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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第三部 マイペース攻略準備編
100/162

縛り98,魔法のランプ使用禁止

書いてた途中のものが消えたり、本編と関係のないセルフ二次創作したり、いろいろありましたが更新です。


※この作品では、概ね五行以上改行を挟まずに書かれている文章は『流し読み、あるいは読み飛ばし』していただくことも想定した上で書いています。読まないと話が分からなくなるような文章はもう少し読みやすく書きます。読みたい人だけ読んでください。



「まさか街内に図書館が普通にあったなんて…… そして図書館の仕様が不思議のダンジョン形式だったなんて……」


 街内の騒ぎも落ち着き、僕らも次のステップへ進もうということになった訳だけど。それに先立って、調べられることは調べてからやろうと、アレクサンドロスさんに話を聞こうとしたところ、神殿内に併設されてる図書館に行ってみてはどうかと言われたのが今朝のこと。

 神殿が当初はデスペナルティを受けたときの復活地点でしかないと思われていたからここまで発見されず、話題にも上らなかったんだろうね。発見されてるにも関わらず僕以外の利用者いないけど! さらに言うと司書の方もいないね!


「利用方法が分からない図書館と、僕からの質問。面倒ごとに面倒ごとをぶつけて相殺する高等テクニック……! アレクさんはいったいいつの間にこんな技を」


 いや、把握してないって答えてもらえばそれでよかったわけだし面倒ごと扱いされるいわれはないし、言ってみただけだけどね。

 とにかくこの、書架と書架の間を移動すると本棚の中身が明らかに別物になる図書館を攻略しないと…… せめて背表紙にタイトル載せるくらいはしてほしいよ。実はこの本棚全部一昔前のRPGの『しらべる』コマンドに対応してない本棚で、法則にしたがって移動すると地下室への隠し扉が現れるとかそういうステージじゃない?


「冗談は置いておいて…… 一冊一冊が重い。立ち読みはやめた方が良いか。表紙だけ見てそれっぽいの以外は棚に戻そう」


 肉体労働になると分かってればクロを連れて来たのになあ。そしてさっきから数冊手に取ってみてるけど神話っぽいタイトルにしか当たってないよ。神話とか物語が何かの伏線になってたりするパターンも無いではないけど、そういう考察とかはそういう楽しみ方をしたい人向けのコンテンツなので僕はパスかな。


「おや、プレイヤーの方ですか。珍しいですね。こんにちは」

「あ、こんにちは」


 神官服を着た男の人が入って来た。神殿関係の方かな? それならこの図書館についてなにか聞けるかな。でも今僕のことプレイヤーって言ってたよね。ということはあの人もプレイヤー?

 件の男の人は本棚の本には目もくれず、部屋の奥へ向かうと、そこに置いてあった像の前で何やら変わった動きをして、その場に跪いた。なんだろう、お祈り? ということはあの像は神様を祀ってるのかな。言われてみると仏壇とかに雰囲気が似てなくもないような?


「さて……」


 二分くらい静かにたたずんでいた男の人は、小さく呟いて立ち上がると、本棚に向かって歩き、無造作にそこから三冊の本を抜き出して壁際の本を読むスペースへ……って、やっぱりなにか知ってるパターンかなこれは。

 これまでの言動から十中八九ちょっと変わった人だと思うけど、言葉が通じないわけではないんだし、ちょっと質問しに行ってみるべきだよね……?


「あのー」

「…………」

「もしもーし」

「あ、もしかして俺に声をかけてますかね? なんのごようでしょうか」


 声をかけてみたけど何から聞くべきか考えてなかったよ。とりあえず最優先はこの図書室の利用方法かな? さっきのお祈りっぽい行動が何なのかも地味に重要な気がするよね。で、聞いたことを他のことに共有して良いかも確認しないとだし、余裕があれば今調べようとしてる、装備をドロップするモンスターについての情報についても聞けたら聞きたい……


