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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第三部 マイペース攻略準備編
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縛り103,使わない装備品の売却禁止

 ワンシーンちょっと挟もうと思ったらそのワンシーンで1話丸々食われたどころか普段の5割増しの文章量になっていた…… 書きかけの分が有るから更新間隔短くできる! とか思ってたはずなんですけど……

「えっと、ここは? 宿屋ですか?」

「そそ、僕たちが拠点にしてるとこ。本命の行き先じゃないけどね」

「本命?」

「さっ、まずは採寸するから入って入って!」


 宿屋の玄関を開けて中に入ると眉間に皺を寄せてこちらを睨んでるクロの姿。


「こっそり宿屋を抜け出して何をしてたのか聞かせてもらうぞ?」

「ちょっとナンダゴンドさん達の出迎えに! キリコさんいらっしゃーい」

「お邪魔します」

「ええっと、お久しぶりです?」


 怒る気満々なところ悪いけど、こっちには同行者がいるからね! こういうアドリブに弱いのとついついちょっと猫を被っちゃってる間に僕のペースだよ!


「ほら、今から採寸するからクロは部屋に戻ってて! スミスさんは起きてる?」

「あ、ああ、長丁場になりそうだから徹夜はしないよう気を付けるって言ってたしもう起きてると思うが……」

「じゃあちょっと声かけてきて!」


 出迎えに行くような関係だったのか? いや、そもそもそれってこっそりやることか? なんて、首を傾げつつも、この場にとどまる選択肢は持っていないクロはそのままスミスさんを呼びに二階へ。追及の躱し方が我ながら完璧すぎるね!


「さっ、スミスさんが降りてくる前に採寸済ませちゃおっか!」

「ええと、これはどういった状況なのでしょうか……?」

「一度も顔見せずにこのまま外出続行すると流石に言い訳できないっていう僕の事情と、キリコさんの普段着の確保を兼ねて一度宿屋に寄るって伝えてなかったっけ?」

「伝えられてません。はあ…… というか、採寸なら防具を作る時に使った数字が有るのですが」

「服と防具だとやっぱりちょっと必要な数字が違うらしくて。というか、防具は服とか鎧下とか想定して作るからサイズよりもちゃんと負荷が分散される形にするのが大事とかなんとか? 僕はそこらへんよく分からないんだけどね」


 ため息を吐きつつも協力的なキリコさんのお蔭で、採寸はスムーズに終了。いろんなところをのサイズ測ってる中で何か納得したみたいだったけど、SMLくらいの区分でサイズ有ってれば大丈夫な服装してる僕にはやっぱりよく分からないね!


「おはよう。今朝は随分と早かったね」

「あ、スミスさんおはよう」

「えっ! 男の方だったんですか!?」


 これ何時ごろに宿屋抜けだしたかばれてるやつだよ!? まあスミスさんはめったやたらと告げ口とかするような人じゃないから大丈夫だとは思うけど……

 何故か動揺してるキリコさんはちょっとスルー。というかちらっとは顔合わせてるよね?


「なにか、服装の好みとかはあるかな?」

「えっと、いえ! あの、私はそういうにょは全然っ!」


 うん、盛大に噛んだね。助けを求めるような視線が飛んできたので、スミスさんにはちょっと待ってもらって作戦タイム。


「え、もしかして男の人苦手だったの? そっちのパーティー男の人ばっかりだしそういうのは想定してなかったんだけど」

「いえ、男性が苦手なわけではないのですが。ちょっと話題の内容が苦手で、心の準備も出来てなかったものですから」

「話題って? 服装のこと?」

「………………」


 気まずそうに黙ってしまったキリコさん。あれ? 服の調達自体は割りと前向きな印象だったと思うんだけど、もしかして余計なお世話だった……?


「採寸とかしちゃったけど、別に本来の用件とは関係ないんだしここでやめにしても大丈夫だけど」

「いえ、私だってこんな戦闘用の丈夫さだけを売りにしたような服ではくつろげませんから、服が欲しく無いわけじゃありません。ただ……」

「ただ?」

「服を入手するというのが気合いの要る行為であることを失念していました」


 気合い……?


