ヴァンパイア貴族が星屑のドレスを、貧乏奨学生の私に押し付けてくる件
ペトラ・ローワンは、ショーウィンドウの前で足を止めていた。深い夜色のドレスだった。黒ではない。紺でもない。星のない夜の底みたいな色。胸元から裾へ向かって細い銀糸が散っていて、動けばきっと、星屑みたいに光る。
プロムまで、あと十日。
そのドレスを着て大広間に立つ自分を、ペトラは一瞬だけ想像した。音楽。光。磨かれた床。誰かに手を差し出される夜。ほんの一晩だけ、自分にもそこにいる理由があるような顔をしていられるかもしれない。
値札を見て、想像は終わった。
その金で、ミアのドールが買える。
ミアは、ペトラの妹だった。父親は最初からいない。母を失ってからは、ペトラがたった一人の家族で、保護者で、帰る場所だった。まだ幼くて、夜になると泣くようになった子。欲しいものを欲しいと言わず、寂しい時もペトラの邪魔をしないように小さくなってしまう子。ペトラが夜のアルバイトで遅くなる間、ひとりで部屋に残される子。
そのミアが、ドール店のショーケースの前で、母に少し似た人形を何日も見ていた。
ペトラのドレスは、一晩で終わる。けれど、ミアのドールは毎晩あの子のそばに置いてやれる。ただのドールにはしない。防衛法術を仕込む。扉が開けば知らせる。窓に誰かが触れれば鍵を固める。ミアの体温が急に下がれば、胸元の魔石が光る。
強い術ではない。ヴァンパイア貴族の生徒たちが使うような高級結界には遠く及ばない。でも、今のペトラが妹に渡せる、精一杯の守りだった。
夜の貴族たちにとって、学園は急いで卒業する場所ではなかった。長い寿命を持つ彼らは、気が済むまで学び、社交し、遊び、気に入った教師の講義を取り、飽きたら去る。失敗しても家が支える。成績が少し落ちても、食費や家賃が消えるわけではない。
ペトラにとっては違う。
彼女は奨学生だった。査定が落ちれば支給額が削られる。支給額が削られれば、ミアの学費か、寮費か、食費のどれかが足りなくなる。講義も実技も、青春の一部ではない。生活をつなぐための綱だった。
「そのドレスが欲しいの?」
背後から声がした。
ペトラは振り向かなかった。声だけでわかった。エイドリアン・ナイトボーン。ヴァンパイア貴族の最上位、ナイトボーン公爵家の嫡男。黒髪、白い肌、薄い青灰色の目。何もかも持って生まれたような男。
「別に」
「見ていた」
「通り道にあっただけ」
「毎日?」
「……私を観察してたの?」
「偶然見かけただけだ」
「毎日?」
「何度か」
ペトラはようやく振り向いた。エイドリアンは少し離れたところに立っていた。深紺の礼装。銀のボタン。少し緩い襟元。崩れているのに、だらしなくは見えない。そういう人間だった。
「趣味が悪い」
「君は、いつもそうやって言葉を尖らせる」
「必要な時だけ」
「今が必要?」
「ええ」
ペトラは歩き出そうとした。だが、エイドリアンがショーウィンドウの値札を見た。ほんの一瞬。顔は変わらなかった。その無変化が、ペトラには少しだけ嫌だった。
この金額を見ても、彼には何も響かない。ペトラなら、すぐに頭の中で換算する。ミアの学費。食費。教材費。冬用の靴。ドール。札紙。部屋の暖房代。けれど彼にとっては、たぶん、少し高いだけの布だ。
その余裕が悪いわけではない。ただ、違いすぎた。
「似合うと思う」
「言わなくていい」
「褒めたつもりだった」
「頼んでない」
「なぜ」
「あなたに評価されるために見てたわけじゃないから」
エイドリアンの目が、少しだけ細くなった。
「プロムは?」
「行かない」
「どうして」
「行っても……わかるでしょ」
「わからないな」