「…………?」

「あっ、ごめんなさい。えっと、いくつか聞きたいことが有るんですけど大丈夫ですか?」

「ああそういうことでしたか。私に答えられることでしたらお答えしますよ。これでも神官の端くれ、ということになっていますから。困っている人を無下にはできません」


 やっぱりこの人神官なの? プレイヤーも神官になれるってこと? 気になるけど、まずは優先すべきことから聞かなきゃだよね。


「この図書館の利用方法を知ってるんですよね? 教えて貰うことって出来ますか? 情報の対価はお支払いしますので!」


 ここのところ敬語使ってなかったからなんだか背中がむずむずするよ。街の人みんなフランクだし、見知った人とばっかり会話してるし……


「いえいえ、対価なんて要求しませんよ。人から聞いた話ばかりですし、特に必要なものも有りませんから。敬語も私相手には不要ですよ」

「ホント!? ありがとう! いや、報酬はなにか支払うけどね。特になければとりあえず借りにしておくってことで」

「それで、図書室の利用方法? ですか?」

「うん、利用方法というか、本の探し方というか」


 思ったよりも常識人だし親切な人だったよ。十中八九変わった人とか思ってごめんなさい。

 でも利用方法には心辺りが無いのかな? となると、ここでの調べ物は諦めて、他のことだけ教えて貰うべきかな。


「本の探し……ああ! とりあえず手についたものを読めば十分だったので忘れていました! 私としたことがこの図書室のすばらしさの一端を失念するなんて」


 すばらしさ……? 手についたものを読めば十分……? なんだろう、読書好きの人なのかな? 体感時間の加速の恩恵を受けるためにVRゲームの中で読書を楽しむ人もいるって聞くし、その手の人?

 ここのラインナップって神話にかなり偏ってる気がするけど、読書好きにはむしろそっちの方が良いのかな。


「そうですね。ではこちらへ」


 そう言って連れてこられたのは、さっきの神棚っぽいものの前。改めて祀られている像を見てみると、四本ある腕のうち日本で分厚い本を広げ、残りの手にはそれぞれペンと紙束を持ってて、顔の部分は隠されてる。本の神様なのかな。

 本の神様なら図書館に祀られてるのも変な話じゃないし、お祈りすると図書館が使えるようになるとか、それっぽいような気がするよね。


「さっきお祈りしてた神様、で合ってる?」

「おや、ご覧になっていましたか。それなら話が早いですね」


 やっぱりさっきのはお祈りで、なおかつゲーム的にも意味のある行動だったんだね。でも、この人それに関して失念してたようなことを言ってた気が…… じゃあなんでお祈り? というか、何ゆえ神官? 信心深い人なのかな?

 放置していた疑問が積み重なって、ボタンを掛け違えているのに気が付いたまま放置しているようなモヤモヤが胸の中に溜まっていく。なにか、全くの見当違いをしてる気がするよ。


「これは、知識の神の眷属であり、図書の神リヴレ様を祀っている祭壇です。言うなれば、この図書室自体がこの大神殿の中に建てられたリヴレ様の小神殿でもある訳ですね。それぞれの本棚を神殿の柱と見立てることで、限られたスペースで神殿としての様式を備えさせてもいるのです。この柱というのは鳥居などにも近い、通り道を示すものでもありますので、簡素にすることはあっても省略するということは無いのですよ。入り口の扉の形が少し変わっているのにも気づきましたか? あれは神殿の入り口として開放するという様式で作った上で、作った神殿の外側に視線や時間外の出入りを遮るものとして引き戸を設けるという手順を踏んでいるからなんです。この辺りはおおよその神様を祀っている神殿で共通する様式ですね。もちろんたいていの神殿は理念通りに扉が無く常に広く開かれていますが。それで、リヴレ様を祀っているこの神殿ですが……」


 あれ? 実はここまでの話現状に関係なくない……? ここからちゃんと軌道修正されるのかすごく不安になって来てるんだけど……


「本棚でもある柱はもちろん、それ以外も各所にリヴレ様を象徴するモチーフが盛り込まれているのです。例えば各所を縁取る蔓草のレリーフですが、これは……」

「ちょちょちょ、ちょっと、一旦ストップしてもらっていい?」

「はい? ああ、話すペースが早すぎましたか? すいません熱くなってしまうとつい……」

「いや、そうじゃなくて。それもだけどそこじゃなくて、図書室の利用方法の話をしてるんだよね……?」

「……あ、そういえばそうでしたね。全く関係のない話をついついしていました」


 関係! ないんじゃん!! やっぱり変な人だったよ!!

また変な人が出てきたと思ったあなた。安心してください。変な人です。

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