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リバイバル Iwo-jima  作者: 双鶴


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第28話 「海を埋め尽くす影」

 昭和二十年二月十五日、夕刻。

 硫黄島の空は鉛色に沈み、海は不気味なほど静かだった。

 だが、その静けさの向こうに――“圧倒的な気配”があった。


 栗林晴翔――栗林忠道中将としての晴翔は、摺鉢山の中腹に立ち、双眼鏡をゆっくりと海へ向けた。


 そして、息を呑んだ。



 水平線の彼方から、黒い影が次々と姿を現していた。

 最初は点だった。

 だが、時間が経つにつれ、それは“壁”になった。


 戦艦。

 巡洋艦。

 駆逐艦。

 輸送艦。

 揚陸艦。

 空母。


 海が、船で埋まっていた。


 「……これが、世界最大の艦隊か」


 晴翔の呟きは、風に消えた。


 参謀たちも言葉を失っていた。


 「閣下……あれほどの数、見たことがありません……」

 「海が……動いているように見えます……」


 晴翔は静かに頷いた。


 ――史実の記録よりも、はるかに“生々しい”。


 だが、恐怖はなかった。

 準備は整っている。

 兵たちの心も折れていない。



 壕の入口から兵士たちが顔を出し、海を見つめた。


 「……あれが、全部敵なのか……」

 「すげえ……海が黒い……」

 「でも……閣下が日にちまで言い当てたんだ。

  俺たちは、やれる」


 誰かが言った。


 「閣下は……神がかっている。

  未来が見えているんじゃないか……?」


 別の兵が笑った。


 「神じゃねえよ。

  でも……俺たちは信じてる。

  閣下の言う通りにすれば、生き残れる」


 その言葉に、晴翔は胸が熱くなった。


 ――信頼は、恐怖を超える力になる。


 晴翔は兵士たちの前に立った。


 「諸君。

  海を見ろ。

  あれが、世界最大の艦隊だ」


 兵士たちが息を呑む。


 「だが、恐れる必要はない。

  我々は準備を整えた。

  壕は強化され、偽装は完成し、

  戦車誘導溝も整った。

  耳栓も配布し、艦砲射撃にも耐えられる」


 晴翔は拳を握った。


 「諸君。

  我々は玉砕などせん。

  生き延びるために戦う。

  戦後の日本を支えるために、生き残るのだ。」


 兵士たちの目に、恐怖ではなく光が宿った。



 晴翔は参謀たちに命じた。


 【最終配置】

 - 主壕:各中隊を配置し、交代制で休息

 - 飛行場周辺:狙撃陣地・迫撃砲陣地を偽装して配置

 - 戦車誘導溝:夜間に最終調整

 - 医療班:地下深部に移動、負傷者搬送ルートを確保

 - 弾薬庫:湿気対策を再確認し、二重管理

 - 耳栓:全兵士に再配布し、艦砲射撃中の使用を徹底


 兵士たちは静かに動き始めた。

 その動きには、迷いがなかった。



 海を埋め尽くす艦隊を見つめながら、晴翔は深く息を吸った。


 ――いよいよだ。

 ――だが、恐れはない。

 ――この島は、史実よりはるかに強い。

 ――兵たちの心も折れていない。


 晴翔は静かに呟いた。


 「……来るなら来い。

  我々は、生き延びる」


 その瞬間、遠くで雷鳴のような音が響いた。

 艦砲射撃の準備が始まったのだ。


 島全体が、決戦の前夜を迎えていた。


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