「普段はどうやって服を調達してたの?」

「半年に一回くらい、友達に連行されて、半日心を無にしていると財布の中身が服に変わります」


 うん、友達に恵まれてるね!


「キリコさんってもしかして学校のジャージとか部屋着にしてたりするタイプ?」

「っ! どうしてそれを!」


 僕もしてるからとはさすがに言えないよね。お洒落なんてどんと来いっていう風を装っておかなきゃ。ここで見捨てたらそれこそ敵前逃亡されそうな気がするし!」


「まあでも、友達に服を選んでもらうのとそんなに変わらなくない? 簡単に好みだけ伝えて後は待っとけば服が手に入るよ?」

「変わりますよ! だってこれ言ってしまえばオーダーメイドじゃないですか。いきなりそんなの無理ですよ! 普段田舎によくあるショッピングセンターの二階とかで五年くらい前に買った服とか来てる人に無理言わないでください!」

「じゃあほら、ゲームのアバターの着せ替えだと思えば」

「アクションゲームしかやりません! 性能が良くて悲惨な見た目じゃなければ十分じゃないですか!」


 筋金入りのおシャレに興味が無いタイプの人だね。僕は現実のお洒落はさておき、ファンタジーとかSFなお洒落ならそこそこにたしなんでたりするよ。こっちに来てからSFはご無沙汰だけどね。

マイブームはノースリーブのメタルジャケットと、各種複合機能付きオープンフィンガーグローブに、重量感のある可変翼バーニア。足元は底の分厚い鋼糸の編み上げブーツで女性らしさを見せつつも力強く。お洒落じゃなくてただの装備とか言っちゃダメだよ! シンプルな衣類に敢えてデカいバーニア積むのがお洒落なんだよたぶん!


「とにかく、スミスさんを待たせっぱなしにするのはそろそろやめてちゃちゃっと一通り見繕ってもらおうか」

「ダメですまだ心の準備が出来てません」


 どう考えてもトッププレイヤーに一歩も譲らずお説教する人がヘタレる場面じゃないでしょ! 無理矢理グイグイと背中からスミスさんの方に押しやれば、観念したのか顔を上げて向き合ってくれた。


「…………………………」

「いや、何か喋ろうよ!?」

「あ! はい! よろしくおえがいします!」


 わぁ、カッチカチ。とにかくスミスさんに事情を…… と思ったけど、こっちの会話が聞こえてたのか、キリコさんの態度から察したのか、キリコさんからは見えない位置でOKサインを作ってくれてるね。じゃあ僕は見学に回ろうっと。


「そうだね。素材の問題もあってそう選択肢は多くないし、ダメなものだけ聞いて見繕うけど、それでいいかい?」

「は、はい! それでお願いします! 是非!」


 素材加工とリンドウちゃんの実験の副産物の染料とかで、衣服に関しての選択肢が少ないはずもないんだけど、言わないのが優しさだね。キリコさんすごく嬉しそうだし。


「まずは、根本的なところからかな。スカートに抵抗はあるかい?」

「そのくらいは別に大丈…… いえ、ズボンでお願いします。出来ればジーンズみたいな目立たない奴でお願いします」


 このファンタジーな世界観で一人ジーンズ穿いてたらそれこそ目立ちそうな気がするけど、まあスミスさんがいい感じに纏めてくれるかな。というかプレイヤーの人達はけっこう思い思いの服装してるしね。


「素材は布かレザーになるけど、レザーに抵抗は?」

「響きがお洒落上級者向けっぽいので遠慮させていただきたいです」

「分かった。動き回るなら革は蒸れるしね。肌触りとかは気になる方かな?」

「そこは大丈夫です! もうほんっとうに全然!」


 いきおいがすごい。まあここまでの質問にNOって返してたのが内心不安だったのかな……?


