プレイ前
「当たったぞ! 当ててやったぞ『AWO』!」
「本当かい? 待ちわびたよ!」
放課後の教室で二人の生徒の話題になっているのは最先端技術を駆使したVRゲームである『Another World Online』だ。二人ともかなりのゲーマーであり、ぜひプレイしたいと常々言っていたのだが、話題作だけあって正式サービス開始直後からの参加は厳しいかもしれないと思っていたのだ。
「ちゃんと二人分確保できるとはな。間違いなくゲーマーの神々は俺たちに味方してくれている!」
「そうだね、僕もアクション断ちをして願を掛けた甲斐があったというものだよ。見てよこれ、僕のお気に入りのターン制RPGで遊ぶのももう限界に近いね」
そんな言葉とともに机の下から(・・・・・)取り出したゲーム機の画面では、下位職である盗賊が四人でラスボスをイジメ倒していた。
「お前まさかホームルーム中もやってたのか?」
「大丈夫だよ、先生の話はちゃんと聞いてるし」
「はぁ…… まあそんなことよりあれだ、今回もやるんだろ? 例のアレ」
「当然! あたりまえだべらぼうめえ! β版の情報もあるからやりやすいしね!」
「オーケー。そしたら今日の夜にチャット送るわ、部活もちゃんとやれよ」
「了解しました大佐! じゃ、また夜にね!」
そう言って別れた二人はそれぞれの部活の活動場所に向かうのであった。
ピリリリリ♪ ピリリリリ♪
『来た来た、待ってたよ~』
『宿題終わらせてからにしようと思ってな、どうせ話し込み始めちゃったら止まんないだろうし。で、今回はどんな感じにする?』
『ん~、さっきまでwiki見ていろいろ考えてたんだけど、ちょっときつめにしてその代わりに一人一縛りにしようかなって』
『俺はそれでいいぞ、そしたらあとは縛りの内容か。適当に候補を出して行って最後にくじのアプリで決めるのでいいか?』
『うん、基本方針は僕が決めたし決定方法はそれでいいよ。じゃあ早速縛りの内容の方いこっか! まずはVRゲームの定番アクティブスキル禁止かな!』
『いきなりヘビーなの来たな!? そのレベルの縛りだと、初期防具限定とかか?』
『それもありだけど防具はPSでかなりカバーできちゃうしなあ、初期武器縛りにしない?』
『ちょっと俺の幼馴染がマジキチな件っていうスレ建ててくるわ。消耗品使用禁止ならどうだ? ちょっと弱いか』
『いや、wiki見た感じボス戦はフルパーティーでもSPMPきついみたいだから二人でやるなら結構きつい要素になると思うよ。素手縛りも候補に入れとく?』
『――――』
『――――』
…………
こうして出た十二個の候補の中から、二人が用いるものが厳正なるくじ引きによって決定された。
『こんな候補作ったの誰だよお……』
『これがマジに来るとは……』
『キャラメイクはあんまりいじらないだろうし当日でいいとして、初期スキルは真剣に吟味する必要があるね』
『あ、縛りなんだから当然お前は『――』は無しな』
『ひどいよっ!?』
『ひどいのはどっちだ! まあいい、明日も遅刻すんなよ』
『らじゃらじゃ、おやすみ~』
『あいよ、おやすみ』