第26話 「シャーマンを止める方法」
昭和十九年十二月中旬。
空襲はさらに激しさを増し、島の上空には黒煙が絶えず漂っていた。
米軍の偵察機は一日に何度も旋回し、南方海域では艦隊の集結が報告されている。
栗林晴翔――栗林忠道中将としての晴翔は、参謀と工兵隊長を作戦室に集めた。
机の上には、米軍のM4シャーマン戦車の図面と、硫黄島の地形図が並べられている。
「今日から、対戦車戦術を詰める。
敵のシャーマン戦車を、どう止めるかだ」
参謀たちの表情が引き締まった。
晴翔は図面を指で叩いた。
「シャーマン戦車には、三つの弱点がある」
【シャーマン戦車の弱点】
- ① 履帯が脆い
地雷・溝・爆薬で簡単に外れる。
- ② 後部エンジンが弱点
装甲が薄く、火炎や爆薬に弱い。
- ③ 視界が狭い
特に正面視界が狭く、誘導されやすい。
参謀が頷く。
「つまり、正面から撃ち合う必要はないということですな」
晴翔は静かに言った。
「正面から撃ち合えば負ける。
だが、“誘導”すれば勝てる」
晴翔は地図に青い線を引いた。
「戦車は、平坦な場所しか進めない。
だから、我々が“通り道”を作る。
敵はそこに吸い込まれるように進む」
【戦車誘導の仕組み】
- 地形を削り、戦車が自然と進む“谷”を作る
- 偽装した土嚢で“道”を作り、敵を誘導
- その先に“履帯を外す溝”を掘る
- 動けなくなった戦車を、側面・後部から攻撃
工兵隊長が息を呑む。
「閣下……これは、戦車を“罠に落とす”戦術ですな」
晴翔は頷いた。
「その通りだ。
戦車は強いが、動けなければただの鉄の箱だ」
晴翔は兵士たちを広場に集めた。
「諸君。
戦車は恐ろしい。
だが、弱点を知れば恐れる必要はない」
晴翔は木製の模型を使い、説明を続けた。
【歩兵による攻撃ポイント】
- 履帯の付け根
- 後部エンジン
- 排気口
- 視察孔
「爆薬は“側面”に置け。
後部に回り込めれば、ほぼ確実に止められる」
兵士たちが真剣に頷く。
晴翔は続けた。
「火炎放射戦車は、通気孔を狙ってくる。
だが、我々は偽の通気孔を作ってある。
炎はそちらに吸われる」
参謀が言う。
「つまり、戦車は“偽の弱点”に向かって進むわけですな」
晴翔は頷いた。
「その通りだ。
敵は“弱点に見える場所”に殺到する。
そこが罠だ」
訓練場では、兵士たちが木製の戦車模型に向かって爆薬の設置訓練を繰り返していた。
「閣下! 履帯の付け根、理解しました!」
「後部エンジンへの回り込み、成功しました!」
「戦車が動けなくなれば、怖くありません!」
晴翔は彼らを見つめ、静かに言った。
「よくやった。
戦車は恐れるものではない。
“止めるもの”だ」
司令部に戻ると、晴翔は地図を見つめた。
――飛行場の罠は完成しつつある。
――戦車誘導も形になった。
――歩兵の訓練も進んでいる。
――耳栓も配布し、艦砲射撃にも耐えられる。
だが、まだ一つだけ足りない。
――“敵の上陸直後の混乱”をどう利用するか。
晴翔は拳を握った。
「……次は、上陸初日の“混乱利用”だ。
敵が最も脆い瞬間を叩く」
視界が揺れる。
眠気が襲う。
机に突っ伏した瞬間、意識が沈んでいく。
次に目を開けたとき、そこは静かなアパートの天井だった。
晴翔はノートを開き、書き始めた。
「……上陸直後の混乱。
史実では、米軍は上陸直後に隊列が乱れた。
そこを突けば、大きな損害を与えられる。
次は、その計画だ」




