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僕が死ぬまで縛るのをやめない!  作者: + -
第一部 VRMMO編
10/162

縛り9,故意のデスルーラ禁止

書き溜めてたのを放出してるだけとはいえ定期更新が続いている奇跡……!


10月17日

サブタイつけ忘れに気付く。修正、恥ずか死。

 クロと合流した僕は全力疾走で北の平原を駆け抜けて『死霊の森』にたどり着いていた。昨夜と違っておどろおどろしい雰囲気こそあれどそこら中にモンスターの反応があるなどということはなかった。


「二時の方向に距離120、十一時の方向に距離80ってところかな。これならいけそうだね」

「基本方針は敵をできる限り回避しつつ道端に良さげな採集場所があったら採集していく感じだな」

「ほいほい、【隠密】系のスキルと【サーチ】でMPガシガシ使っちゃうから戦闘での攻撃魔法とかは期待しないでよ」

「わかった、じゃあ行くか」



『今クロが向いてる方向を基準に三時の方向に二匹と十二時の方向に一匹、距離はそれぞれ45ぐらい。油断してると相手の索敵範囲に入っちゃうからちゃっちゃと離脱推奨』

『わかった、今のところ周囲に目的のアイテムが取れる場所は無さげだからこのまま奥に進むぞ』

『ん、ちゃんと着いてくから安心していいよ』


『二時の方に一匹、そっちの方に向かって移動中』

『クソ、だめだ足場が悪くて引き離せん。補足された』

『了解、ちょっとこっちで引き離すからどっかの木の上かなんかでおとなしくしてて』

『どうするつもりだよ』

『十分引き離した後で【ハイディング】で撒く。案外シンプルなものだよ?』


『あっちゃー、デスった。やっぱり三匹撒くのは無理だね。すぐに追いつくからそれまで見つからないように頑張って』

『わかった。といっても感覚系のパッシブは取得してないからどうなるかわからん、急いでくれ』

『ん、デスペナだるいけど頑張るよ』


 音を立てるとばれるという理由でフレンドコールで連絡を取りつつ森の中を進んで行く。なんていうか気分はもう潜入系のアクションゲームだ。自然と会話もだんだん迷走してくる。


『定期連絡。前方に食料を発見、周囲に敵影なし。採集を開始する。どぞ』

『採集を開始了解。健闘を祈る。どぞ』


『おい、さっきから敵の位置情報がなくて不安なんだが?』

『心配なのか? そんなことじゃ、作戦は成功しないぞ!』

『ネタのために危ない橋を渡らせるな!』



 そんなこんなでかなりの距離を進んだところで、クロが目的のものを見つけた。

 陰気くさい森の中でもずば抜けて禍々しい空気をまとった木が生えている。どうやらその木から採集できる『呪いの木片』が今回の狙いらしい。

 だけど、


「完全に捕捉されてるね、後ろから近付いてきてる」

「いきなり気配隠すのをやめるな、心臓に悪い。で、さっきまでみたくどうにかして撒けねえのか?」

「ちょっと厳しい、もうMPがぎりぎりだし、ここで採集してたら確実にほかのやつに見つかるくらいにはモンスターの密度が高いから」

「じゃあ、やるか」

「敵の能力を把握しとくのも大事だよ」



 会話が終わるタイミングで件の幽霊が後ろから飛び出してきた。不定型な顔に中身のない襤褸切れの体、攻撃手段は鉈とかなりテンプレを外さない幽霊型モンスターである。

 そんなこんなで僕にとっては初めての(前回は隠れつつ果物食べたりしてるうちにMP切れで発見され戦いにすらならなかった)、クロにとってはリベンジとなる幽霊戦が幕を開けた。


「まずは比較的モンスターの密度が薄いほうに誘導するよ! 【アッパースラッシュ】!」

「わかった、そっちの方に行けばいいんだな」


 まずは先制攻撃で切り上げるタイプのスキルをお見舞いする。本来の威力的にはスラッシュよりも上なはずなんだけど手刀で切り上げるのには無理があるのか相手が固いのか与えたダメージはたったの18。何とも気が遠い話だ。

 敵が一体の時の基本戦術はあらかじめ決めてあって、クロがガチンコ勝負を挑んでダメージを与えて、クロの体力がヤバくなったら僕がターゲットをひきつけてクロが回復するまでしのぐ。そして即死級の一撃を【根性】でしのいでクロにタゲを返す。という流れを繰り返せばいずれは勝てるという算段だ。


「【スラッシュアロー】、【スラッシュアロー】」

「そろそろHPがヤバい、タゲ奪取頼む」

「了解、そのまま防御重視で耐えて。『魔力よ我が矢となって万象を穿て』【マナバレット・改】」


 斜め後ろから魔力の矢を打ち込んで相手の不定型な体越しに鉈を弾いた。実体のない本体には妨害ができない以上これが一番ヘイトを稼ぎやすいはず。

 そこからさらに通常のマナバレットと【スラッシュアロー】を鉈に連発すると幽霊が狙いを変えたらしくこっちに向かってきた。


 さて、これからクロのHPが十分に回復するまで、耐えれるかな?

