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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第三部 マイペース攻略準備編
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縛り104,風呂屋での体力最大値強化禁止

「着替えないんだ?」


 宿屋を出て歩いてる途中で、キリコさんの服装が変わってないことに気付いた。着替える時間ちゃんと取ればよかったかな?


「こんなドロドロの状態で着るのは少々申し訳ないので……」

「確かにちょっと気になるもんね。まあでももう着いたからちょうどいいかな!」


 宿屋から十分も歩けば目的地だからね。とはいえこの街ってなんだかんだけっこう広いよねえ。街の反対側に行くなら門を出て街の外を迂回したほうが早いっていう謎仕様も有るし、けっこう長期的にプレイヤーの拠点になるようなデザインなのかな?

 とにかく、目的地に着いたので立ち止まってキリコさんの反応を待つ。


「ええっと、ここは? 見たところお店でもないただの民家に見えるのですが」

「うん、基本的にはただの民家だよ。でもここで発生するサブクエストみたいなのが有って、それをこなすと部屋を貸してくれるんだよね」

「部屋ですか? それと私を連れてきたことに何か関係があるのですか?」

「うん、部屋は部屋でもただの部屋じゃないからね」

「ただの部屋じゃない? なにか魔法の部屋とかそういうものですか?」


 興味深げにこちらを見てくるキリコさんに、口の形だけで答える。


「それは……! いえ、私が勘違いしてるだけかもしれませんしもう一回ゆっくりお願いします。出来れば声も出して!」

「お、ふ、ろ」


 返事は無言のガッツポーズ。ここまで喜ばれちゃうと期待してたものじゃなかったときの申し訳なさが凄いから予防線張っとかなきゃ。


「まあ、文化の違いなのか維持管理の問題なのか僕らの感覚だとお風呂って感じはしないものなんだけどね」

「そう、ですか……」

「でも気持ちいいし疲れが取れるのは保証するよ!」


 会話を交わしつつ扉を開けば中が見えないように衝立が有り、その向こうは早速脱衣所。家主さんが済んでるのは隣の建物なのでここは本当に風呂の為だけの建物だったり。


「じゃあさっと準備してくるね」


 脱衣所と風呂の間の引き戸をずらせば、湿気と温度をがっつりと含んだ空気が流れてくる。まだ温め始めてないのにすでにけっこうあったかいね。朝一で利用した人が誰かいたのかな?

 部屋の中には、腰を掛けるように一段高くなった台と、部屋の隅の低い位置にコンロが置かれてる。脱衣所もだけど元々個人宅のものだからあんまり広くないんだよね。

 コンロの上のヤカンのようなものに水瓶の水を注ぎ、コンロのスイッチを入れる。熱源は真っ赤に光る石っぽい何か。ちょこちょこファンタジーだってことを主張してくるよね。コンロの中には熱源とは別に拳大の石が3個ほど並んでる。そこに脇から石を2、3個足しておく。これで準備は完了。


「なるほど、風呂は風呂でも蒸し風呂ですか」

「せいかーい。苦手だったりする?」

「いいえ、蒸し風呂も好きです。久しぶりにゆったりと湯船につかりたかった気持ちは有りますが……」

「個人宅だと共用の井戸から水を汲む関係で難しいらしいんだよね。アイテムボックス駆使して大きな桶と十分な水を自前で用意すればどうにかなるとは思うけど」


 ちなみにここの家主さんもたまには湯船でゆったりしたい人らしく、ここでのクエストはひたすら水をくみ上げて階段を上って貯水槽に注ぐっていう内容だったり。クエスト中もお水は自分のものじゃないからか、アイテムボックスに入れて運ぶことは出来なかったけど、クロが活躍したので問題は無かったよね。

 誰とは言わないけど、このクエストの第一発見者の女性は、STRに一切振ってない純支援型ビルドにも拘らず一人で貯水槽を満たし切ったらしいよ。それも他の案件全部すっぽかして。流石と言うかなんというか、どれだけお風呂好きなんだろうね……


「あっ、そうだ着替えがいるね。はいこれ」

「なるほど、そういう文化でしたか」

「なんだかんだ全年齢対象だからね~」


 袖の短い浴衣のような、ごわっとして厚みのある素材の浴衣をアイテムボックスから取り出してキリコさんに渡す。


「洗濯に耐えるような素材じゃない代わりに凄く安いらしくて、それに汚れも汗も全部吸わせてそのまま廃棄するんだって。まあそれでも一着使い潰すわけだからかなりの贅沢なんだけど」

「ユーレイさんは湯着には着替えないのですか?」

「僕はほら、普段着がこれだからね。汚れにも強いし丈夫とかいう次元じゃないからこの後他の装備に着替えてガッツリ洗濯するよ」

「え、もしかしてそれ脱げないんですか?」

「あれ? 言ったこと無かったっけ? これ全部呪いの装備だから変更は出来ても脱ぐのは出来ないんだよね」


 あっ、驚いて固まっちゃった。言われてみるとわざわざ装備やプレイスタイルの話をすることってあんまりなかったかも?


「その話は置いておいて、今はお風呂だよ! さっ、着替えて着替えて!」

「そ、そうですね! 一人だけ着替えるというのはなんだかちょっと恥ずかしいですけど……!」


 恥ずかしいと言いつつも、風呂が楽しみなのか景気よく服を脱いでいくキリコさん。う~ん、浴衣も装備だから脱がなくてもメニューから一瞬で着替えられるんだけどねー。

それにしてもキリコさんスタイルいいなあ。鍛えてる人特有の引き締まった身体っていうだけじゃなくて、なんというか、後頭部からかかとまで、綺麗に一本の柱が入ってるような姿勢の良さが有るんだよね。


「キリコさんってリアルでなにかやってたりするの?」

「唐突ですね? 剣道と居合道を少々やっていますよ」


 なるほどねー。やっぱりそういうのやってると姿勢良くなるのかな?


「キリコさんは段位とか持ってたりするの?」


 そう訊ねると、何故かピシッと聞こえてきそうな勢いで固まるキリコさん。

 今の質問に何かおかしなところあったっけ? 僕としては自然な雑談のつもりだったんだけど……


「ええ…… 四段を先日取得しました」


 うん、剣道には詳しくないけど四段は少々とは言わない気がするよ何となく!

 そんな僕の驚きを余所に、キリコさんは何故か早口で言い訳のようなものを始め出した。


「四段ではありますけど四段を持ってる人の中では若い方ですから! 最年少とは言えませんけど! なのでその驚いてるような顔はやめてくださいっ!」

「若い? えっと……? 別に年上なことには驚いてないよ? というか段位と年齢って関係あるの?」

「あっ。いえ、何でもないので忘れてください。はい、私は四段です」

「気になるんだけど」

「さあ、着替え終わりましたよ! お待たせしました! お風呂楽しみですね!」


 う~ん、聞いてみたかったけど、確かにお風呂を楽しむのが優先だね。実は僕もまだ二回目だし思いっきり楽しまなきゃ!


 寝不足や疲労のたまった状態でのサウナは危ないので真似しないでくださいね!


 剣道の段位は条件に一つ下の段位を取得してからの年数が絡むので、段位持ちの設定のキャラは少なくともその段位が取れるくらいの年齢だったりします。五段なら23歳以上ですね。

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