「使う武器は長剣で合ってたかな?」

「あ、はい。ええっと、これから刀に持ち替える、予定です」

「なるほど、街中でも持ち歩くことは有ると思った方がいいかな?」

「はい、お願いします」


 ここまでで聞きたいことは概ね聞けたのか、少しの間黙り込むスミスさんと、さらに緊張した様子のキリコさん。


「ふむ、分かった。じゃあササッと一揃い作って来るからちょっと待っててくれるかな? ユーレイ君、その間に部屋着の要望と、防具に求める性能も聞いておいてくれるかい?」

「うん、りょーかい」


 二階に引っ込んでいくスミスさんを見送る。キリコさんはと言えば、その後たっぷり数秒間その場で固まり続けた後、よろよろと近くの椅子に座り込むと、そのまま机に突っ伏してしまった。


「お疲れ様」

「疲れました」

「徹夜明けだもんね。苦手だと知ってたら別の日にしたのに」

「徹夜の疲労は思ったほどではないんですけどね。メンバーが疲れてたのは連日の宿泊環境の悪さと、戦闘での精神疲労のせいだと思います。これもレベルアップの恩恵なんでしょうか」

「そう言えば僕も寝不足な感じはしないかも?」


 関係ありそうなのはVIT(体力)とかMND(精神力)とか? いやいや、睡眠とかは現実の肉体の方の問題なんだからいくらゲームのステータスを上げたって必要な睡眠時間は減らないでしょ! ましてや体感時間を加速させるなんて言うことまでしてるんだから、睡眠不足は絶対危ないって。


「まあ、睡眠時間の考察はいったん置いておいて、キリコさんパジャマってどんなのが良いの?」

「着ていて楽なもの、ですかね?」

「着てて楽じゃないものをパジャマにはしないと思うんだけど……」

「それもそうですね」

「そもそもパジャマってそんなに種類が有るものなのかな?」

「無いことにしましょうか」

「じゃあ防具の話しよっか。といってもメインの装備品はどこかに頼んでるだろうし、内側に着るものかな?」


 話題を次に移そうとしたら、キリコさんが難しい顔になってしまった。せっかくさっきまでいい感じに砕けてきてたのに。


「防具も、となると流石に予算の方が……」

「あ、そういえばそこらへん考えてなかったね。じゃあ防具は次回かな?」

「というか服の分のお金もちゃんと払いますからね? いくらになりますか?」

「普段金銭でやり取りしてないからねえ。お金じゃなくて明日から一日か二日素材採集に付き合ってくれるっていうのはどう?」

「それは…… いえ、ではそれでよろしくお願いしますね」


 一瞬断ろうとしたみたいだけど、僕の意図に気付いたみたいで承諾してもらえた。気分転換になればいいけどねー。


「洗い替えも含めて同じものを二枚と、肌着を用意したよ。済まないが下着の類は余所で調達してもらえるかい? 靴に関しては多少時間がかかるから他の物と一緒の時に」

「これ全部完成した服なんですか……?」

「スミスさん前にも増して政策速度速くなってるよね」

「ごく普通の服ではもうスキルレベルはほとんど上がらないけどね」

「ひゃー」


 まあお洒落の為の服ってゲーム的にはというか、防具として見るならすごいものではないもんね。それでも凄いけど!


「さて、靴と寝間着以外にも必要なものは有るかい?」

「これから一回着てみて微調整とかはしないんですか?」

「本当はそうやって丁寧に作ったほうがいいんだけれど、そういうやり方はどうしても時間がかかるからね。この後も予定が有るんだろう?」

「有るって言っていた気がします」


 スミスさんとキリコさんが話してる間に、出来上がった服を眺める。白い光沢のあるシャツと、青みがかった黒のズボン。なんとなくスーツっぽいかも? キリコさんのイメージには合ってる気がするね! で、衣服と別に、革でできたベルトが一本。そういえばクロの防具を作る時についでに金具の類も作ったって言ってたっけ。


