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リバイバル Iwo-jima  作者: 双鶴


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第25話 「飛行場を“袋小路”にする」

 昭和十九年十二月初旬。

 空襲は日に日に激しさを増し、硫黄島の空は黒煙と砂塵で曇り続けていた。

 米軍の偵察機は一日に数度、島の上空を旋回し、南方海域では艦隊の集結が報告されている。


 栗林晴翔――栗林忠道中将としての晴翔は、参謀と工兵隊長を作戦室に集めた。

 机の上には、飛行場周辺の詳細な地図が広げられている。


 「今日から、飛行場周辺の“罠”を完成させる。

  敵が最も通りやすい場所を、最も危険な場所に変える」


 参謀たちの表情が引き締まった。


 「飛行場は本土空襲に向けての重要拠点であり、

  また飛行場を奪る事によって我々を、島を分断できるからだ」


 晴翔は地図の一点を指で叩いた。


 「南部海岸から上陸した敵は、必ず飛行場へ向かう。

  特に西側は地形が平坦で、戦車が動きやすい。

  ここが敵の“最短ルート”だ」


 参謀が頷く。


 「確かに……この地形では、敵は一直線に飛行場へ向かいますな」


 晴翔は静かに続けた。


 「だからこそ、ここを“袋小路”にする。

  敵が進めば進むほど、逃げ場がなくなる構造にする」



 晴翔は青い線を引き、罠の構造を示した。


 【飛行場周辺の罠】

 - ① 偽の弱点を作る

  飛行場西側に“壊れやすい土嚢陣地”をわざと設置し、敵を誘導する。

 - ② 地下に“袋小路”を作る

  敵が進撃すると、左右から狙撃・迫撃砲が集中する構造にする。

 - ③ 戦車誘導溝を掘る

  戦車が自然と“狭い通路”に入り込むよう、地形を加工する。

 - ④ 火炎放射器対策の壕を配置

  戦車が火炎放射を撃つ位置に、偽の通気孔を設置して炎を吸わせる。

 - ⑤ 夜間奇襲の“帰還路”を二重化

  飛行場周辺から地下壕へ戻るルートを複数確保する。


 参謀たちが息を呑む。


 「閣下……これは、敵を“飛行場に殺到させる”ための罠ですな」


 晴翔は静かに頷いた。


 「その通りだ。

  敵は飛行場を最優先で奪いに来る。

  ならば、そこを“地獄”にすればいい」



 晴翔は工兵隊長に向き直った。


 「戦車誘導溝は深さ一メートル、幅二メートル。

  夜間に掘り、昼間は布と砂で偽装する。

  敵が踏み込めば、履帯が取られて動けなくなる」


 工兵隊長が頷く。


 「はい。地質が硬い場所は爆薬で割り、掘削を進めます」


 晴翔は続けた。


 「狙撃陣地は“影が出ないように”偽装しろ。

  掘削跡の土は周囲の土と混ぜて色を合わせる。

  航空偵察に絶対に見破られるな」


 工兵たちの表情が引き締まった。



 晴翔は包帯の端切れと油を手に取り、兵士たちに示した。


 「艦砲射撃は、音と衝撃で心を折りに来る。

  だが、これがあれば耐えられる」


 綿を丸め、油を少し染み込ませて見せる。


 「綿を小さく丸め、油を少し含ませて耳に軽く詰めろ。

  奥まで入れるな。

  これは“心を守る武器”だ」


 兵士たちは次々と耳栓を作り始めた。

 不安げだった表情が、少しずつ落ち着いていく。



 晴翔は飛行場の地図を掲げ、兵士たちに語った。


 「諸君。

  飛行場は敵が必ず奪いに来る場所だ。

  だが、我々はそこを“餌”にする。

  敵が飛行場に殺到した瞬間、地下から撃つ。

  戦車は誘導溝に落ち、歩兵は袋小路に入り込む」


 兵士たちの目が鋭くなる。


 「閣下……本当に、そんなことが……?」


 晴翔は静かに答えた。


 「できる。

  この島は、諸君の手で“罠”に変わりつつある。

  敵は必ずそこに嵌る」



 司令部に戻ると、晴翔は地図を見つめた。


 ――飛行場は、もはや弱点ではない。

 ――敵を誘い込み、殲滅するための“罠”だ。

 ――耳栓も配布した。

 ――艦砲射撃にも耐えられる。


 晴翔は拳を握った。


 「……次は、戦車戦の対策を詰める。

  敵のシャーマン戦車を、どう止めるかだ」


 視界が揺れる。

 眠気が襲う。


 机に突っ伏した瞬間、意識が沈んでいく。




 次に目を開けたとき、そこは静かなアパートの天井だった。


 晴翔はノートを開き、書き始めた。


 「……シャーマン戦車の弱点。

  履帯、後部エンジン、視界の狭さ……

  次は、戦車戦の研究だ」


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