 はっきり言っていくら軽装備で身軽だとは言ってもAGIにステータスを振ってない以上これだけ高レベルの敵の攻撃をよけ続けるのは無理だし、素手にはパリィ判定がないので攻撃で相殺することも難しい。となれば……


「逃げの一手、だよね」

「オオォ―――ン」


 適当に後方に遠距離攻撃を放ちつ背中を見せて逃げ出す。【サーチ】で相手との距離を測りながら周囲の索敵をこなしつつひたすら逃げる。

 とはいえ足場が悪いところをジグザグに走る僕と障害物を片っ端からすり抜ける幽霊の間には圧倒的な差があり、五秒ほどで相手の攻撃射程に捉えられてしまった。


「オォン!」

「ふっ! あぶなっ!」


 あてずっぽうなタイミングで屈むことで敵の初太刀をやり過ごし、振り向きざまに【スラッシュ】を叩き込む。そしてそのまま大きく後ろに跳び退って続く一撃を回避したところで、完全に体制が崩れてしまい続く攻撃をよけることが不可能になる。

 容赦なく首筋に鉈が叩き込まれ、僕のHPバーが1ドットを残して霧散した。1ドット残ったのは無論パッシブスキルである【根性】の効果である。


 【根性】――ある意味定番のスキルではあるけど、『AWO』においては微妙に人気スキルとは言えないぐらいの人気のこのスキル。効果内容はHPが0になる攻撃を食らった時に残りHP1で耐えるというオーソドックスなものだけど、『AWO』には実は隠し要素的に同様の効果を持つスキルや装備品が割と多く存在するためわざわざ【根性】を選択するプレイヤーはあまり多くないのだ。

 ではわざわざ【根性】を選択するメリットとは何か。まず一つには基本的には類似スキルのほとんどは各戦闘中に一度しか発動できないのに対して、【根性】は熟練度に応じたクールタイムを挟めば何度でも発動できる上に、初期状態でも発動率が「(HP残量/最大HP)×2」と非常に高いものになっていたり、発動後にコンマ数秒の無敵時間が設定されているところに由来する。


「【マナバレット】、【穏行】、【ハイディング】」


 とはいえ無敵時間を利用して次の一撃をしのげるわけでもないので牽制の一撃を放ってから身を隠すスキルを使って稼いだ分のヘイトを消失させる。

 どうやら即死級の一撃を叩き込んだことですでに相当ヘイトが発散していたらしく、幽霊は僕への興味をなくしてクロの方に向かっていった。


『そっちに向かった、悪いけど二十秒くらいは自力で耐えて』

『案外早いな、善処する』


 HPポーションを飲みつつクロに連絡を入れる。クロのHPは見たとこ六割程度まで回復しているので三十秒くらいは問題なく耐えてくれるだろう。

 直前に確認した幽霊のHPバーの減少量は目算で二割程度だった。この後はクロのHPが満タンじゃないこともあるしここまでは減らせないだろうが倒せないとは思わない。

 HPの回復を待つ間に【サーチ】を使用して周囲の状況を確認してから戦線に戻る。

 サイクルを確立してしまえばあとはそれを繰り返せば勝てるはず、というのは普通のRPGでもVRMMOでも変わりはない。


 そして、そのサイクルがひとたび崩れてしまうと立て直すのが難しいのも普通のRPGと共通だ。


「【オオォーーン】」


 サイクルが五週目に入り、敵のHPも半分を切ったところで今まで見せなかったモーションとともに幽霊が手元に魔方陣的なものを生み出した。


「あちゃ」

「やべっ!」


 唐突な行動パターンに回避することも出来ずにクロが攻撃魔法の餌食になる。前衛型としてはそれなりのMDEFも高レベルのモンスターの前には意味をなさず【生命力】で残った最後の1ドットもすぐに鉈によって刈り取られてしまった。

 当然碌なダメージソースを持たない僕も大して時間を置かずにHPを奪われ死に戻りを強制された。


 さっきまでは負けたくないからやせ我慢してたけど、即死級の攻撃って痛いんだよね……



「次に挑んだら」

「絶対に勝てる!」

「まあその前にお昼ご飯食べに行こうよ。そろそろきっと一部の『料理』スキル持ちの人たちが店を出してるんじゃないかな?」

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