「特に他にいるものが無いなら寝間着の要望を聞いてもいいかい?」

「お任せします。寝間着ってそんなにいろいろあるんですか?」

「主に暖かさと肌触りかな。形状で言うならナイトドレスとかネグリジェだとかも有るね」

「ドレス……? ネグ……!?」

「というかスミスさんそんなものまで作れるの!?」

「作れることには作れると思うけど、気は進まないかな」

「普通のパジャマでお願いします! 長袖長ズボンのダボッとしたやつで! なんならジャージでも問題ありません!」


 ふむ、キリコさんの弱点はおしゃれっぽい単語と。活用する機会は無いだろうけど覚えておこうかな。

 さて、時間もいい感じになったしいよいよ本命の目的地に向かうとしよっか。

 感想欄で、『そろそろクロの戦闘スタイル特化させないと後々通用しなくなるのでは?』という疑問が上がりましたのでこの場で少し。

 結論だけザックリと先に言うなら縛りプレイの内容とスキルの仕様的に特化させても旨みが無い。ということになります。


 武器スキルは大別して、武器の習熟度に関連する【○○マスタリー】というパッシブスキルと、対応する武器種で使うことの出来るアクティブスキルを習得するものの2種類が有ります。

 つまり、一般的には同じ武器種を使い続ければそれだけ強力な攻撃スキルを使えて、動きの練度も高まるため、特化させるかサブウェポンと2種類持つのが妥当です。


 しかし、クロ君はアクティブスキル禁止という縛りを続けています。


 パッシブスキルと習得の方法が違うので今のところ習得できるスキルを見つけてない、というだけで本人は続けるつもりではないのかもしれませんがそれはさておき。

 それでもマスタリー系のスキルの熟練度は上がるのですが、マスタリー系のスキルの効果は武器使用時に攻撃力が上がるとかではないんです。

 本編でさらっと触れた気がしますが、『武器の扱い方がなんとなくわかる』というところから始まり、熟練度が上がるにつれて『該当武器種の装備品の要求ステータスが緩和される』『該当武器種の別の武器に持ち替えた際、間合いなどの感覚が擦り合わせられる』という効果が有ります。

 どんどん装備更新して強い武器に持ち替えられるし、持ち替えたときにいちいち練習し直さなくても良いよ! ってことですね。有能。


 では、それぞれの要素について、クロの場合


『武器の扱い方の基本』 …… たぶんクロが一番恩恵受けてるのがこれですね。ただ、初歩なのでスキル習得までこじつけちゃえば特化させなくてもこれの恩恵は受けられます。


『該当武器種の要求ステータス緩和』 …… クロが使うような武器は基本的にSTR(筋力)を要求する系統のものです。そして、クロのSTRはパッシブスキルでゴリゴリに強化されているため、適正なレベル帯の装備を使うのにステータス緩和が必要なことはまずありません。無くても大丈夫。有ったら有ったでスタミナ消費が緩和されますがアクティブスキル使わないのでそもそもスタミナ切れとは無縁です。無くても大丈夫(2回目)


『該当武器種間での間合いなどの経験共有化』 …… 刃渡り70センチの片手剣から刃渡り63センチの片手剣に持ち替えても以前と同じように切っ先で表面をなぞるように切るとかそういうことが出来るよ! みたいな内容の効果です。長さの違う氷属性の剣と炎属性の剣の使い分けとか考えると必須ですね。で、クロの場合ですが、同じ武器種に持ち替えが縛られるよりも武器の性質も含めて手札を選ぶ方が有利です。というか、どんな武器を使っても使い方が


 力任せに叩き付ける 


 一択なので、この効果が必要になるような繊細な戦い方はしないと言えるでしょう。そのくらいの大雑把な動きならDEX(器用さ)の補正で多分何とかなります。これも無くても良いね!


 と、ボロックソに書きましたが、クロはマスタリ―スキルの取得自体は積極的にしてますし、いつの日か輝く日も来るんじゃないでしょうか、多分来ます。


 そもそもの話をするならアクティブスキル禁止ってオンラインゲームの高難易度コンテンツに挑むような緩さの縛りではありませんよね……

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