表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバイバル Iwo-jima  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/44

第19話 「空からの目を欺く」

 目を開けると、静かなアパートの天井が見えた。

 硫黄島の湿気も、硫黄の匂いもない。


 ――戻ってきた。


 栗林晴翔はゆっくりと身体を起こし、机に向かった。

 偽装壕、偽通気孔、囮陣地……

 硫黄島での欺瞞戦術は形になりつつある。


 だが、まだ決定的に足りないものがある。


 空からの目”への対策だ。


 米軍は上陸前、必ず航空偵察を行う。

 史実でも、航空写真をもとに日本軍の陣地を分析していた。


 ――偽装が見破られれば、すべてが無駄になる。


 晴翔は深く息を吸った。


 「……航空偵察の癖を、徹底的に調べる」



 晴翔は大学図書館へ向かい、航空偵察に関する資料を片っ端から読み漁った。


 『航空写真判読の基礎』

 『影の長さと地形の関係』

 『第二次大戦期の航空偵察手法』

 『偽装陣地の成功例と失敗例』


 ページをめくるたび、空から見た地形の“癖”が見えてくる。


 【航空偵察の特徴】

 ・影の落ち方で“深さ”が分かる

 ・土の色の違いで“掘った場所”が分かる

 ・規則的な形は人工物と判断されやすい

 ・植生の乱れはすぐに見抜かれる

 ・通気孔の位置は“煙”で特定される


 晴翔はノートに書き込んだ。


 「……偽装壕は“影”を作らないようにする必要があるな」




 資料を読み進めるうちに、偽装が破綻する典型例が見えてきた。


 【偽装が見破られる理由】

 ・掘削跡の土が“新しい色”をしている

 ・影が不自然

 ・植生が不自然に途切れている

 ・通気孔から煙が出ている

 ・壕の入口が“直線的すぎる”


 晴翔は眉をひそめた。


 ――硫黄島の偽装壕は、まだ影が出ている。

 ――土の色も、掘ったばかりで目立つ。


 「……改良が必要だ」



 晴翔は再び自衛隊広報センターへ向かった。


 展示されている偵察機の模型を見ながら、係員に質問を重ねる。


 「航空写真で、偽装はどのように見破られるのですか?」

 「影の形は、どれほど重要ですか?」

 「掘削跡を隠すには、どうすればいいですか?」


 係員は丁寧に答えた。


 「影は非常に重要です。

  深さや形が分かってしまいます。

  掘削跡は、周囲の土と混ぜて“色を合わせる”のが基本ですね」


 晴翔は深く頷いた。


 ――これだ。

 ――これを硫黄島に持ち帰る。



 アパートに戻った晴翔は、ノートにまとめた。


 【硫黄島で実行すべき偽装強化策】

 ・掘削した土を“周囲の土と混ぜて色を合わせる”

 ・影が出ないよう、入口に“布と枝”で日除けを作る

 ・通気孔は“煙が出ない構造”にする

 ・植生を壊したら、必ず植え直す

 ・壕の入口は“自然の割れ目”に見せる

 ・偽装壕は“影が出るように”わざと作る(囮)


 晴翔はペンを置き、深く息を吐いた。


 「……これで、空からの目も欺ける」


 視界が揺れる。

 眠気が襲う。


 机に突っ伏した瞬間、意識が沈んでいく。



 次に目を開けたとき、そこは摺鉢山の麓だった。


 藤田副官が駆け寄る。


 「閣下! 偽装壕の影が、偵察機に見つかる恐れがあるとの報告が……!」


 晴翔は静かに頷いた。


 「心配ない。

  改良案がある。

  すぐに工兵隊を集めろ」


 晴翔は地図を広げ、指で示した。


 「影を消す。

  土の色を合わせる。

  通気孔を隠す。

  ――空からの目を、完全に欺く」


 兵士たちの表情が変わった。


 島は、さらに“戦える島”へと進化し始める。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