その言い方に、胸の奥が冷えた。彼には本当にわからないのだろう。誰にも誘われないこと。ドレスを買えないこと。会場にいても居場所がないこと。壁際で、誰かの幸福な夜の背景になること。
興味がないわけではない。むしろ、行ってみたかった。けれど、行きたいと思うほど惨めになる未来も見えていた。
「なら、そのままでいて」
ペトラは言った。
「わからないなら、わからないままで」
それ以上話す気はなかった。午後の魔法戦闘科の実技には遅れられない。負ければ査定に響く。査定に響けば支給額が削られる。支給額が削られれば、ミアの学費か、寮費か、食費のどれかが足りなくなる。だから、負けるわけにはいかなかった。
その日の合同実技の相手は、エイドリアンだった。
訓練場の床に、白い札が散る。ペトラは左手で扇を開き、靴底に仕込んだ札を床板の隙間へ滑り込ませた。
上段席では、ヴァンパイア貴族の生徒たちが気楽にこちらを見下ろしていた。彼らにとって、人間の魔法戦闘科との合同実技は午後の余興に近い。生まれつきの法術素養。家門付きの教師。高価な札紙。何度失敗しても許される時間。
ペトラには、そのどれもない。
焦げた札を直し、安い紙を何度も使い回し、睡眠を削って術式を覚えた。一度の負けが、ただの負けで終わらない。査定に響く。査定に響けば、生活に響く。
だから、笑われても、見世物にされても、勝ちに行くしかなかった。
簡易陣。
荒い。安い。長くは保たない。でも、一瞬なら使える。
エイドリアンの足元で床が沈んだ。
「お」
初めて、彼の声に意外そうな色が混じった。ペトラは踏み込んだ。扇の柄を、彼の胸元へ叩き込む。当たる。そう思った。けれど次の瞬間、冷たい指がペトラの手首を取っていた。
「今のは本当にいい」
「評価はけっこう」
「足元を狙ったのは正しい。札の質は悪いが、構成は悪くない」
「そんなのわかってる。お金が潤沢にあれば、こんなの使ってない」
手首を振りほどこうとした。外れない。エイドリアンは強く握っているわけではない。ただ、動かすべき場所を押さえている。それがひどく悔しかった。
エイドリアンは、学園に縛られていない人間の顔をしていた。勝っても負けても、明日の食事は変わらない。札紙の残量を数えながら眠ることもない。妹の靴を買うために、夜のシフトを増やすこともない。
それが悪いわけではない。
けれど、その違いを知らないまま褒められるのは、ペトラには少し痛かった。
「離して」
ペトラが言うと、彼はすぐに手を離した。
「君は、いつもそんなに必死なのか」
その言葉で、ペトラの中の何かが冷えた。
「あなたには児戯でも」
声が低くなる。
「私には違う」
判定の鐘が鳴った。
「勝者、エイドリアン・ナイトボーン」
上段席から拍手が起きる。軽い拍手だった。よくできました。面白かった。人間にしては頑張った。そんな音に聞こえた。
ペトラは礼をして、訓練場を降りた。落ちた札を拾おうとした時、エイドリアンがそれを拾って差し出した。
「返す」
「ありがとう」
「ローワン」
「まだ何か」
「さっきの言葉は、覚えておく」
「覚えなくていい」
「いや。覚えておくべきだと思った」
ペトラは返事をしなかった。信用するには、まだ彼のことを知らなすぎる。
翌日、ペトラはミアを連れてドール店へ行った。白い頬。淡い栗色の髪。やわらかく微笑んだ口元。古風なレースの服を着たドールを、ミアは硝子越しにじっと見ていた。欲しい、とは言わない。買って、とも言わない。ただ、じっと見ている。
その横顔が、ペトラにはいちばんつらかった。子どもなのに、欲しがることを先に諦めてしまう顔だった。
「あの子ね」
ミアが小さく言った。
「ママに、ちょっと似てる」
その声で、ペトラは決めた。財布の中身は一気に軽くなった。夜の店を二回増やす。昼食を三日、安いパンにする。札紙は修復でつなぐ。ミアの食費は削らない。
