループ(実質コノカさん)への報告。多少気づまりかも知れないけど、この際だからここで済ませちゃえばまったり気分転換も済んで一石二鳥って作戦だね。
ちょっとの間戸惑ってたけど、一緒に風呂に入るだけで、服も着てるっていう状況ですf具に落ち着いたのか、早速コノカさんへの報告会が始まった。
「それ道具屋で売ってるいっちばん安い塩でしょ? そんなので済ませるなんてナンセンスよナンセンス!」
「まあそうだけど、でも塩ってそんなに変わる? 塩は塩じゃない?」
「あっまーい! ゲームよ!? ファンタジーよ? フレグランスはもちろん肌を傷めないようになってたり、汚れを分解して清涼感が増したりするようなのがいろいろあるのよ! 風呂の時点で贅沢なんだから今ケチってどうするのよ!」
「えっと? それは、確かに……?」
塩なのに甘いとはこれいかに。なんて、ちょっと困惑を誤魔化してみる。
フレグランスって香りっていう意味で合ってるっけ? で、ファンタジー的にいろんな効果が付与されてたりするってことかな。う~ん、全然ピンと来ないや。
というか種類がいろいろあることも初耳なんだけど、どこでそういう情報ゲットしてくるんだろう。
「ミルフィーユさんって何回くらいここ利用してるの?」
「多いときは一日三回ね。まあ大抵は朝夕の二回だけよ」
「えっ、ここって有志のプレイヤーで順番管理して大家さんに迷惑かけないようにしてるって聞いてるけど……」
「管理してるの私よ? 今急ぎで貸し切り状態にしてあげたのものね! あがめなさい!ま、大抵グループ利用だから、人数少ない顔ぶれの時に一人追加で入れてもらうくらい相談すれば何とかなるのよね~。利用者だいたい顔見知りだしー?」
累計での回数を聞いたつもりが、一日の回数が返ってきたよ!? というかそれは職権濫用って言うんじゃないかな!?
ああ、ミルフィーユさんの後ろでキリコさんと話してるコノカさんのこめかみに青筋が…… 顔は普段と同じ笑顔なのに……
「で、そっちのあなたの背中を洗おうって話よね? 私に任せなさい! 私は背中流しのプロよ!」
「いや真面目な話してる真っ最中だと思うけど!?」
「ええ? お風呂で真面目な話とかあり得ないでしょ。気のせいよ気のせい」
ああ、行っちゃった……
「さあ、好きなの選ぶといいわ。こっちの三つはハーブ系、こっちの四つはシトラス系、定番の花の香りのやつは好みがいろいろだろうから実際に手に取ってみて頂戴」
「あの、何の話でしょう?」
「何って、背中洗うのに使う塩の話よ? 他に何が有るのよ」
「ミルフィーユさん~? 今は~、キリコさんから~、最前線の報告を受けてる~、途中なんですよ~?」
「ええ!? あなたたち本当に真面目な話してたの!?」
どうしようという顔でこっちを見てくるミルフィーユさん。いや、こっちがどうしようだよ!?
「そういう訳ですから~、そちらでくつろいでいてください~」
「いやいや、この場合正しいのは私よね? それけっこう長くなる話でしょ? せっかくのサウナでそんなことしてどうするのよ。っていうか確実にのぼせるわよね?」
「それは~、そうですね~」
「まずは風呂を思いっきり楽しむのよ! 話の続きは朝ごはん食べて、紅茶でも飲みながらゆっくりしたらいいじゃない」
「キリコさんは~、忙しいのでは~?」
問いかけられて、どうしようという顔でこっちを見てくるキリコさん。だからなんでこっち見るの!? いや、今回に関しては僕がこの後誘ってるからだけどさあ。
「長風呂しすぎは体に悪いし、いいんじゃないかな?」
「じゃあ、決まりね! 私前から気になってた喫茶店のモーニング、いつもいつも誰かさんがその時間帯に予定を入れるせいで行きそびれてるのよねー! テラス席がきれいでケーキがおいしいって評判なのよあそこ!」
輪をかけて上機嫌に、鼻歌を鳴らし始めながら次々と包みをアイテムボックスから取り出して並べていくミルフィーユさん。って、まだあるの!?
「こんなところかしらね、さっ、どれにする? ブレンドしちゃってもいいと思うわよ」
「えっと、どれがどれだか全然わからないんですが……」
「あ、フレグランスよりも効能で選ぶ? こっちの方のが美肌系、すべすべ、サラサラ、もちもち、しっとり。こっちの方のは香りの方の効果が上げてあるやつね。リラックス系がやっぱり多いわね、集中力向上、忍耐力向上……はなんか違う気もするわね。体の疲れを取るやつはあんまり買ってないのよねえ」
「ええっと……」
情報量の多さと真正面からぶつけられるキラキラ女子オーラ(実態がどうかは別だけど)にあてられてキリコさんの目がぐるぐるしてるね~。
あっ、コノカさんが目線でどうしたらいいのか聞いてきてるね。というより止めたほうが良いのか、かな? いや、放置でいいんじゃない?
「これ? ああ、これね! 私も一回使ってみたけどけっこういい感じだったしいいチョイスだと思うわよ。さっ、脱いで脱いで! ついでにマッサージもサービスしてあげるわよ!」
「えっ、着たままやるのでは……」
「あなた浴衣も安いヤツでしょ? それ着たまま寝転がったらごわごわして居心地悪いわよ? 女同士で恥ずかしがることなんてないじゃない。ほらほら」
「わっ、自分で脱ぎますから!」
「はい、タオル。枕代わりに使うと良いわよ」
「な、なんだかタオルまで良い匂いがします……」
「あら、気付いた? 四番通りの洗濯屋さんの有料オプションでお香で焚き染めてもらえるのよ!」
見事にミルフィーユさんのペースだね…… ところでさっきから消耗品やら衣類やらぽんぽこ出してる上に、洗濯屋さんの有料オプションって、資金源はどうなってるんだろう。そう思ってコノカさんの方に目線を向ければ笑顔のままだけど目が諦めで濁りまくってた。
「もしかして……」
「はい~、ミルフィーユさんの~、装備は~、ここ二週間ほど~、更新されてません~」
「ええ……」
アレクサンドロスさん達のグループは、非攻略組へのフォローも兼任してる関係上、積極的に装備を更新して生産者への支援にするような方針だったと思うんだけど…… むしろ二週間前には装備の更新したの……?
「その更新も~、ドロップしたアクセサリの~、見た目が気に入ったとかでしたね~」
「………………」
「多少の散財はしてても~、貯金して良い装備に替えるつもりなのかと~、思ってたんですが~」
うん、間違いなく貯金してないよね…… 使う金額を決めて買い物してる人の持ち物じゃないよあれ。ちょっとでも心惹かれたら軽率に買ってるよ絶対。
ステータスによる美容関連の恩恵
VIT 肌が丈夫になり結果ハリのある肌が保ちやすい。
STR 代謝が活発になるので美容全般に有意。ただし汗をかく分化粧崩れに注意。
MND ストレスに強くなりストレス性の肌荒れが減る。
と、前衛の人は肌質が良くなりやすいですが動き回って泥まみれになるのも前衛なので美容のために前衛やる人はいないでしょう。というかステータスと美容の関係とかきっとミルフィーユさんの周りの人以外気にしてません。




