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三題噺もどき5

悪、夢

作者: 狐彪
掲載日:2026/02/19

三題噺もどき―はっぴゃくにじゅうはち。

 




 ―――――!!」


 息が止まったかと思った。

 びくりと体が跳ね、勢い目が覚めた。

 バクバクと心臓が悲鳴を上げている。

「――、」

 やけにそわそわとして落ち着かない。

 視界には、見慣れた白い天井が広がっている。

 視線を右隣に移せば、サメのぬいぐるみが冷えた目で笑っている。

「―、――」

 汗をかいたようで、冷えた室内の空気に一気に体温を持って行かれる。

 足先はとうに冷たくなっていたようで、氷のように冷えている。

 ……おかげで、多少落ち着いた。

「……、」

 枕元に置かれていた、スマホを引き寄せる。

 ロック画面は、あの子が好きだと言ってくれた百合の写真。白い花弁に、水滴が滑り、光に照らされている。……夏になれば、向日葵の写真を撮りに行こうかな。

 ……時計を見れば、まだアラームが鳴る時間には余裕があった。

 上に表示されている通知のアイコンに、時計のマークが残っていた。

「……」

 時間まで寝直そうかとも思ったが、そんな時間でもない。

 かと言って、まだ起きて動くような気にもなれない。

 そもそも、どうしてこんな最悪な目覚めをしないといけなかったのか……。

「……」

 昨日、というか早朝か?寝るに眠れず、いつの間に寝たのか……結局何時に寝たのか正直覚えてない。殆ど寝落ちに近かったんだろう。スマホをこんな所に置いた記憶もない。

 その上で、いつもより早く、目覚めさせられた。

 強制的に覚醒させられた。

「……」

 まぁ、こういう時は。

 大抵変な夢を見たせいなのだけど。

 最近はあまりないから、忘れていたのに。

「……」

 睡眠不足な上に、よくもない夢を見せられて、覚醒して。

 今日が休みだったらよかったのに……。

 これからまた起きて動いて学校に行かないといけない。

「……」

 憂鬱だ。

 まぁまだ、夢の内容を覚えていないからマシな方かもしれない。

 鮮明に残っていると、それを脳内で勝手に繰り返すからいいことなんて1つもない。

 ぱちんと消えるしゃぼん玉のように、簡単に消えてくれたようで……。

「……」

 パタリと、スマホを再度伏せながら、仰向けになる。

 隣にいるサメのぬいぐるみは、割と有名なぬいぐるみだ。緩くて可愛らしい見た目のサメ。それなりに値段はしたけれど、その店に行くまでがかなり距離があるので記念に買ってもらった。……もう行くことはないだろう。

「……」

 ベットの端に当たる右上には、巨大内クマのぬいぐるみ。

 これもまぁ有名なものだ。このサイズはもう、買った帰りが大変だったけど、可愛いし個人的には気に入っている。……ここにももう行けないだろうな。

「……」

 行こうと思えば行けなくもないのだけど、それなりに距離があるのだ、この田舎からだと。まぁ、田舎らしい田舎でもないが、都会と比べれば田舎だろう。

 そんな遠くの場所まで行って、写真を撮ったり、こうして何かを買ったり、有名なものを食べたり……そんなことをするのが、少し難しくなった。

「……」

 遠くから、また、サイレンの音が聞こえてきた。

 救急車だろうか、パトカーだろうか。

 この辺音の違いがよく分からないよな。

「……」

 あの日から、それまでは何とも思っていなかった。

 サイレンの音が、少し苦手になった。

 脊髄が凍り付くような、ジワジワと痛めつけられるような、徐々に苦しくなって、ふいに死にたくなるような。

「……」

 まだ、実感としてはないのだけど。

 帰ってきて、家に居ない事に違和感を覚えながらも、実感はないのだけど。

 土日に、家にいないことに対して、若干の不安のようなモノを覚えながら、実感はないのだけど。

「……、」

 ピピ―、ピピ―、と、アラームが鳴りだした。


 もう、起きる時間だ。












 お題:脊髄・しゃぼん玉・夢

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