表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバイバル Iwo-jima  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/46

第12話 「最後の準備期間」

 目を開けると、静かなアパートの天井が見えた。

 硫黄島の熱気も、硫黄の匂いもない。


 ――戻ってきた。


 栗林晴翔はゆっくりと身体を起こし、机に向かった。

 硫黄島では、地下壕工事が本格的に始まった。

 だが、まだ足りない。

 まだ、準備できることがある。


 晴翔はノートを開き、書き出した。


【現代で調べるべきこと】

・硫黄島の地質資料の詳細

・火炎放射戦車の迎撃方法

・補給物資の最終選定

・在庫管理の仕組み

・自衛隊広報センターでの情報収集


 「……時間がない。やるしかない」



 晴翔は大学図書館へ向かった。

 地質学の専門書が並ぶ棚から、硫黄島関連の資料を片っ端から引き抜く。


 『小笠原諸島の地質構造』

 『火山島の地熱分布』

 『地下空洞の形成と崩落リスク』


 ページをめくるたび、硫黄島の“本当の姿”が見えてくる。


 【重要な地質情報】

・地熱は場所によって大きく変動する

・溶岩流の空洞は、壕間連絡路に利用可能

・火山灰層は掘りやすいが崩れやすい

・硬い火山岩層は安全だが掘削に時間がかかる


 晴翔は地図に印をつけながら呟いた。


 「……これで、壕の配置をさらに最適化できる」



 次に晴翔は、戦術関連の資料を読み漁った。


 『歩兵戦術の基礎』

 『市街戦・地下戦の実例』

 『火炎放射器の弱点』


 火炎放射戦車は恐ろしい兵器だが、弱点もある。


 【迎撃のポイント】

 ・燃料タンクは被弾に弱い

 ・射撃後は再加圧に時間がかかる

 ・炎は直線的で、曲がれない

 ・戦車は狭い地形に弱い

 ・夜間は視界が悪く、奇襲が有効


 晴翔はノートに書き込んだ。


 「壕の出口を複数作り、射撃後にすぐ移動……

  戦車の背後に回り込むルートも必要だな」



 次に晴翔は、食糧・医療・工事資材のリストを作り始めた。


 【食糧】

・乾パン

・米と麦

・干し野菜

・味噌・梅干し

・魚の缶詰

・砂糖(即効性のエネルギー源)


 【医療】

・消毒液

・包帯

・塩

・ビタミン源(当時入手可能な範囲で)

・簡易冷却材(氷は無理でも、冷却布は可能)


 【工事資材】

・木材(支保工)

・鉄材(補強)

・ツルハシ・スコップ

・縄・滑車

・布(換気孔の砂落とし用)


 晴翔は深く息を吐いた。


 ――これが、最後の補給のチャンスになる可能性が高い。


 史実では、潜水艦の増加で補給船は次々と沈められた。



 晴翔はノートに新しいページを開いた。


 「……在庫管理が杜撰だと、持久戦は成立しない」


 そこで、簡易的な管理システムを考案した。


【在庫管理の仕組み】

・物資ごとに“担当班”を決める

・毎日、入出庫を記録する

・壕ごとに“配給量”を固定する

・不足が出たら即座に報告

・食糧は“週単位”で残量を確認する


 昭和十九年でも、紙と人手があれば十分に運用できる。



 翌日、晴翔は電車に乗って朝霞の駐屯地にある自衛隊広報センター(りっくんランド)へ向かった。


 受付で声をかける。


 「すみません。硫黄島の戦いを研究していまして……

  当時の装備や戦術について教えていただけませんか?」


 係員は驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になった。


 「硫黄島ですか。珍しいですね。

  資料室に案内しますよ」


 晴翔は展示されている装備を見ながら、質問を重ねた。


 「火炎放射器は、どのように運用されていたのですか?」

 「地下壕戦では、どんな問題が起きますか?」

 「補給が途絶えた場合、どのように持久するのが理想ですか?」


 係員は丁寧に答えてくれた。


 晴翔はメモを取りながら、胸の奥が熱くなるのを感じた。


 ――この知識が、あの島の兵士たちを救う。



 帰宅した晴翔は、机に突っ伏すようにして眠りに落ちた。


 意識が沈む。

 硫黄の匂いが近づく。


 ――次に目を開けたとき、そこは摺鉢山の麓だった。


 藤田副官が立っていた。


 「閣下。補給船団が到着いたしました」


 晴翔は静かに頷いた。


 「さあ藤田、さっそく始めよう。

  これが、最後の大補給になる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