表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7人の転生者  作者: 奈津輝としか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/8

第1章 プロローグ 第7話 修羅道の主・阿修羅王

 阿修羅(アスラ)王と一口に言っても、実は4人いる。婆稚(バリ)阿修羅(アスラ)王、佉羅騫馱(サンバラ)阿修羅(アスラ)王、毘摩質多羅(ヴェーパチッティ)阿修羅(アスラ)王、羅睺(ラーフ)阿修羅(アスラ)王の4人だ。修羅界は彼らによって4分割され、絶える事の無い(いくさ)が繰り広げられていた。

 その4人の阿修羅(アスラ)王のうち、帝釈天(インドラ)の妻となった舎脂(シャチー)の父は、 毘摩質多羅(ヴェーパチッティ)阿修羅(アスラ)王である。

 インドに()いては、アスラ神族ダーナヴァ族を率いる王で、プローマンと言う名で知られている。

 忉利天(とうりてん)に住まう天帝・帝釈天(インドラ)(よしみ)を結ぶ為に、舎脂(シャチー)との政略結婚を望んだ。

 帝釈天(インドラ)は女癖が悪く、特に人妻には目が無くて、数多くの逸話が存在する。そんな帝釈天(インドラ)に嫁がせるのには不安があったが、娘が喜んだので安心していた。実はこの婚姻は、(シャチー)自身が望んだものでもあったのだ。

 この婚姻に帝釈天(インドラ)も初めは乗り気では無かったが、阿修羅(アスラ)王の娘が美しいとの評判を聞いて興味が湧いた。

 偶然にも舎脂(シャチー)が水浴びしている所を目撃し、余りの美しさに我を忘れてその場で舎脂(シャチー)を犯した。そして連れ去って、凌辱を繰り返した。

 実は舎脂(シャチー)は、その見た目の美しさとは裏腹に、素手で阿修羅(アスラ)王を負かした事もある女傑であり、短気で気が荒い。

 そんな舎脂(シャチー)が大人しく帝釈天(インドラ)に犯されたのは、本性を知られれば破談になる事を恐れたからである。既成事実を作ってしまえば、帝釈天(インドラ)に男としての責任を追求出来るからだ。

 事実、帝釈天(インドラ)舎脂(シャチー)(さら)って、そのまま妻にした。思えば水浴びに出会(でくわ)すなど、余りにも出来すぎている。初めから舎脂(シャチー)の策だったと考えると自然だ。

  毘摩質多羅(ヴェーパチッティ)阿修羅(アスラ)王は激怒し、(さら)われた娘を取り戻す為に挙兵した。

 帝釈天(インドラ)は、配下の四天王や三十三天を引き連れて迎え討った。中でも毘沙門天(ヴァイシュラヴァナ)の強さは阿修羅(アスラ)王にも引けを取らず、戦況は優位に運んでいた。

 援軍としてやって来ていた阿弥陀如来(アミターバ)軍の孔雀明妃(マハーマユーリー)によって糧道が断たれたからだ。

 しかし阿修羅(アスラ)王は、全兵力を一点に集中させて逆撃に出た。絶え間なく戦い続ける修羅の軍勢は、天界に()いても屈指の強兵だ。遂に帝釈天(インドラ)軍は、押され始めて撤退した。

 帝釈天(インドラ)はこの危機(ピンチ)に、梵天(ブラフマー)に取りなしを頼んだ。だが阿修羅(アスラ)王は許さず、決着をつける事にこだわった。

 後に仏教では、戦い始めた理由は阿修羅(アスラ)にこそ正義があったが、固執し過ぎる正義は正義では無く、相手を(ゆる)す慈悲の心を失えばそれはもはや正義では無いと説く。

 追撃する阿修羅(アスラ)軍は、帝釈天(インドラ)軍を壊滅寸前まで追い込んだ。帝釈天(インドラ)は退却していると、蟻の行列を踏みそうになってその場に踏み(とど)まった。

 それを見た阿修羅(アスラ)王は、潰走している帝釈天(インドラ)が踏み(とど)まったのは、援軍が来たからに違いないと思い込んで退却した。

 帝釈天(インドラ)は千載一遇の機会(チャンス)と、背を向けた阿修羅(アスラ)軍に襲いかかった。調停していた梵天(ブラフマー)軍や、他にも援軍として現れた阿弥陀如来(アミターバ)軍に挟撃され敗走し、阿修羅(アスラ)王は捕らえられた。

 舎脂(シャチー)の懇願により阿修羅(アスラ)王は処刑を(まぬが)れ、釈迦如来ゴータマ・シッダールタの説得によって仏法の守護者として修行する約束で解放された。





「うおぉぉぉ!!」


 思わず握り締めた拳は空を切った。辺りを見回すと、まだ薄暗かった。


「はぁ、はぁ、はぁ…夢か…」


 一体何度、同じ夢を繰り返し見た事だろうか。額にかいた汗が、頬を(つた)って顎から(したた)り落ちた。

 日頃あまりテレビを見ないのだが、昨晩偶然点いていた「霊能力者vs.科学者」と言うスペシャル番組に出ていた霊能力者の顔を見た時、全身の血が泡立った。理由は分からないが、言いようの無い怒りが心の底から湧いて来た。


「俺は…この女を知っている…」


 何処で会ったのか分からない。何故こんなにも、あの女の顔を見て憎悪が湧き起こるのか分からない。きっと前世からの因縁に違いないと思った。

 理由は無いが、この女に近いうちに会える予感がした。自分でも、会って何がしたいのか分からなかった。憎しみに(とら)われて、危害を加えたいのだろうか?会った時に答えが出るだろうと思い、目を閉じて二度寝した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