それでどうにかなる。
どうにか、という言葉には、いつも無理が混じっている。けれど、買える。買ってやれる。
帰宅すると、ミアはドールにリリーと名付けた。その夜、ミアが眠ったあと、ペトラは机に向かった。リリーの襟元のレース裏、袖口の縫い目、髪の下に、小さな防衛術式を縫い込んでいく。扉が開いた時に鳴る警告。窓に外から触れた時に固まる鍵。ミアの体温が急に下がった時に光る護符。
最後に、声の魔石を手に取った。防犯の声だけにするつもりだった。けれど、夜中にミアが猫のぬいぐるみを抱いて泣いていた声が、まだ耳に残っている。
ママに会いたい。
ペトラは魔石を握った。優しい声は苦手だ。普通に話すと、いつも平らだと言われる。怒っているみたい。冷たい。かわいげがない。でも、ミアが夜に聞く声だけは、そうしたくなかった。
「おかえり、ミア。鍵はちゃんとかけるのよ」
違う。硬い。記録を消す。
「おやすみ、マイディア、ミア。いい夢を見てね」
録り終えたあと、ペトラはしばらく動けなかった。母の声とは全然違う。でも、冷たい沈黙だけが部屋で待っているよりはいい。ペトラがそばにいられない夜に、少しでもミアがひとりではないと思えるなら、それでよかった。
翌朝、リリーの瞳が淡く光った。
「おやすみ、マイディア、ミア。いい夢を見てね」
ミアは泣いた。悲しいだけの泣き方ではなかった。リリーを抱きしめて、顔を埋めて、何度も頷いている。
「お姉ちゃん」
「うん」
「ありがとう」
ペトラは妹の頭を撫でた。自分も泣きそうだった。けれど泣かなかった。泣いてしまうと、ミアがもっと泣くから。
星屑のドレスがショーウィンドウから消えたのは、それから二日後だった。
ペトラは足を止めなかった。止めなかったつもりだった。けれど、胸の奥で何かが小さく沈んだ。
馬鹿みたいだ、と思う。自分で選ばなかったのに。リリーを買った。ミアは毎晩リリーを抱いて眠る。防衛術式もきちんと動いている。それでよかった。それがよかった。なのに、消えたドレスを見て少し痛むなんて、あまりにも身勝手だった。
翌日の放課後、別館図書館の机の上に細長い箱が置かれていた。深い黒の箱。銀の細い紐。高級仕立屋の紋章。
嫌な予感がした。いや、嫌というより、怖かった。胸の奥で、期待が一瞬だけ跳ねたからだ。
「ローワン」
奥の本棚の前から、エイドリアンが出てきた。
「これは何」
「君に」
「中身は」
「見ればわかる」
「見たくない」
「なぜ」
「だいたいわかるから」
エイドリアンは、箱の蓋を開けた。深い夜色の布が現れた。星のない夜の底みたいな色。裾へ向かって散る銀糸。消えたはずの、あのドレスだった。
ペトラはしばらく、それを見ていた。きれいだった。どうしようもなく、きれいだった。硝子越しに見ていた時よりも、近くで見る方がずっと綺麗だった。
欲しい、と思ってしまった。そのことが、悔しかった。
「どういうつもり」
「君が見ていたから」
「だから?」
「欲しかったのだと思った」
「だから買ったの」
「そうだ」
悪意はなかった。それが、いっそう苦しかった。悪意なら怒ればいい。侮辱なら拒絶すればいい。でもこれは、たぶん善意だった。
けれど、受け取れない。
「受け取れない」
ペトラは言った。
「なぜ」
エイドリアンが聞いた。
ペトラは少しだけ目を伏せた。説明すれば、伝わるのだろうか。この布一枚が、自分にはどれほどの重さに見えるのか。どれほどの生活費に見えるのか。どれほどの眠れない夜に換算されるのか。
たぶん、伝わらない。
伝える必要もない。
「このドレスは、私には大した生活費なの」
ペトラは言った。
「だから、受け取れない」
