私の先生
あなたとの出会いはよく覚えてる。
別の友達に誘われて吹奏楽部の体験に行った時のことだった。
部活の体験中に、先輩が私のそばを離れて暇してたら、目の前にとてもかっこいい貴方がいたんだ。
あまりにも堂々としてるから先輩かと思ったの。
会釈したら、返してくれて嬉しかった。
貴方が先輩から教わるのを盗み見て私も楽器を吹いて見てた。
あの後同級生だって知った時はすごく驚いた!
だって
「私も青池さんのこと先輩かと思ってた!」って
あなたも同じこと考えてた。
私は距離感をなかなか掴めなくて、馴染めてなかった。
でもあなたは、先輩と同じ名前のあなたは、持ち前の明るさでみんなから愛されてた。
それがすごく羨ましかった。
私はドジばかりするからいつも迷惑をかけてたよ。
あなたは私に構いまくって、私のために泣いてくれることもあった。
「ふじさん、これはどうすればいいと思う?」
って、困ったらあなたに聞くことが普通になってた。
高校に上がるまであなたと同じクラスになったことなんて無かったから、完璧なあなたによく嫉妬をしてた。
頭が良くて、演奏も上手くて、人付き合いも上手くて、悩みなんてないと思ってた。
でもそれが違うって知ったのは、中三の冬の帰りのことだったと思う。
その時は私とあなたの2人だけで帰ってた。
「私、ちゃんとできてるかな」
泣きながら私に言ってきたあなたを見て、私はあなたが同い年なことを実感したよ。
いつもみんなの前に立ってまとめてくれてたよね。
私も何度かまとめ役になったことがあるからその辛さをよく知っているはずなのに。
気がつけなかった。
あなたは平気だと心のどこかで常識化してたんだ。
「あなたは偉いんだよ。大丈夫、よくできてる。頼りないかもしれないけどいつでも相談して」
その時そんなことを言ったと思う。
私は未熟ですぐに忘れて粗相をする。
先輩にもあなたにも迷惑をかけまくってた。
それでもあなたが私に泣きながら話をしてくれた日から、気にかけるようにしてたのに。
「辞めたい」
そう言わせてしまった。
そこまで追い詰めてしまった。
背負わせてしまっていた。
いちばん世話になっておきながら、相談に乗ると言っておきながら!
何も出来ていない。
先輩を恨んだ。
相談しなかったあなたを恨んだ。
気づけなかった私を恨んだ。
私は相談相手として事足りなかったのだろうか。
部活の先輩が引退する度に、前が見えないほど泣いていたあなたを見ていたはずなのに。
感受性が高く、抱え込みやすいことを知っていたはずなのに。
あなたが辞めたいと言った文化祭のあの日に私は何をしていた?
あなたが先輩に怒られて心をやんでいる時、私は疲れにかまけて、親に甘えてた。
あなたが苦しんでいる時私がそばにいなきゃ行けなかったのに。
理解者であれなかった。
だと言うのに、私はあなたに
「やめないで欲しい」
そう言って、あなたに謝らせてしまった。
そんなこと言わせたい訳ではなかったのに。
あの日から色々なことが変わって見えた。
あなたは理由泣く部活を休んだ。
教室で談笑するあなたを見て、安心すると同時に悲しくなってきた。
あなたの本質を見ていなかったのに、あなたが私たちを必要とせず幸福であることが許せなくて。
あなたのいない部活は息がしづらくて、あなたのいない楽器庫はいつもより冷えていた。
あなたが管理していたファイルの権限が解除されているのを見て、胸が締め付けられた。
昼に姿が見えないと思ったら、部屋の掃除をしていたと聞いた。
あなたがしていること全てがマイナスに見えて嫌だった。
紙切れ1枚で切れてしまう関係にここまで執着するなんて思ってもいなかった。
これからあなたに手紙を書くよ。
「もしかしてラブレター?!」
ってあなたは冗談めかして言うだろう。
「そうかもね」
私は笑ってそう返したい。
あなた:ふじさん
私:青池さん




