Refuse to fail 11
現在の意識や記憶を保ったまま過去に戻り、その過去を改変するとどうなるのか―――こんなことを考えた経験がある人は少なくないだろう。
『過去を改変することでその後の歴史が変わってしまい、現在からやってきた自分たちの存在が無かったことになってしまう』という結論に至り、でも現在の自分たちは存在しているのだからこれまでに過去が改変されたことはなく、自分たちも過去を改変してはいけないと考えるようになるのが一般的だと考えている。
この考えは俺が過去に戻ってきて、図書館で今後どう行動していくかを話し合っている間で頭の中で再び考えていたことだ。
「じゃあこのまま何か特別な事とかしないで過ごしてくってこと?」
図書館内の一角、飲食可能なフリースペースに置かれた二人が向かい合わせに座れる丸いテーブル。ここに座ってカフェラテをストローで吸いながらセミは俺に再度確認してきた。
「そうだな。下手に歴史改変すると良くないって聞くだろ? それに、お前に細かい指示をしてもそれを完璧にこなせないのはわかってるしな」
「もっと期待しろよ! 何事も挑戦だろ!」
飲食可能とはいえ、ここも図書館の中だ。あんまり大声を出さないでもらいたい。
あー、ほら横の同年代っぽい女子二人組が嫌そうな目でこっち見てるよ......
「失敗は成功への近道なんだぞ!」
「成功につながる道が一つもなかったら失敗は無駄になるよな」
自分を諦めてほしくないというセミの熱量は素晴らしいが、隣からずっとキツイ目線くらってるからそろそろ退散したい......
「まあ、とりあえず中三は一回経験してきてるんだし変な失敗はしないだろ。帰ろうぜ」
俺が先に椅子から立ち上がり、セミを外に連れ出そうとする。
あれ......? 横の女子二人組、俺の方見てた?
うるさいから見られていたんだと思っていたが、図書館の外に出てセミと別れた直後に気付いた。
あの二人、俺が汗かきまくってて汚いって言ってた二人だ......
俺たちが図書館を出て別れたのは夕方6時手前。今は夏休みの8月中旬で夏真っ盛りのため、この時間でも空は青々としている。
そんな空を眺めながらゆっくりとしたペースで歩道を通って帰っていると俺の右側、車道の方から『青雲!』という声が掛かった。
俺がその声の方を向くと、車は減速し始め、歩道側に最大限寄せながら俺の横に停車した。
「父さんさっき家にいなかった? 珍しいじゃん休日に車に乗ってるの」
俺が少し驚きを混ぜた声で問いながら車の後部座席に乗ると、父さんはすぐに車を発進させてしっかり前方に顔を向けたまま俺の言葉に答えた。
「お前明後日から大会だろ? 父さん明日から仕事で見に行けないからせめて差し入れくらい買っといてやろうと思ってな」
「『見に行けない』って......もしかしてこれまでの大会見に来てたの? 全然気づかなかったんだけど」
「少し出勤を早くして長めにとった昼休憩の間だけな」
「へー。こっそり見に来てたりするのなんかまさに父親って感じ」
俺が思ったことを口にすると、父さんの顔はここから見えないが、明らかに喜んでいると分かるような笑い方をしていた。
「青雲。どんな結果であっても決して落ち込むんじゃないぞ。挑戦したことに意味があるんだ。やらない後悔よりやる後悔って言うだろ?」
「......そうだね。......」
父さんは家の駐車スペースに車を止めながら俺に言葉を送ってくれたが、自信を持って頷くことはできなかった。
さっき図書館でセミが似たような事を言ってたってのもほんのわずかにあるが、そうじゃない別の理由、あの日のことがその大きな要因だった。
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