それだけだった。
怒鳴らなかった。責めなかった。わかってほしいとも思わなかった。
ただ、受け取れなかった。
エイドリアンは黙っていた。ペトラも、それ以上は言わなかった。
沈黙の中で、箱の中の銀糸だけが細く光っていた。
「……そうか」
やがて、エイドリアンが言った。
「持って帰る」
ペトラは小さく頷いた。
「そうして」
エイドリアンは箱の蓋を閉じた。その手つきは、いつものようには滑らかではなかった。
「君を喜ばせたかった」
「うん」
ペトラは答えた。
「悪意じゃないのは、わかる」
それでも、受け取れない。
その言葉だけは、胸の奥で動かなかった。
それから数日、エイドリアンはペトラの前に姿を見せなかった。
西棟の廊下にも、訓練場にも、別館図書館にも来なかった。
ありがたい。
そう思うべきだった。
実際、ありがたかった。
関わりたくなかった。
エイドリアンが悪人だとは思わない。悪意であのドレスを持ってきたわけでもない。それはわかる。けれど、世界が違いすぎた。
彼にとって軽いものが、ペトラには重い。彼にとって親切なことが、ペトラには受け取れない。何かを説明しようとするたび、自分の生活を机の上に広げなければならない気がする。
それが、嫌だった。
三日目の昼休み、別館図書館の扉の前にエイドリアンが立っていた。
「ローワン」
「何」
「謝りに来た。ドレスのことを」
ペトラは鍵を出しかけた手を止めた。
関わりたくなかった。
悪意がないのはわかる。けれど、世界が違いすぎる。彼にとって軽いものが、ペトラには重い。彼にとって親切なことが、ペトラには受け取れない。
その違いを、いちいち説明することにも疲れていた。
「……聞くけど」
ペトラは言った。
「それで何かが変わるとは思わない」
エイドリアンは、一歩も近づかなかった。
「ああ。それでいい」
少しの沈黙のあと、エイドリアンは口を開いた。
「君を誤解していた、とは言わない。それだと、俺が少し見方を間違えただけみたいになる」
「……」
「違う。俺は、君を軽く見ていた。欲しいなら買えばいい。似合うと言えば褒め言葉になる。渡せば喜ぶ。そういうふうに、自分の感覚で見ていた」
ペトラは何も言わなかった。
「軽かった。すまない」
謝罪としては、たぶん正しい。
言い訳しない。
そんなつもりではなかった、と逃げない。
けれど、それで傷つかなかったことにはならない。
「あのドレス」
ペトラは言った。
「どうしたの」
「まだ持っている」
「また渡すつもり?」
「君が望まない限り、しない」
「望まない」
「わかっている」
エイドリアンは静かに頷いた。
「箱に入れたまま、置いてある。君が受け取れないと言ったものを、俺の失敗の後始末みたいに扱いたくなかった」
「それを私に言われても困る」
「ああ。だから、どうしてほしいとは言わない」
その言い方だけは、少しだけましだった。
少なくとも彼は、何かを差し出して、またペトラに返事を迫っているわけではなかった。
「君を喜ばせたかった」
「うん」
「でも、俺が見ていたのは、君が本当に受け取れるものではなくて、俺が渡せるものだった」
ペトラは返事をしなかった。
その言葉は、少しだけ正しかった。
「次に何かをする時は、先に聞く」
「そうして」
「断られても、怒らない」
「そうして」
「君が話していないことを、勝手に調べない」
「そうして」
ペトラはそこで、ようやく少しだけ息を吐いた。
プロムの夜、ペトラは大広間にいた。
参加者としてではない。
警備としてだった。
濃紺の上着。袖の内側には、自分で組んだ守り札。腰には短剣。靴底には簡易陣の札。
その前を、令嬢たちが通り過ぎていく。
淡い金色のドレス。
銀糸の刺繍。
夜空のような青。
