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リバイバル Iwo-jima  作者: 双鶴


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第41話 「中央突破──“焦り”が生む一本道」

 昭和二十年二月二十四日、午前。

 夜明けとともに、米軍の動きに“変化”が現れた。

 昨日までのように飛行場全域へ散開するのではなく、

 島の中央部へ向けて、一本の太い矢のように隊列を伸ばし始めた。


 栗林晴翔――栗林忠道中将としての晴翔は、

 その動きを見た瞬間、静かに息を吸った。


 「……来たな。

  中央突破だ。」



 米軍は、飛行場での損害と地下戦への恐怖から、

 「島を南北に分断し、補給線を断つ」という作戦に切り替えた。


 だが、その隊列は――

 細長く、脆く、そして読みやすい。


 参謀が驚いた声を上げる。


 「閣下、敵が……一本道で来ています!

  あれでは側面がガラ空きです!」


 晴翔は頷いた。


 「焦っている証拠だ。

  “見えない敵”に追い詰められた時、人は一本道を選ぶ。

  だが一本道は、最も狙いやすい。」



 晴翔は地図を指で叩いた。


 「中央突破は、米軍が必ず選ぶ手だ。

  飛行場での損害、炎の無効化、戦車の撃破……

  すべてが敵を“短期決戦”へ追い込む。」


 参謀たちは息を呑んだ。


 「……閣下は、ここまで読んで……?」


 晴翔は首を振った。


 「読んだのではない。

  敵の心理を理解しただけだ。

  追い詰められた者は、必ず“最短距離”を選ぶ。」



 晴翔は各壕へ伝令を走らせた。


 【配置指示】

 - 中央突破ルートの左右に狙撃陣地

 - 迫撃砲は“一本道”の中央に照準

 - 地下壕の蓋は半開きで待機

 - 歩兵は“撃って移動”の繰り返し

 - 弾薬は節約、確実に当てる


 兵士たちは静かに動き始めた。

 その動きには、もはや恐怖はなかった。


 「……閣下の読み通りだな」

 「一本道なら、狙いやすい」


 晴翔は彼らの背中を見つめ、

 胸の奥で静かに思った。


 ――この兵たちは、もう“史実の兵”ではない。

 ――恐怖に飲まれず、状況を読み、冷静に動く。

 ――生き残るための戦いを理解している。



 米軍の隊列が中央部に差し掛かった瞬間、

 晴翔は短く命じた。


 「撃て。」


 左右の狙撃陣地が一斉に火を噴き、

 迫撃砲が一本道の中央に落ちる。


 米軍の隊列が一瞬で崩れた。


 「伏せろ! 左右から撃たれている!」


 一本道は、

 逃げ場のない“射撃廊下”と化した。


 米軍の無線が混乱に満ちる。


 「中央突破が……止まった!」

 「側面が狙われている!」

 「前進できない! 隊列が乱れている!」


 晴翔は静かに呟いた。


 「一本道は、最も狙いやすい。

  敵は自分で罠に入った。」



 戦況は有利。

 兵の士気は高い。

 地下壕は健在。


 だが晴翔は油断しなかった。


 ――米軍は必ず次の手を打つ。

 ――そして、戦いはまだ続く。

 ――生き残るためには、冷静さを失ってはならない。


 晴翔は地図を見つめ、静かに言った。


 「……諸君。

  今日も生き延びた。

  だが、まだ終わりではない。」


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