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Refuse to fail 3

「『処分したはずのユニフォームを着た何者かを見た』か......いつもなら俺も、ほかに持ってる奴がいたんだろって言うところだが、今はそんな他人事のような返答をすることはできないな」


「他人事のような返答はできない......って、部長もその人物に何か思い当たることが?」


 保健室を出る瞬間、俺は過去に燃やしたはずのユニフォームを着た()()()を再び見つけ、今度こそ何者なのか確かめようとしたが、すぐにいなくなってしまった。

 

 それでも、二回目だったこともあり、真面目に取り合ってもらえない覚悟で校長室に残っていたセミと波中せんせーを除く6人に、初めて見つけた時の事と先ほど見かけた事について話した。


 クソ真面目な平坂部長の反応に一番期待していなかったが、意外にも6人の中で平坂部長が最も真面目に取り合ってくれた。


「その人物の事も、そのユニフォームのこともよく知らないが、その存在はお前にとってあまりに異質で、信じられない存在だったということだろう? それならば俺も今日、信じられない人物を見かけたんだ。それも一回じゃない。三回は見たな」


「部長の信じられない人物って? どこで、いつ見たんですか?」


 まさか俺と同じように信じられない存在を見かけたという話を聞いた俺は、平坂部長のその存在に対する思いや考えを全く考慮せずに問い詰めてしまっていた。


 だが、この時の平坂先輩はどうしてか、全く迷いのない様子で説明してくれた。


「未場はまだここに来てからあまり時間が経っていないから、他の皆とその話をしてなかったな」


「話?」


「ああ、ここにいる皆と、あと保健室にいる二人も含めて全員が今日の間に、各々にとって予想外の人物、存在を目にしてるんだ」


「え? じゃあそれって俺が今話したようなことを皆も経験してるってことですか?」


「おそらくな。未場の見たという存在も俺たちが見たものと同じようなものだろう」


 平坂部長が意外と真面目に取り合ってくれたことに驚き過ぎて気付いてなかったが、本井先輩や、他の先生たちも俺の話を笑うこともなくただ静かに聞いていた。普通なら何言ってるんだと笑ってもいいような場面で、誰一人そんな様子を見せていなかったのだ。


 つまりこの時間、この学校には9人も、よく似た奇妙な経験をした人間がいるのである。


「あれ......? でも.....」


「今戻りました」


 俺が少し違和感を感じたことを口に出そうとしたが、それを遮るように勢いよく扉が開き、波中せんせーとセミが校長室に戻ってきた。


 二人の帰還に最初に反応したのは平坂部長だ。


「千寿も、波中先生ももう大丈夫なんですか?」


 平坂部長の心配の問いに対して、波中せんせーがきらりと白い歯を見せて答える。


「ああ、もうばっちりさ! もう誰かが下半身を攻撃されている所を見ても全く問題ないよ!」


「下半身を攻撃......? 波中せんせーさっきも保健室で下半身がどうとか言ってたけどなんかあったの?」


「未場君は気にしなくていいよははは! それより、千寿君もちゃんと回復しましたので、皆さん先ほどの話の続きをしましょう!」


 俺の問いは波中せんせーの謎の勢いにかき消され、俺以外の8人は何やら途中だったという話を再開した。


「話って何ですか? もしかしているはずのない人を見たってやつですか?」


 俺が再び問いかけると、今度は波中せんせーが反応してくれた。


「お? 未場君も見たの? なら話は早いね! ちょうど他の皆さんとその詳しい内容について話してたんだよ」


 波中せんせーが俺を話の輪の中に入れてくれて、その後ここにいる全員が見た人物についてそれぞれ簡単に教えてもらった。




「本当に皆、俺と同じような経験している......あと、セミ。お前も見たなら言えよ!」


 聞いた8人のうちで見た人物が被ることはなかったが、セミが見たのは俺が見た()()()だったらしい。


「いや、それどころじゃなかっただろ! 本井先輩は怖......」


「何? 文句あんの?」


「ひいい......何でもないです......あ、ほら波中せんせーのあれをお前がけ......」


「千寿君? もうあの話はしないよ?」


「あ、そうでした......すみません......ごめんやっぱ何でもない」


 セミが俺に何か言おうとしてたが、何でもなかったらしい。何なんだ。


「そういえば、皆さん気付いてますか?」


 突然二ヶ崎が少し暗い声で俺たち全員に話しかけてきた。


 いつもと違う雰囲気の二ヶ崎に最初に反応したのはまたも平坂部長だった。


「気付く、とは何のことだ?」


「あれ、見てください」


 二ヶ崎は校長室の壁の高い位置に掛けられている時計を少し震えながら指差した。その時計は10時30分を示していた。


「時計がどうしたんだい? 二ヶ崎君」


 二ヶ崎が震えていたからか、波中せんせーが柔らかな口調で二ヶ崎に問いかけた。すると、二ヶ崎は怯えたような声で言った。


「時間......進んでなくないですか?」


 二ヶ崎がそう言った瞬間に、ソファの上に置かれていた本井先輩のスマホが光った。


 画面には「10:30」という文字が映されていた。

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