花びらのような薄桃。
シャンデリアの光を受けて、どれも星屑みたいにきらめいていた。
ペトラは一瞬だけ、あのドレスを思い出した。
深い夜色の布。
自分が買わなかったもの。
受け取れなかったもの。
今もどこかの箱の中にあるもの。
胸の奥が、少しだけ痛む。
けれど、今日はその痛みに足を取られている場合ではない。
ペトラは警備だった。
参加者ではない。
袖の中には、自分で組んだ札がある。
小さな異常を拾うための札。
誰かが困る前に気づくための札。
音楽が始まった。
磨かれた床に、光が落ちる。
誰かが笑い、誰かが手を差し出す。
ペトラは壁際に立っていた。
羨ましくない、と言えば嘘になる。
けれど、惨めなだけでもなかった。
ミアは今夜、リリーを抱いて眠っている。
ペトラの袖には、自分で作った守り札がある。
ここに立っているのは、自分で選んだ結果だった。
夜が深くなり、最後の交代の時間が来た。
ペトラは持ち場の異常なしを伝え、正面扉、東側窓、階段口の確認事項を次の担当に引き継いだ。袖の内側の札を外し、腰の短剣の留め具を確かめる。
「ローワン、今日はもう上がっていい」
「了解」
ペトラは短く答えた。
警備は終わった。
少なくとも、今夜のペトラの仕事は。
大広間では、まだ音楽が続いていた。終盤の曲らしく、さっきより少しゆっくりした旋律だった。シャンデリアの光が、磨かれた床にやわらかく落ちている。
ペトラは扉の外で、ほんの少しだけ足を止めた。
その時、声がした。
「ローワン」
エイドリアンだった。
黒い礼装のまま、少し離れたところに立っている。
「もう終わったのか」
「うん」
「そうか」
それだけ言って、彼はすぐには近づかなかった。
ペトラは大広間の方を見た。
星屑みたいなドレスたち。
遠い笑い声。
磨かれた床。
自分は制服のままだった。袖口には、札紙の焦げ跡も残っている。
それでも、もう警備ではない。
仕事は終わった。
「ひとつ、聞いてもいいか」
「何」
「一曲だけ、踊ってほしい」
ペトラは彼を見た。
エイドリアンは真面目な顔をしていた。からかっているわけではない。試しているわけでもない。ただ、手を差し出す前に、こちらの答えを待っている。
「私、魔法戦闘科の制服だよ」
「知っている」
「ドレスじゃない」
「見えている」
「断るかもしれない」
「断っていい」
そこでようやく、ペトラは少しだけ笑った。
ドレスは受け取れなかった。
今も受け取れない。
けれど、これは違う。
高価な布ではない。
生活費に換算するものでもない。
誰かに買われるものでもない。
仕事を終えたあとに、一曲だけ手を取るかどうかだった。
「一曲だけ」
ペトラは言った。
エイドリアンの目が、わずかに揺れた。
「一曲だけ?」
「うん。一曲だけ」
ペトラは彼の手を取った。
冷たい指だった。
けれど、嫌ではなかった。
大広間の中央ではなく、扉に近い光の端だった。けれど音楽は届いていた。
エイドリアンは丁寧に彼女の手を取り、ゆっくりと一歩を踏み出した。
ペトラも、それに合わせた。
星屑のドレスは着ていない。
ドレスは箱の中にある。
ペトラはそれを受け取らなかった。
でも今夜、彼女は自分で選んだ。
誰かに飾られるのではなく。
誰かに買われるのでもなく。
ただ、自分の意思で、その手を取った。
シャンデリアの光が揺れる。
ペトラの制服の袖口に、ほんの一瞬、星屑みたいな光が落ちた。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
この短編は単独で完結しています。
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